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テンキュウノアメ  作者: ルシア=A.E.
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1.6.8 人に化けて、旅立って

「さて、お主ら。こやつをどうするつもりじゃ?」

 

「んまんま」がぶぅ


「……これナツよ。今、ワシは、シロとアオと共に、重要な話をしておるところじゃ。妨害するでn」


「んま?」もぐもぐ


「ふむ……。ワシの話など、聞くに値せぬ、と申すか?ふっ……今日という今日こそ、ワシの恐ろしさを、嫌と言うほどその身に味わわせてやろうぞ!ナツよ!堪忍せいっ!」ゴゴゴゴ


「きゃっきゃ!」がぶぅ


「んー……つまりこれは、わっちたちにアカネちゃんのことは任せた、ということでしゅねー」


「えぇ。すごく楽しそうですし、中断してもらうというのも、なんとなく気が引けますからね……というか、ものすごく羨ましいです……。5秒でいいから代わってほしいです……」


 そう言って大きなため息を吐いた後、今度はアカネ狐の方へと向き直るアオ。

 そんな彼女から得たいの知れない熱い視線を向けられたアカネ狐は――


「…………?!」びくぅ


――と尻尾の毛をパンパンに膨らませて、シロ鶴の背中に身を隠してしまった。おそらくは、生存本能のようなものが働いたのではないだろうか。

 そんなアカネ狐の行動を見たアオは――


「ア、アカネちゃん……」がくぜん


――と、今にも泣きそうな表情を浮かべて、固まってしまったようである。しかも、残念なことに、1度アカネ狐に警戒されてしまった現状において、アオに選択可能な挽回策は無く……。そのあとで彼女は、自分の行動の何がいけなかったのかを思い返し、両手で頭を抱えたようだ。……なお、断っておくが、彼女たちは、自分の顔を見るための鏡を持ち合わせていない。


 すると……。それを見ていたシロ鶴が、その翼とくちばしを使って器用に食事の後片付けをしながら、どこかあきれた様子で、アオに対し、こう口にした。


「アオしゃん?アオしゃんが、アカネちゃんやナツちゃんみたいな子どものことが大好きなのは、よーく分かりましゅよ?でしゅけど、それを前面に押し出していたのでは、ただ怖がられるだけだと思うでしゅ」


「な、ならいったいどうすれば……2人と仲良くなれるんですか?」


 その質問に対しシロは――


「……よくぞ聞いてくれました!ふふ……ふふふふふ……」かたかたかた


――と、怪しげな笑みを浮かべた後で……。その目を輝かせながら、アオに対してこう言った。


「……包容力でしゅ!」きゅぴーん


「ほ、包容力……?」


「そうでしゅ、包容力でしゅ。わっちはこれまでの人生(?)の中で、いかにして愛すべき殿方――いえ、アメしゃんを包容できるか、その効果的な方法を考えてきたでしゅ。そんな中で、わっちがたどり着いたものが……包容力。好きなものも嫌いなものも、すべてこの翼で温めても良い、と思えるような心の余裕こそが、すなわち包容力である、とわっちは考えているでしゅ。そしてわっちが見る限り、アオしゃんには、この包容力が足りない……!」


「えっ……じゃ、じゃぁ……」


「心に余裕があれば、包容力とは何なのかが、自ずと見えてくるはずでしゅ。そして、自分に何が足りないくて、アカネちゃんやナツちゃんと仲良くできないのかも……。でしゅから、アオしゃんは、心にもっと大きな余裕ができるよう、悟りを開くべきだと思いましゅ!」


「悟りを……開く……」


 シロの言葉を聞いて何を思ったのかは不明だが、目を瞑ると、ため息とは異なる息を大きく吐くアオ。どうやら彼女は、悟りを開くために、瞑想状態に入ったようである。……なお、これも余談だが、シロの発言は、彼女の経験則でも何でもなく、単なる作り話だったりする。


「さてと……アオしゃんも忙しくなってしまった以上、アカネちゃんの処遇は、わっちが判断しなきゃならなそうでしゅね……」

 

 目を細めながらそう口にすると、長い首を回して後ろを振り向くシロ鶴。

 するとそこには、キョトンとした表情を浮かべた一匹の子ギツネの姿があって……。シロはそんなアカネに対し、こんな質問を投げ掛けた。

 

「わっちが勝手に決めるよりも、直接、アカネちゃんに聞いた方が良さそうでしゅね。というわけで、アカネちゃん。アカネちゃんはこれからどうしようと考えていましゅか?」


「…………?」


「わっちたちはこの片付けが終わったら、旅立たなくてはならないでしゅ。つまり、この地を離れるということでしゅね」


「んと……シロお姉ちゃんたちは、どこにいくの?」


「難しい質問でしゅね……。こう言うと、からかっているように聞こえるかもしれましぇんけど……ずっと、ずーっと、南の方に行くところでしゅよ?具体的な場所は、わっちたちにも分かりましぇんけど、冬になっても暖かくて、そして、あまり雪があまり降らない場所を目指して旅をしていましゅ。もしかしゅると、意外と近くかもしれましぇんし、何年経ってもたどり着けないくらい遠い場所かもしれないでしゅね」


「雪が降らないところ……」


 そう口にして、青く高い空を見上げるアカネ狐。そこでは、彼女の毛色と良く似た色をした真っ赤な木の葉が風で揺れていて……。もうすぐ冬の季節がやってくることを、静かに物語っていたようである。とはいえ、アカネ狐のその見た目から察するに、これから先の季節で訪れるだろう真っ白な世界のことを、彼女は未だ知らなそうだが。

 そんなアカネ狐の前で、シロは続けてこう口にした。

 

「わっちたちは旅人でしゅ。目的地以外で長居をすることはありましぇん。このままでしゅと、アカネちゃんと会うのは、これが最後になるはずでしゅ。というわけで、アカネちゃん。アカネちゃんは、わっちたちと別れた後で、どうしゅるんでしゅか?帰るところはありましゅか?」


「帰るところは……自分で掘ったおうちがあるけど……でも、もうどこにあったのか忘れちゃった」


「じゃぁ……わっちたちと旅をしましゅか?」


「……いいの?僕も一緒に行っても……」


「それを決めるのは、アカネちゃんでしゅ。ただ、気を付けてほしいのは、一緒に旅に出たら、アカネちゃんは二度とここには戻って来られないかもしれない、ということでしゅ。……お魚しゃんが泳いでいる小川、たわわに木の実がみのる森、それに遠くまで見渡せる丘の景色……。そんな見慣れた光景が、もう二度と見られなくなるかもしれないでしゅ」


「……?近くに、そんな場所、無いよ?シロお姉ちゃん」


「……しゅみましぇん。それ、わっちの故郷でした。まぁ、生きてさえいれば、来た道を戻って、いつでもふるさとに戻れなくはないんでしゅけどねー」


 そう言ったタイミングで荷物を仕舞い終わったのか、細長い足で立ち上がるシロ鶴。

 それから彼女は――


ボフンッ!

 

――と道を歩きやすい人の姿に変身すると……。豊かに表現できるようになったその表情をアカネ狐へと向けて、そして彼女に対し問いかけた。


「さて。それじゃぁ、もう一度確認しましゅね?アカネちゃん。わっちたちと一緒に旅に出ましゅか?」


 それに対し、アカネも立ち上がると――


ボフンッ!


――と彼女も姿を変えて……。そして、シロだけでなく、その場にいた全員を一瞥した後で、彼女はこう返答したのである。


「……うん。僕も……僕のことも、一緒に連れていってください!」


 そう言って、()()をピンと立てて、()()を真っ直ぐに伸ばし、そして頭を下げる()()アカネ。

 対するシロたちの反応は、アカネが期待したものとは、少々どころか、かなり違ったようである。


「……ふむ。お主のその容姿、他の狐たちには中途半端な変化(へんげ)じゃと思われそうじゃが……まぁ、ワシは嫌いではないのう?」ボンッ!


「んまっ!」ぎゅっ

 

「……ナツよ。何故、早速ワシの耳を掴む……。ふむ、そういうことか。つまり、お主には、まだワシの恐ろしさが十分に伝わっておらんかった、ということじゃな?……良いじゃろう。ならば、その身にワシの恐ろしさを刻み込んでやろうぞ!」ゴゴゴゴ


「きゃっきゃ!」ぎゅーっ


「かあいい……みんな、かあいい……!」がくがく


「……アカネちゃん。まだ、しっかりと、人の姿には変身できなかったんでしゅね……(そういえば、最近、似たような人を見た気が……)」


「うん?」


 変身した自分の姿を見たアメたちが、なぜか黄色い声をあげ始めたせいか、首をかしげるアカネ。そんな彼女の変身は、シロの言葉通り、人の少女の姿に狐耳と尻尾が残った状態で、中途半端なものだった。

 その上、髪の色は、元のままの茜色で……。少なくとも日本人には見えなかったようである。ただ、変身の質にこだわらないアメたちにとっては、完璧な人の姿よりも、むしろ中途半端な方が、好印象だったようだが。


「……分かりました、アカネちゃん。それじゃぁ、わっちたちと一緒に、旅をするでしゅ!ただし、条件がありましゅよ?」


「……条件?」


「自給自足、働かざるもの食うべからず……。つまり、食材の調達や、村での路銀稼ぎなどを手伝ってもらいましゅ。まぁ、普通に生きるにも、食べ物を探さなくてはなりましぇんから、それと似たようなものと考えてくだしゃい。……ちょっと説明が難しかったでしゅかね?」


「……ううん。分かったよ?シロお姉ちゃん。僕も手伝う!」


「良い子でしゅね。それじゃぁ早速、出発しましょうか?」


「うん!」


 そう言って、シロと手を繋ぐ少女アカネ。そんな彼女は、最初のうち、アメの方に惹かれていたようだが、今ではなぜかシロの方になついていたようである。


「うやましぃ……」ぷるぷる


「ほれ、ナツよ?アオが物欲しそうに手をワキワキと動かしておるぞ?きっと遊んでくれるに違いない。ちょっと抱っこして貰えばよいのではなかろうかのう?」


「…………」ぷいっ


「ひ、ひどい……」ぶわっ


 そんなやり取りをしながら、今日も南へと向かって歩き始めた一行。その目的地は、未だはるか遠くではあるものの……。日を増すごとに、段々と賑やかになる旅路に、迷いや孤独といった旅に付き物とも言える悩みの類いは、まるで無かったようである。


……すっごく眠い状態で書いたので、意味不明な部分があるかもしれませんけど……まぁ、いつも通りかもしれないですね。


……もうダメ……眠い……zzz。

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