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テンキュウノアメ  作者: ルシア=A.E.
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1.6.6 食べようとして、反対されて

「「あ……」」

「んま……」


「ふむ……。噂には聞いておったが、やはり狐というものは、何かに化ける生き物のようじゃな……」


「「「…………」」」


 いったいどの口でそれを言っているのか、と言わんばかりの様子で、なんとも言いたげな表情をアメ狐へと向ける約3名。そのうち、ナツも閉口していたのは、単なる偶然か、あるいは何か特別な理由があったからか……。

 

 そんな視線を向けられていたアメは、続けてこんな言葉を口にする。


「最近は、めっきり姿を見なくなっておったが……どうもワシは、狐というものが苦手じゃ。勝手に向こうから来ては、会うたびに、何故かワシに噛みついてきたり、唸ったり、吠えてきたりするからのう……。挙げ句、こちらが声を掛けると、尻尾を巻いて逃げていく始末。もしや、あれかの?皆、ワシのことを、寄って集って、虐めておるのかのう?」


「(そりゃ、アメしゃん、身体が大きいでしゅから、仲間の狐しゃんが寄ってきても、怖がって逃げていくんじゃないでしゅか?)」

「(まぁ、十中八九、虐めてるのはアメさんの方でしょうね……)」

「(んまんま)」


「む?なんじゃ主ら、その顔は。何か言いたいことがあるなら、はっきりと言うてみよ!」


 と、子ギツネが姿を見せてからというもの、不機嫌そうな様子のアメ狐。どうやら彼女は、長い人生の中で、同じ種族であるはずの狐たちと、うまくいかなかったようである。そのせいか、アメは、狐を目の(かたき)にしているらしい。


 ところで、アメ狐の一撃を食らい、変身が解けてしまった子ギツネの方は、というと――

 

「…………」ぐったり


――()()は一切動かず、力尽きたかのように地面に伏せていたようである。とはいえ、死んだわけでもなければ、大ケガを負ったわけでもはなかったようだが。

 そんな子ギツネの様子を見たアメ狐は、一聞すると、容赦が無いように聞こえるこんな一言を口にする。


「……よし、シロよ。こやつはもう虫の息じゃ。せっかくじゃから、音に聞く"きつねうどん"とやらを食べてみたいのじゃが、お主、作れるか?」


 その問いかけに対し、シロは、二重――いや三重の意味で、あきれたように返答した。


「アメしゃん?きつねうどんに狐の肉は入ってないでしゅよ?それに、共食いは身体に良くないって聞きましゅから、その子ギツネしゃんを食べるのは、お勧めしないでしゅ。というか……本当にアメしゃんは、不器用でしゅね?」


「は?何じゃ急に……」


「はいはい。……子ギツネしゃん?怪我はないでしゅか?」

 

 と、地面に横たわっていた子ギツネに質問しながら、()()の顔を、そっと覗き込むシロ鶴。

 すると、ぐったりとした子ギツネの方から、言葉による返答の代わりに、こんなくぐもった音が聞こえてくる。


ぐぅぅぅぅぅ……


「んー……どうやらこの子、お腹が減って動けなくなっているみたいでしゅね?それに、かなり疲れてるみたいでしゅ。なんかこう、痩せこけて、ゲッソリしてるというか……」


「そりゃそうですよ。昨日は川に流されたというのに、どうにかしてここまで戻ってきたんです。多分かなりの距離を歩いてきたんじゃないでしょうか?そして、寝ないで変身し続けて、ずっと私たちが起きるのを待っていたんでしょう。かわいそうに……」


 そう口にしながら、昨日のことを思い出すアオ。

 そのあとで、シロとアオは、まるで申し合わせたかのようにこう言った。


「アメしゃん、多分、この子に好かれてましゅね」

「アメさん、きっと、この子に好かれてると思います」

「んまんま」


「……はぁ」


 一体、どれだけポジティブに考えれば、そんな考えに至るというのか……。アメはそんなことを考えて、大きなため息を吐くのだった。



 それからシロが、山菜とキノコと野ウサギの雑煮を作り上げたところで、その匂いに反応したのか――


「くぅん……」


――と、子ギツネが目を覚ます。

 ちなみに彼女がどこにいたのかというと、気絶した時のまま、地面に転がされていた、というわけではなく――


「あ、起きたみたいですよ?」


――アオの膝の上にいた。アオは、ナツや子ギツネのように、小さな子どもが好きらしく、子ギツネを暖めながら、彼女のことを撫で回していたのだ。

 すると、その言葉を聞いて、調理をしていたシロが返答する。


「もう少し待っていてくだしゃいねー?いま朝食を急いで作ってましゅからー」


 その言葉は子ギツネにも聞こえていて、その上、彼女は、人の言葉を理解していたはずだが――

 

「…………」ぽかーん


――しかし、子ギツネは返答できなかったようである。彼女は現状が受け入れられず、実は夢を見ているのではないか、といった様子で、自身を撫でるアオや、美味しそうな匂いのする朝食を作っていたシロのことを眺めていたようだ。

 

 そして最後に、子ギツネの視線がたどり着いたのは――


「……なんじゃ?ワシの顔に何か付いておるかの?」ゴゴゴゴゴ

「んまんまんま」がぶぅ


――楽しそうに(?)戯れていた、アメ狐とナツのところだった。


「…………」じぃー


「……ふん。まぁ良い。お主が何を考えてワシらに接触してきたのか、シロの作った飯を食いながら、包み残さず喋ってもらおうぞ?」


「アメしゃん……」

「何だかんだ言って、やっぱり優しいですね……」


「飯ぁまだか?シロよ?」


「はいはい、もうできましゅよ?お椀を出して待っててくだしゃい」


「ふむ。シロの飯を食わねば、1日が始まった気がせんからのう……」


 そう良いながら、背負っていたバッグの中へと、ガサゴソ、と頭を入れて、自分のお椀と、ナツのお椀、それにしっかりと予備のお椀を取り出すアメ狐。

 

 そんな彼女は、シロやアオの言葉通り、やはり不器用な狐なのかもしれない……。


アオさんは何者なのか……。

子ギツネさんの扱いをどうするのか……。

色々と悩ましいです。

アメちゃんとナツさん、それにシロさんは、立ち位置が決まっているので楽なんですけど……。

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