くりしゅましゅ
「夕方まで一緒にここでお留守番でしゅねー?ナツちゃん」
「んまー」だらぁ
「……もしかしてお腹が減ったでしゅか?」
「んまんま」
「仕方ないでしゅねー。何が食べたいでしゅか?」
「…………」にたぁ
「わ、わっち……じゃなくて、鶏肉でしゅか?」
「んまんま」
「そうでしゅか……でも、あいにく、小鳥しゃんのお肉を切らしているんでしゅよー。ドジョウしゃんもねー」
「…………」にたぁ
「うっ……。で、でも、切らしているものは仕方がないので、別のもので我慢してくだしゃい」
「んま?」
「えーとでしゅねー……わっちが持ってる食材はー……麦の粉と、卵と、鹿の乳と、そこで採れたコクワの実と……鹿のお肉くらいでしゅかねー。材料があるようでないような……微妙な感じでしゅねー」がさごそ
「んまぁ……」
「じゃぁ、これで、何か作ってみるでしゅ」
「んまっ?」
「そう言えば、この時期、遠い異国の地では、真っ赤なお洋服を着たお爺ちゃんが、"悪い子はいねーがー、悪い子はいねーがー"と言って、見つけた悪い子に向かって、"しょこらーて"なるものをぶつけ、家から追い出すという奇祭があるそうでしゅ」
「んまっ……」
「い、いえ、ナツちゃんが悪い子というわけではありましぇんよ?ちなみに良い子の所には、しゃんしゃんしゃんしゃん、という音と共に、美味しい"けーき"なる食べ物が届けられるとか……」
「んまっ!」
「わっちは食べたことがないので、想像でしか作れましぇんが……試しに少し作ってみましゅか?」
「んまんま」
「では、少し待っててくだしゃい。今から、美味しい"けーき"を作ってみるでしゅ!ふふ……ふふふふふ……」カタカタカタ
「…………」にたぁ
◇
「……できました」
「んまぁ」だらぁ
「でも、想像していたものと、何となく違うような……」
「んま?」
「やっぱり、鰹節は余計だったでしゅかね?あ、ちなみに、この鰹節、動いてましゅけど、実は生きてるんでしゅよ?」ゆらゆら
「…………」にたぁ
「では早速食べ――」
バチバチッ……ズドォォォォォン!!
「「?!」」
「……ふぅ~。"どこにでもドア"の出力を上げたら、すごいところに飛んできたみたいですね~。やはり、ドアがないところに飛ぶと、ろくなことにはならないみたいです。で~……ここは、どこでしょうか~?」
「あのー……誰でしゅか?」
「おやおや~?さっそく第1森人発見ですね~。……おっほん。我が名はコルテックス~。世界を表と裏から牛耳る存在ですよ~?」
「なんかよく分からないでしゅけど、人間しゃん……とは少し違うみたいでしゅね?尻尾と耳が生えてましゅし……。もしかして……狐しゃんでしゅか?」
「ほ~?あなたには、私が人間ではないと分かるのですね~?ただ者ではありませんね~?」
「はいでしゅ。何しろ、わっちも、人間ではなくて、鶴でしゅから」ボフンッ!
「そうですか、そうですか~。鶴さん……は?」
「だから鶴でしゅ。でも、名前はシロでしゅよ?」ばっさばっさ
「……そうですか~。最近どうも、仕事のしすぎで、頭がおかしくなってきているみたいです……。これは帰ったら、オーバーホールした方が良いかもしれませんね~」
「やっぱり、コルしゃんの言っていることは難しすぎて、わっちにはよく分かりましぇん……」ボフンッ!
「まぁ、まぁ、気にしないでください。ところで~……何やら美味しそうなものを、食べようとしているようですね~?」
「はいでしゅ。何を隠そう……遠い異国の地で食べられているという"けーき"という食べ物を作ってみたでしゅ!コルしゃんも食べてみましゅか?」
「……お好み焼きの間違いでは~?」
「おこのみやき?」
「ケーキにお肉なんて入ってないですからね~。どれどれお味は~」パクッ
「んまっ?!」
「うまっ?!」
「まぁ、とーぜんでしゅね。わっちが作っているんでしゅから、美味しくないわけがないでしゅ。あ!そうでした。はい、ナツしゃん?あーんしてくだしゃい?」
「んまんま」がぶぅ
「その子、ナツっていう名前なのですか~?」
「はいでしゅ。ちょっと訳あって、一時的に預かっているのでしゅが……何かありましたか?」
「いえいえ~。遠い知り合いに、同じ名前の方がいたな~、と思い出しただけですよ?……ナツちゃん?ナツちゃんは大きくなったら、どんな大人になるんでしょうね~?楽しみですね~?」
「んまんま」もぐもぐ
「何を言っているのでしゅ?コルしsy」
「おっと~?時間切れのようです。お姉さまと違って、転移した先から戻れなくならないように、"糸"を付けておいたのですが~……もう限界のようですね~。これはもう少し改良が必要かもしれません」
「えっ……?」
「シロさん?お好み焼き、美味しかったですよ~?そのお礼に、これを差し上げましょう。まぁ、サンタからの贈り物だと思ってもらえれば良いかと思います」ひょい
「何でしゅか?これ……」
「最強の魔法使いと、天才鍛冶職人が作った、とっておきの腕輪です。まぁ、お守りみたいなものですね~。では、さらばなのじゃ~」
バチバチッ……ブゥンッ!
「何でしゅか?あの人……」
「んまんま」もぐもぐ
「ナツちゃんには、どうでもよかったみたいでしゅね……。さて、わっちも冷めない内に、"けーき"を食べるでしゅ!」
アメとアオの知らないところで、そんなやり取りが交わされていたとかいなかったとか……。




