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お人よし悪魔と駄女神さま  作者: 瑞沢ゆう
二章 エノク奪還編
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ヒーロー見参?

ブックマーク、評価、ありがとうございます!

おかげ様で日刊ランキング五位まで上がる事が出来ました! 誠にありがとうございますm(_ _)m

──人間界、荒れ果てた地──


「しかし、こんなに早く成長するとは……」


 庭に生えた一本の木を眺め、驚いたように呟くヨシュア。この木が生え出したのは、ヨシュアがこの地に来て一ヶ月経った時だった。


 ある時ふと、庭の片隅に視線をやると可愛らしい木がちょこんと生えていた。その時は、『ララのお陰で木まで生えてきたのか、大きく育てよ』なんて考えていたヨシュアだったが、日に日に大きくなる木に驚かせられ、一ヶ月後には自身の身長をゆうに超える大きさまで育ってしまった。


 そして、現在は立派な『果樹』へと成長している。しかも、この木から取れる真っ赤な果実、取っても取っても次の日には瑞々しいその実を枝からたらし、そよ風で優雅に揺れているのだ。


(ありがたいが何とも不思議だ……)


 この現象をララに聞いても「なんでしょうね? 不思議ですわ」と、お前は本当に女神か、とツッコミたくなるようなフワッとした答えしか返って来ない。


 なので、ヨシュアは早々に答えを諦め『世の中には不思議な事があるもんだ』と割りきり、素直に恩恵にあずかる事にした。


「ヨシュア様ー。そろそろお肉の在庫が無くなりそうですわ」


 ヨシュアがボッーと果樹を眺めながら果実を噛っていると、ララの『早く買い出しにいけ』という意味が込められた言葉が、ヨシュアに飛んでくる。


 一見ベジタリアンに見えるララだが、腸詰め肉を美味しそうに頬張っていたのを見れば分かる通り『肉食系女神』であった。しかも、フードファイター顔負けに食べる量も半端ではない。


 そんな、食べる事が好きな肉食系女神ことララにとって、好物の肉が残り少ないというのは由々しき事態であった。


「そうか。今日、町に潜りこんで買ってくるよ」


 ヨシュアの言葉にララは「お願いしますわ」と、機嫌が良さそうに答える。


(女の子の機嫌を取るのも大変だな……)



──そして夕方。


 町へ向かうため、黒い翼を広げ大空へと舞うヨシュア。目的となる町『エノク』は、ここから音速飛行で約三十分(大体、六百km)程、東へ行った所にある、わりと大きな町だ。


 夜のとばりが落ちる頃に着くとコッソリと町に降り立ち、馴染みとなった肉屋へと直行し大量に買い込んで行く。


 最近はそれが頻繁に行われる様になったので、ヨシュアの財布もだいぶ寂しくなってきた。


(なんか稼げる方法を探さないとな……)


 冒険者をクビになり身分証も無いヨシュアは、中々普通の方法で稼ぐ事が難しい。今の状態で手っ取り早く稼ぐ手段と言ったら、盗賊などの野蛮な行為をするしかない。


 そんな事はヨシュアにとって論外な手段。だが、他に方法が思いつかず悩んでいると、いつの間にか町の景色が見えてきた。

 

 壁で周囲を囲まれた町、入り口は東門と西門の二つ、しかし堂々と門から入れないヨシュアは、北側の壁沿いから町へ侵入すると肉屋へと足早に向かう。


「おじさーん!! 待ってー!」


 閉店の準備をする肉屋のオヤジに力いっぱい叫ぶヨシュア。

 その声がどうやら届いたらしく、肉屋のオヤジは手を止めてヨシュアを待ち構えている。


「おう、兄ちゃん今日もまたギリギリだな。ハハッ」


 閉店間際にやってくる客など迷惑極まりないのだが、ヨシュアは大量に買っていく良客なので、肉屋のオヤジも機嫌良くヨシュアを迎えた。


「いつもすいません……」

「ああ、構いやしねえよ。兄ちゃんはいつも大量に買ってくれるしな」

「はは……」


「で、今日は何が欲しいんだ?」と、肉屋のオヤジがショーケースに並べた肉を見てヨシュアに問う。


「全部下さい……」

「おう、まいどあり! いや~嬉しいね、安くしとくぜ」


 肉屋のオヤジの笑顔とは対照的に、苦い表情を浮かべ寂しくなっていく財布を見つめるヨシュア。


(本格的に金が尽きてきた……ララの機嫌は悪くなるけど、そろそろ肉絶ちしてもらわないとな……)

 

 ララの膨れっ面を想像し、そんな事を思いながら肉屋を後にするヨシュア。

 女神が肉好きとは不思議な世の中だ、とため息混じりに両手一杯の肉を見つめ、闇夜に飛び立つ。


──すると、空に舞い上がったヨシュアは西の方角に小さな灯りが灯っているのを発見する。


(向こうはなにも無い筈なんだけどな……)


 何か心に引っ掛かったヨシュアは低速飛行で灯りの元へ向かう事にした。


 次第にハッキリと見えてくる灯り、周りには馬車が見える。

 そして、灯りは西の方角へと移動している様だ。しかし、馬車は動いていないようなので、移動している灯りは誰かが持っているのだろう。


 そこまで理解した所でヨシュアの耳に、幼くか細い声が聞こえてくる。しかも声の震え方からして怯えているようだ。


 これはまずいな、と判断したヨシュアは飛行速度を上げ灯りの元へ近付いていく。


「お兄ちゃん助けて!!」

「動くなこの野郎!!」

「イブをはなせー!!」


 灯りが近くなると、そんな争う声が聞こえてくる。ただ事ではない様子にヨシュアもさらにスピードを上げ、おそらく子供が二人いるであろうその現場に急行する。


 そして、


「なんだか知らないがその子を離せ」


 そう、冷たくも威圧感がある言葉を放つヨシュア。


「ひ、ひぃ!! 化け物……」


 闇夜に突然現れた悪魔の姿に恐怖を隠しきれない髭面のむさ苦しい男は、掴んでいた女の子を離すとその場で腰を抜かした。


 子供達はというと、無言で此方を見つめ驚いている。


 そう、ヨシュアは子供が危険な目にあっている。そんな状況に怒りを抑えきれず、悪魔の姿のまま登場してしまったのだ。


 四人が無言で見つめ合う──闇夜に訪れた静寂。


 だが、


「「カッコいい……」」


 まるでヒーローを見つめるような無垢な子供達の、そんな一言で静寂は破られた。

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