きゅうきょくのせんとうましん
たまにはわっち視点でしゅ。
一部、誤字を修正。
……また今日も、ナツちゃんと2人だけでお留守番でしゅ。なんか最近、2人でお留守番することが多い気がするのは、わっちの気のせいでしゅかね?
ちなみにアメしゃんたちはというと、今日の晩ご飯を獲るためにお出かけしているところでしゅ。最初はわっちも付いていって、ドジョウしゃんを獲ろうかと思ったんでしゅけど——
『シロがドジョウ以外の魚を捕っておる光景を見たことが無い』
——とか、あるいは——
『シロさんは、魚料理以外の準備をしていて下さい。ナツちゃんと戯れられるなんて……羨ましい!』ぶわっ
——などと訳の分からないことを言って、わっちに魚獲りを手伝わせてくれなかったでしゅ。もう、絶対におかしいと思うでしゅ。ドジョウしゃんを獲らせれば、この世界でわっちの右に出る者はいないはずなのに、なんでわっちだけ、こんな悶々とした思いをしなくちゃならないんでしゅかね?……え?ドジョウしゃん以外?そ、そりゃ……まぁ……あれでしゅ!お察しくだしゃい!
そんなこんなで、今、わっちの腕の中には、ナツちゃんがいるわけでしゅけど——
「…………」にたぁ
——今日も、怪しげな視線を、わっちに対してまっすぐに向けていたでしゅ……。アメしゃんも、アオしゃんも、ナツちゃんの事を、可愛い可愛いと言ってますけど、どうしてもこの笑みを見てしまうと、何とも言えない複雑な心境になってしまいましゅ……。まぁ、アメしゃんに任されてる以上、責任をもって面倒を見ましゅけど。
「……どうしたんでしゅか?ナツちゃん。わっちの顔に何か付いてましゅか?」
「…………」だらぁ
「……お腹が減ったんでしゅね?」
「…………」にたぁ
「そういうことでしゅか……分かったでしゅ。この前みたいに、何か作りましゅね?」
「んまんま」
どうもこのごろのナツちゃんは、よくお腹が空いているようでしゅ。普段はアメしゃんがご飯を上げていましゅが……そろそろナツちゃんのために、ちゃんとしたご飯を用意した方が良いかもしれましぇんね。
「さて、じゃぁ、何を作りましょう?この前は、”お好み焼き”という名前のケーキを作ったでしゅけど、今朝の朝食に使った分で、手持ちの小麦は最後だったでしゅ」
「んまっ?!」
「……そんなにお好み焼きが気にいったんでしゅか?」
「んま……」
「そうでしゅか……。でも、無いものは無いでしゅからね……」
でも、何を作るでしゅかね?手持ちの材料で余っているものって……あ、そういえば、朝作ったおうどんの生地が少し残っていたでしゅ。あれを使って、お好み焼きもどきを作ってみるのも悪くないかもしれましぇん。ナツちゃんも食べたそうにしていましゅし……。
なら、善は急げでしゅ!とりあえず、使えそうな具をありったけ全部載せて、焼いてみるでしゅ!
◇ 30分後…… ◇
「なんか思っていたのと違うものができたでしゅ……」
「んま……」
「本当は、あり合わせの具材を使ってお好み焼きを作ろうとしていたんでしゅけど、気付いたら何か違うものになってしまったみたいでしゅ。でも、美味しそうな匂いはしてるでしゅから……多分、大丈夫だと思うでしゅ!」きりっ
「んまっ」
「では、早速試食してみましょう」
——と、そんな時でした。
バチバチッ……ズドォォォォォン!!
前にもどこかで聞いたことのある大きな音が、その場に響き渡り……。そして、その音がした場所から——
「……我は、次元の狭間に封印されし究極の戦闘マシン、コルテックス。我の眠りを目覚めさせたその罪、汝らの命で……って、あれ〜?あなたたちは確か、シロさんとナツちゃんですね〜?お久しぶりです」
——明らかにものすごく面倒くさそうな狐しゃんが現れたでしゅ。まぁ、正確には狐しゃんではなくて、狐しゃんの耳と尻尾を生やした人間の女の子でしゅけど。
「こちらこそお久しぶりでしゅね?コルしゃん。でも、こんな山奥でまた会うなんて……もしかして、コルしゃん、わっちたちのことを追いかけて来てるんじゃないでしゅか?」じとぉ
「いえいえ〜。そんなことはありますよ〜?勘違いしないで下さい」
「…………えっ?今、何て……」
「ま、そんなことはどうだって良いではないですか〜。問題はそこにある料理です。前にお会いしたときと同じく、芳醇な香りが漂ってきているようですが〜……今日は何を作ったのですか〜?」
「えっ?前にコルしゃんに名前を教えて貰った、お好み焼きでしゅよ?ナツちゃんのお気に入りでしゅから」
「んま!」
「お好み焼き〜……そうですかそうですか〜。でも、どうやったら、お好み焼きが”ピザ”になるのか、私としては、小一時間くらい、シロさんのことを問い詰めたいところですね〜」
そういうことでしゅか……。つまり、わっちが作ったものは、やはりお好み焼きではないと……。
「……えっ?でも、これ、材料はまったく同じでしゅよ?」
「材料はまったく同じでも、混ぜる順番や焼き方を変えれば、まるで違う料理になりますからね〜。まぁ、時間も無いので、とりあえず味見をしてみましょう」
そう言って、どこからとも無く取り出した真っ白な皿の上に、これまたどこからともなく取り出した幅広の包丁のようなものを使って、お好み焼き——えっと、ピザ?を切って、その一片を皿の上に載せるコルしゃん。随分と準備が良いのが、すごく気になりましゅ……。
「どれどれ〜?はむっ……」
「んまっ?!」
「……やっぱり、うまっ!」
「もう、コルしゃんたら……。食べちゃいけないとは言いましぇんけど、この料理はナツちゃんのために作ったおやつなんでしゅから、あまりたくさん取らないでくだしゃいよ?」
「んま!」
まったく、コルしゃんに困ったものです。このまま放っておくと、全部食べられてしまいそうなので、無くならない内に、ナツちゃんあげてしまうでしゅ。
……と、考えていたんでしゅが、どうもそういうわけでもなさそうでしゅ。最初に皿に載せた分だけで、コルしゃんはそれ以上、手を付けず……。皿の上にあったものが無くなったところで、自身の小さな鞄の中に手を入れると——
「……ふっふっふっふー」
——と、怪しげな笑みを浮かべ始めました。……え?いや、笑っているのはわっちではなくて、コルしゃんでしゅからね?
「な、なんでしゅか?急に……」
「いえいえ〜。前回と今回、シロさんとナツちゃんには大変お世話になったので、今日は少しばかりお返しをしようかと思いまして〜」
「……お返し?」
「えぇ、お返しです。それも、お菓子のお返しです。……以前、シロさんが作ろうとしていたケーキというものがなんたるかを教えるべく、我がミッドエデン共和国最高のパティシエである”妾”に、少量作ってもって、今日ここに持ってきました〜。さすがに生ケーキは難しかったので、カステラですけどね〜」
そう言って、たったの2切れの”小さな塊”をわっちたちの前に差し出すコルしゃん。彼女の言葉は、わっちには難しすぎて、何を言っているのか、よく分からなかったでしゅけど……どうやら、これが本物のケーキらしいでしゅ。見た目は黄色っぽくて、茶色い皮のようなついて、そしてなんとなく柔らかそうな物体でしゅけど……これ、本当に食べれるんでしゅかね?
「……コレが食べられるのか疑っている〜、といったような表情ですね〜?でも、安心して下さい。今日が4月1日だからと言って、食べた後で、実はアサガオケーキでした〜、なんて恐ろしいことは言いませんから〜」
「「…………?」」
「まぁ、騙されたと思って食べてみて下さい。……おっと、もう帰る時間のようです。反応を見たら、すぐに帰りますので、早く食べちゃって下さい」
「……仕方ないでしゅね……」はむ
「んま……」ぱくっ
「「…………!」」きゅぴーん
「……満足です。では、帰りますね〜?またどこかでお会いしましょう」
そう言って——
ブゥン……
——と、本当に姿を消すコルしゃん。
彼女から貰ったのは、たった一切れ、たった一口の、小さな”ケーキ”だったでしゅけど——
「これが……ケーキ……」
「んまっ……」
——わっちとナツちゃんにとっては、それ以上の意味を持っていて……。この日あったことは、この先も忘れられない出来事になったのでした。
……うん。
タイトルだけエイプリルフールっぽいかなぁ。




