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テンキュウノアメ  作者: ルシア=A.E.
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だいさんじせかいたいしぇん

閑話でしゅ。

 それはお風呂に入るためにある湖の畔に立ち寄ってから間もない日の事でした。


「ねぇ、ナツちゃん?実は喋れたりしましゅ?」


「…………」にたぁ


「……まぁ、この前、アオしゃんに、”いや”って初めて言ったばっかりでしゅから、そう簡単には喋れないでしゅよね……」


「んまんま」がぶぅ


「なんでしゅ?もしかしてお腹が減ったでしゅか?でも、ごめんなしゃい。今は食材を切らしていて、アメしゃんたちが探しに行っているところでしゅ。多分、夕方までは帰ってくると思うのでしゅが、それまでは……」


「…………」あぜん


「……そんなにお腹減ったんでしゅか?」


「んま……」うるっ


「うっ……!これはこれで、胸にずっしりとくるものがありましゅね……。分かりました。何かおやつが作れないか考えてみるでしゅ」


「んまっ!」


「でも、こんな山の中にあるもので作れるおやつと言ったら……ドジョウしゃんのお刺身(しゃしみ)くらい?」


「…………」ぶわっ


「うっ……!何か最近、ナツちゃんの感情表現が豊かになってきてる気がしゅるでしゅ……。じゃぁ……あ、そうでしゅ!そこに少しだけ、お芋しゃんが生えてるでしゅから、それを掘り起こして、茹でて食べるでしゅ。ふかし芋でしゅよ?」


「んま?」


「えぇ、ほっくほくで美味しいでしゅ。お塩を少しだけまぶして食べると、もう最高でしゅ!ただ、茹でるのに少し時間が掛かりましゅけど……待っていてくれましゅか?」


「んま」


「分かったでしゅ。じゃぁ、ちょっと待っててくだしゃい。まずはお芋さんを掘り起こしゅでしゅ」


ガサガサ……


「お芋しゃん、お芋しゃん、何個あるでしゅか〜♪」


「んまんま〜」


ゴソゴソ……


「まず1個〜♪」


「んま〜」


ザックザック……


「2個、3個、4個〜♪」


「んまんまんま〜」


「大量でしゅね?もっとありそうでしゅよ?」


「んまっ!」


「じゃぁ、掘れるだけ掘ってしいましゅね?〜〜〜♪」


◇ 10分後…… ◇


「……ご、50個……。無茶苦茶、ありましたね……」


「ん、んま……」


「これだけあれば、しばらくの間は、お芋さんには困らないかも知れないでしゅ。じゃぁ、これを茹でようと思いましゅ。あー……先にお湯の準備だけしておけば良かったでs——」


バチバチッ……

ズドォォォォン!!


「「 ?! 」」


「ち〜っす。超時空宅急便で〜す。配達に参りやした〜。……って、シロさんとナツちゃんじゃないですか〜?お久しぶりですね〜?」


「またコルしゃん……。っていうか、ついこの前、会ったばかりでしゅよね?」

「んまんま」


「ついこの前〜?あ〜、実時間はこちらの方が長いのかも知れませんね〜。じゃぁ、今度来るときは、時間を調整して来るようにしますね〜」


「なんだかよく分かんないでしゅけど……あ、そうでした。この前は美味しい”けーき”をご馳走してもらって、ありがとうございました。お礼を言うのを忘れていたでしゅ」


「いえいえ〜。気に入っていただけて、こちらも嬉しいですね〜。あれを作ったのは双子の姉のような方ですから〜」


「そうでしゅか〜。では、お姉さんに、美味しかったと伝えてくだしゃい」


「分かりましたよ〜?ところでシロさん。シロさんたちは、今なにやらお困りのご様子でしたよね〜?何でしたら、お力になりますよ〜?例えばこの道具。これ、火をおこすためのもので、”魔導ライター”という道具なのですが〜……お貸ししますよ〜?」


「火をおこしゅための……道具でしゅか?まぁ、確かに、お湯を沸かしゅために、火を焚こうと思っていましたけど……」


「なら是非、これを使ってみて下さい」ひょい


「えっと……ありがとうございましゅ……って、これ、どうやって使うんでしゅか?」


「そこに付いている赤いボタン——えっと、突起部を押し込めば、先端から炎が出てきますよ〜?あ、でも、人に向けて使わないでくださいね〜?危ないですから〜」


「そうなんでしゅか……」ポチッ


ドゴォォォォォ!!


「ほー、しゅごい火力でしゅね?」


「…………」


「どうしたんでしゅか?コルしゃん」


「いえ〜……シロさんがもう少し驚くかと思っていたのですか、全然そんな感じが無くて、ちょっと予想が外れてしまいまして……」


「そうでしゅか……。よく、旅仲間のアメしゃんに狐火で驚かされているので、慣れてしまったのかも知れないでしゅ。さて……これでお湯を沸かせるでしゅ!ありがとうございましゅ!コルしゃん」


「いえいえ〜。ところでシロさんは、お湯を沸かしてどうするつもりだったのですか〜?」


「このお芋を茹でて食べようかと思っていたところでしゅよ?」


「ほうほう?なるほどなるほど〜。ふかし芋ですね〜?」


「えぇ。もしかして……コルしゃんも食べたいんでしゅか?」


「そうですね〜……丁度、小腹も空いていたところですし、なによりシロさんの作る料理は美味しいですから、ついでに頂いていこうかと思います。ですが、せっかくですので、もう一品、お芋の料理を作ってみませんか〜?」


「えぇ、それはいいでしゅけど……でも、お芋さん以外に、材料はありましぇんよ?」


「大丈夫です。材料はお芋と焚き火だけ。あと調味料が必要なのですが、そちらは私がご提供しますので、お気になさらず〜。というわけで、もう1つ焚き火を作ります」ズドォォォォン!!「はいできあがりです」


「「…………」」


「そしてお芋を水魔法で」ドバァァッ「っとよく洗って〜」


「「…………」」


「アルミホイルで巻いたら、焚き火の中に放り込みます」


「「…………」」


「……え〜と?なんですか〜?何か理解しがたいものを見たような表情を浮かべているようですが〜……」


「……手から火や水が出てきた事については、まぁ、アメしゃんも火が出せるでしゅから、とりあえず置いておくとしてでしゅ。でも……この銀色の紙のような物体は一体何でしゅか?」


「これですか〜?これはアルミホイル。人類が空の彼方を飛ぶために作り出した科学技術の結晶です」


「えっと……やっぱりよく分かんないでしゅけど……これでお芋しゃんを包んで焚き火の中に放り込むと、いったい何が起こるんでしゅ?」


「……第3次世界大戦……じゃなくて、焼き芋ができますよ〜?」


「焼き芋?」


「もしかしてシロさん、食べたことないんですか〜?まぁ、アルミホイルが無い以上、釜が無ければ作るのは大変ですからね〜。なら楽しみに待っていて下さい。すっごく美味しいですから〜」


「しゅごく……美味しい……?!」

「んまっ……?!」


「えぇ、それはそれはとても美味しいですよ〜?……ふっふっふっふっふ〜……」


「それは楽しみでしゅね……ふふ……ふふふふふ……!」かたかたかた


「…………」にたぁ


◇ さらに30分後…… ◇


「うまく出来ましたよ〜?」


「こっちも出来たでしゅ」


「んまんま」


「それではここで、2つの調味料に登場して貰いましょう!……じゃ〜ん!バターとお醤油です!」


「「…………?」」


「バターを小さく切って〜……お芋さんの上に載せて〜……その上からお醤油をちょろちょろちょろ〜……はい、完成です!」


「なんか……しゅっごく良い匂いがしゅるでしゅ……」じゅるっ

「んまんま……」だらぁ


「ささっ、遠慮無く食べて下さい!私はシロさんの作ったふかし芋の方を頂くことにしましょう。では〜……」


「いただきます」

「いただきましゅ……ってまずはナツちゃんからでしゅね」

「んま」


ぱくっ……


「うまっ?!」

「んまっ?!」


「どれどれ?わっちも……」


ぱくっ……


「な……何でしゅか?!この味は……!」


「その言葉、そのまま、こちらも聞き返したいですね〜。一体何をどうしたら、ふかし芋に塩を掛けるだけで、こんなに美味しくなるのでしょうか〜?」


「それはもちろん、わっちの花嫁修業の成果でしゅ!気持ちがこもっていれば、それだけで料理は美味しくなるんでしゅよ?こう、美味しくなれー、美味しくなれー、って」


「にわかには信じがたいですね〜……。まぁいいでしょう。これ、少し持ち帰ってもいいですか〜?(分析しますので〜)」


「えぇ、いいでしゅよ?いつも美味しいものをいただいてましゅし、いくらでも持ち帰ってくだしゃい」


「そうですか〜。ではお言葉に甘えて……って、おやおや〜?時間が来てしまったようです。最近はかなり滞在時間が延びていますが、まだ魔道具の動作が不安定なようですね〜。これ以上、ここにいると帰れなくなるので、今日はここら辺でお暇させてもらいます」


ブゥン……


「……コルしゃん、帰っちゃいましたね?いったい何者なんでしょう?」


「んま……」


「さっき、お料理中に聞いた限りでは、ただの狐娘だ、なんて言ってましたけど、絶対、ただの狐娘なわけがないと思うでしゅ。というか、よく考えてみたら、狐娘って……なんでしゅか?」


「んまぁ?」


「まぁ、ナツちゃんに聞いても分からないでしゅよね……。さて、じゃぁ、美味しいお芋さんを、冷える前に食べてしまいましゅか!」


「んまっ!」


 そして、わっちたちは、コルしゃんが残していった美味しいお芋しゃんを食べきったのでしゅが……。その後でアメしゃんたちのことを誤魔化しゅのがしゅっごく大変でした。その場に漂う匂いで、何か美味しそうなものを食べたのは、バレバレだったでしゅからね……。


本当はこどもの日に似合った話を書こうかと思っていたのですが——


「今日はこどもの日ですね〜?」


「えっ?ナツちゃん、女の子でしゅから、あまり関係ないでしゅよ?」


——的な展開になるのが目に見えていたので、やめました。

だってそれを書いたら……いえ。何でもありません。


その理由が分かるのは、今のテレサちゃんの執筆ペースだと、実時間で10年くらい後かなぁ……。


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