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テンキュウノアメ  作者: ルシア=A.E.
20/96

1.3.9 出ていって、脅されて

「なんということだ?!」


 アメたちがいた森にやって来たのは、昨日、彼女たちが訪問した村の人々だった。彼らが、各々に武器らしきものを手に持っているところを見ると、皆、夜中に響いていた熊(?)の断末魔を聞いて、その様子を見にやって来たのだろう。


 そんな村人たちのことを木の陰に隠れながら観察していたアメとシロは、彼らが手に持っていた武器を見て、一旦は眉をひそめるものの……。自分たちが人の姿になっていることと、村人から依頼を受けていることを思い出して、2人は思い切って、表へと出ることのしたようだ。


 その結果――


「……!お前ぇだち、確か……昨日、うちの村で、仕事ねぇがぁって、歩き回ってだ奴らだな?!」


「あぁ、覚えとる。儂んところにも来おったもんたちじゃ」


――と、自分たちのことを覚えていた村人たちに声をかけられるアメとシロ。

 そんな村人たちに向かって、シロが平たい胸を張りながら宣言する。


「……ご依頼の通り、村を騒がせていた熊しゃんを討伐したでしゅ!」


 それに対し、村人が返答するのだが……。しかし、それはアメたちにとって、思いがけない――いや、予想していた中で、最悪の言葉だった。


「何を言っておる!この、他所もんが!儂らが山ん神さんを殺せなどと、言うはずがなかろう!」


「そうじゃそうじゃ!あぁ……この先、村にどんな災いが降りかかるか……この阿呆どもを取っ捕まえて、晒し首にしちまえ!贄じゃ贄!」


「「「おうっ!」」」


 一人の村人の呼び掛けに応じ、一斉に呼応する彼らが、アメたちに向けたものは殺意――だけではなかった。

 若く見える女性の旅人たちが、森の中で、"神"を殺した、と自ら申し出てきたのである。道徳も人権も学もないそんな世界で、男たちの前に、"罪"を犯した女性が現れたならどうなるのか……。世界の歴史が物語っていると言えるだろう。

 しかし、数百年間に渡り、たった1人の男性を愛し続けたシロにも、最近まで、ひとりぼっちだったアメにも、そんな人の習性など分かる訳もなく……。彼女たちは、今この瞬間、人の無情さ、虚しさ、卑しさ、というものを感じていたようである。そして自身の憤りも………。


 とはいえ。

 辛うじて、村人全員が、巨大な狐に喰われて全滅する、という最悪な展開だけは免れそうだったが。

 

 その発端は、シロのこんな一言だった。


「ちょっ……ま、待ってくだしゃい!わっちたち、"木こりの女の人"と約束したでしゅ!」


 彼女がそう口にした瞬間――


ざわざわざわ……

 

――と広がるざわめき。

 そして、その直後――


「……静まれぃ!」

 

――と響き渡る、老齢の男性の声。

 すると不思議なことに、辺りの喧騒は、突如として消え去ってしまった。まさに鶴のひと声とはこのことを言うのだろう。


 そんな圧倒的な威圧感をもった声の主は、その声色のまま、人に化けた鶴に向かって、こう口にした。


「この村に"木こりの娘"などおらん!適当なことをほざいておるようなら、ここでその首落としてくれる!」


「そ、そんなこと言われましても、昨日、村の中で会ったあの方は、わっちたちに言ってたでしゅ!……村の人たちがたくさん犠牲になったから、人喰い熊しゃんを倒してくれたらみんなが助かる、後のことは私から村長しゃんに伝えておく、と……」


 と、昨日会った女性のことを思い出して、必死に弁明するシロ。


 対して男性の方は、どこか吟味するような鋭い視線をシロとアメたちに向けて、考え込むようなそぶりを見せると……。何かしらの結論が出た様子で、再び話し始めた。ただし、どういうわけか、毒気が抜けた様子で。


「……あいつは去年、死んでしまった」


「えっ……」

「…………」


「この神さんに喰われてだ。……にも関わらずお前ぇは、本当に、()()()()()会ったってぇのか?」


「会ったって……も、もちろん会ったでしゅ!間違いないでしゅ……」ぐしゅっ


 男性の威圧に耐えきれなくなってきたのか、泣き出してしまうシロ。


 そんな彼女の姿を見て、思うところがあったのか。ここまで黙っていたアメが、その口を開く。


「……人というものは、依頼を反故にした挙げ句、後ろ足で砂をかけるような真似をするのかの?」


 それを聞いた男性が何を思ったのかは定かでないが、彼がアメに返答した言葉は、ここまでの発言とは随分と毛色の異なるものだった。


「……何を望んでいる?」


 その途端――


「?!」

「村長!まさか、こんな他所もんに、報酬を出すってんですかい?!」

「ちょっと、待ってくだせぇ!」


――男性のことを村長と呼び、詰め寄る村人たち。

 

 どうやら彼が村長。

 そして、死んだはずの"木こりの女性"の父親だったようだ。


タイトルを考えるのって、難しいですよね。

変なことを書いて、ネタバレをするわけにもいかないですから。

そう考えると、やっぱり、同じタイトルを続けて書くのが無難なんですけど……この話は、最後まで、バラバラのタイトルで続けていく予定です。


その理由は多分……最後の話を見たら分かると思います。

って言っても、最後って……来るのかなぁ……。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 20/89 ・大自然っていいですね。 ・クマァァァァァァッッ!! ・いい意味でワルツ臭がする展開 [気になる点] 黒くて四足歩行で触手が生えてるって、ものの○姫に出るアレですよね。 …
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