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テンキュウノアメ  作者: ルシア=A.E.
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1.8.3 食べて、泣いて

「まさか、あんな方法で火がつけられるなんて、思ってもみなかったでしゅ」ぱくぱく


「透き通った氷が手に入るようなら、ワシもやってみようかのう?」もぐもぐ


「アオさm……アオお姉ちゃん、凄かった!」キラキラ


 と、皆からアオに向けられる称賛の言葉。それがアオにとっては、初めてのできごとだったのか――


「…………!」ぴたっ


――彼女は食事中だというのに、不自然な体勢のまま固まってしまった。どうやら、嬉しすぎるあまり、どう反応していいのか分からなくなってしまったらしい。

 

 そのことに気づいているのか、気づいていないのか……。シロ鶴がその長い首と頭を傾げながら、アオに対してこう問いかける。


「アオしゃん?どうしたんでしゅか?もしかして、今日の朝食、お口に合わなかったでしゅか?」


「えっ?い、いえ。そんなことは……。むしろ、とても美味しいです。それに、とても……とても嬉しくて……」


 そう口にした直後――


「……ひっく」ぶわっ


――と目尻から、ぽろぽろと大粒の涙を流し始めるアオ。

 その様子を見たシロ鶴が、思わず目を丸くして問いかける。


「ア、アオしゃん?!大丈夫でしゅか?!(ご飯の中に何か変なものでも混じっていたでしゅかねぇ……そこで拾ったキノコとか……)」


「長い間……一人だけで暮らしてきたので……何と言うか……急に……眼から汗が……」ごしごし


「それ、汗じゃなくて涙でしゅ……。もう、アオしゃん……人が嫌いじゃないのなら、町に降りて行って、人と交流を持てば良かったんじゃないでしゅか?アオしゃんは、見た目は人間なんでしゅから、難なく受け入れてもらえる気がしましゅけど……」


「……確かに人は嫌いじゃないです。でも関わるのは苦手です……。外から眺めている分には良いのですが、ついこの前まで小さかった赤子が、気付くとお婆ちゃんになっていたり……。他にも、私が村に降りて行くと、皆なぜか顔を青くして逃げていく始末……。一体、私の何がいけないというのでしょう?それが私には分からなくて……」


 そう言って、目尻に溜まった涙を拭うアオ。ただ、気分は、大分落ち着いたようである。

 

 そんな折、彼女の言葉を聞いていたアメが、ナツに朝食を与える手を止めることなく、あきれたようにこう言った。


「そりゃ、お主が、人よりも長生きしておるからじゃろ?避けられて普通じゃ、普通。というか、前にも言うたじゃろ?人の命など、燃ゆる蝋燭にも同じ……高々、60年程度じゃと。そこから大きく外れるような(よわい)の者がおれば、怖がられて当然、避けられて当然じゃ」


「それ、ものすごく長い蝋燭でしゅね……。まぁ、アメしゃんが何を言いたいのかは分かりましゅけど」


 と、アメの言葉に相槌を打つシロ鶴。

 対するアオは――


「…………ふふっ」


――と、直前まで涙をこぼしていたというのに、今度は突然、嬉しそうに笑みを浮かべ始めた。

 

「……感情の起伏が、ずいぶんと激しいでしゅね?アオしゃん」


「えぇ、だって、悲しいのではなくて、とても嬉しかったのですから。今まで何だかんだと辛いことや寂しいことがありましたけれど、こうして似たような境遇を持つ皆さんと出会えたのです……。その上、こんなにかわいい狐さんと一緒に美味しいご飯が食べられるなんて……もう幸せと言う以外になんと表現すればいいのでしょう?」


「……んにゅ?」もぐもぐ


「んー、まぁ、そうでしゅね。ご飯の味については賛否両論あると思いましゅけど、かわいい狐しゃんと言う点は、わっちも同意見でしゅ」ぱくっ


「んまっ?」


「もちろん、ナツちゃんもかわいいでしゅよ?」


「…………」にたぁ


「うぅ……」ぶるっ


「ナツちゃん……やっぱりかわいいです!」

 

「いーやっ」ぷいっ


「……たまに、アオしゃんの思考が羨ましく思うでしゅ……」ぱくっ


 と、嫌われていることが分かっていても、ナツに向かってとろけたような笑みを向けるアオを前に、小さくため息を吐くシロ鶴。


 そんなこんなで賑やかに食事を取っていると、アカネが遠慮気味にシロ鶴へと質問した。


「ねぇ、シロお姉ちゃん?」


「何でしゅか?おかわりでしゅか?」


「んと、おかわりもほしいけど、そうじゃなくて……シロお姉ちゃんだけ、どうして鶴さんの姿でご飯を食べてるの?ほら、アメさまやアオお姉ちゃんは人の姿をしてるのに……」


「あの、アカネちゃん?私、元々この姿……」


「まぁ、アオしゃんの姿はともかくとして……わっちがこの姿でいるのは、ただの気分でしゅ。だから、アカネちゃんが人の姿になってほしいというなら……」ボフンッ「……こっちの姿になっていてもいいでしゅよ?どっちがいいでしゅか?」


「んとー……どっちも好き!」


「なら、今日これからは人の姿をしてるでしゅ」


 そう言って優しげな笑みを浮かべると、アカネに対して手を差し出し、そして彼女からお椀を受け取るシロ。

 それから彼女は、そこへと追加の雑煮を注ぐのだが……。その様子を見ていたアオが――


「……料理ができれば、アカネちゃんやナツちゃんに好かれるのでしょうか……」ぼそっ


――などと小さく口にしていたことに気づいた者はいなかったようだ。


最近は時間がとれなくて、なかなか書けていません……。

もう少しペースを上げていきたいんですけど、1ヶ月くらいは私もテレサちゃんも難しいんじゃないかなぁ……。


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