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テンキュウノアメ  作者: ルシア=A.E.
16/96

1.3.5 罠を作ろうとして、やりすぎて

「……で、どうしてワシが穴を掘らねばならんのじゃ?」ズサササッ


「だってアメしゃん、狐しゃんじゃないでしゅか。穴堀り得意だし、大好きでしゅよね?」


「苦手ではないが、得意でもないぞ?それに、好きでもないしのう……」ズサササッ


「(……そのわりに、嬉しそうに掘ってましゅよね?)」


「きゃっきゃ!きゃっきゃ!」


 背中に大喜びな様子のナツを乗せながら、前足を使って、獣道に大きな穴を穿つアメ狐。その際、彼女は毒づいていたようだが、一心不乱に穴を掘るアメの姿は、シロから見ると、嬉しそうに掘っているようにしか見えなかったようだ。


「まあまあ、お金のためでしゅ。頑張って掘ってくだしゃい」


「ふぉぉぉぉぉ!!」ドゴォォォ


「きゃっきゃ!きゃっきゃ!」


「(これは色々と使えそうでしゅね……)」


 その場の地面に、猛烈な速度で穴を穿っていくアメの姿を観察しながら、これからも必要になるだろう路銀稼ぎの方法について考えていたシロ。そんな彼女の脳裏には、どうやら明るい未来(?)が浮かび上がってきていたようだ。


 ちなみに。

 なにもシロは、その場で現場監督をすることだけが仕事だったわけではない。彼女は彼女で、やらなくてはならないことが別にあったのだ。


「……何か、営巣(えいそう)をしてる気分になってきましゅね。まぁ、アメしゃんとの愛の巣を作っているということにしておきましゅか。そう考えれば、俄然やる気が出てくるでしゅ!ふふ……ふふふふふ……!」カタカタ


 という、どこか感覚のおかしいシロの言葉通り、彼女はその場に落ちていた木の枝や木葉を拾い集めていたようである。ただもちろんのこと、彼女の目的は巣を作ることではなく、落とし穴の上に被せる覆いを作ることだった。

 アメが穴を堀り、シロがその上に被せる覆いを用意する……。まさに、2人で協力して、作業を進めていたようだ。


 それから間もなくして。シロはその辺にあった落ち葉や枝をあらかた拾い集めてしまったらしく、少し離れた場所まで材料を拾いに行った――そんな時のことだった。


「……ナツよ?シロはおらんな?」


「んまんま」


「……ちょっとズルをするのじゃ」


 今まで嬉々として穴を掘っていたはずのアメ狐が、不意にその行動を止めたのである。

 そして、次に彼女が行ったのは――

 

ボフンッ!


――本来の巨大な姿に戻る、というものだった。

 

「……行くぞ!」

 

ズドォォォォォン!!

ズドォォォォォン!!


 大きな姿のアメ狐が、その前足を地面に叩き付けるたびに、まるで爆破作業をしているかのごとく、巻き上がる土砂の山。

 それを10回ほど繰り返してから――


ボフンッ!


――アメは普段の狐の姿に戻って、穴堀りを再開したようである。

 すると間もなくして――


「あ、アメしゃん?!大丈夫でしゅか?!いましゅごく大きな音が……」


――慌てた様子でシロが戻ってくる。


「む?何かあったかのう?」しれっ


「んま?」


「何かあったかって……な、なんでしゅか?!この巨大な穴は!熊しゃんでも爆発したんでしゅか?!」


「いや、そんなわけなかろう。ワシが本気を出した結果じゃ」


「本気って……こんなことができるなら、熊しゃんと直接戦って倒してくだしゃい!」


 と言って、呆れと憤りが混じったような反応を見せるシロ。なにしろそこには、直径、深さ共に10mを超えるような、巨大な穴が開いていたからだ。


「む……(やり過ぎたかもしれぬ……)」


「で、どうやってやったんでしゅか?これ……」


「…………ふぅ。ワシはもう、1日分の力を使い果たしてもうた。後のことは頼んだぞ?シロよ……」


「こんな大きな穴に、どうやって蓋をしゅるんでしゅか?!もう……」


 そう言いながらも、アメの穿った大穴をどうやって使おうかと考えるシロ。罠としての使い道以外にも、何か言い案は無いか、幅広く考え始めたようだ。

 その結果――


「大きな落とし穴……大きすぎる……はっ?!見えたでしゅ!」


――彼女には何か見えたようだ。


「む?ナツのオシメの色かの?」


「…………」にたぁ


「うっ……!ち、違うでしゅ!アメしゃんが開けた大穴の使い方でしゅ!このままでは、落とし穴として使えないほど大きいでしゅから、少し工夫して使おうと思うでしゅ」


「ふむ……して、どんな風に使うというのじゃ?」


「ふふ……ふふふふふ……。そのときまで内緒でしゅ」カタカタ


「……さよか。まぁ良い。次は、熊を誘き寄せるのかの?」


「いえ。もう2つ準備するものがあるでしゅ。まぁ、なんてことはないものでしゅよ。ちょっと木を折って並べるのと、草を摘むだけでしゅから」


「……厠なら一人でいってくるが良い」


「……お花の方ではないでしゅ」


 そんな、少々下品とも言えるやり取りを交わしてから、その場を離れて……。獣道を進むアメ狐とシロ。

 

 それから彼女たちは、紫色の花が咲いた野草を集めて、アメが掘った穴の中へと放り込んでいくのだが……。その際、2人共が人の姿をしていて、その()で植物を採集していたのは、獣の姿のままで採集するのでは、何か不都合でもあったからか。


サブタイトルの番号を振り直したのじゃ。

あと、あらすじを修正したのじゃ?

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