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テンキュウノアメ  作者: ルシア=A.E.
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1.3.3 仕事を求めて、村をさまよって

 そして、翌日の昼過ぎ。とうとうアメたちは、峠の麓にあった村へと差し掛かった。

 この先に広がっているのは、霞に浮かぶ高い山脈だけ……。それを前にして、未だ防寒着の準備が出来ていなかったアメは、自身の背中で静かに眠るナツのことを考えて、頭を抱えてしまったようである。


「さて、どうしたものかのう……。どうやって……銭を手にいれれば良い?」


「それ、昨晩も言ってましたよね?とりあえず村に行って、お金を稼ぐ方法がないか、村人しゃんに聞いてみるのではなかったのでしゅか?」


 と、昨晩、寝る前に話し合った内容を思い出しながら、そんな指摘を口にするシロ。

 そんな彼女の言葉通り、身の切り売り(?)では、毛皮の購入どころか、旅の継続に支障が出る恐れがあったので、村で何か仕事がないかを聞いて、もしも仕事があれば、まっとうに働いてお金を稼ぐ、という結論になっていた。逆に、仕事が無く、毛皮が買えない場合は、山脈を迂回して進むことにしていたようだ。

 

「問題はそれじゃ。ワシはこれまで、人のように働いたことはないゆえ、村でどうやって仕事を受ければ良いか、よう分からぬ。その辺、お主は、分かっておるか?」


「そんなの簡単ではないでしゅか。手当たり次第に家々を回って、"仕事くだしゃい仕事くだしゃい"、と言っていれば、そのうち仕事が見つかるに決まっているでしゅ」


「……それ本気で言っておるのか?」


「わっちは鶴でしゅから、当然やったことはないでしゅよ?でも、それくらいしか、わっちには思い付かないでしゅねー。まぁ、どうにかなりましゅよ」


「……さよか」げっそり

 

 だんだんとシロと共に旅ができる自信が無くなってきたのか、疲れたような表情を浮かべるアメ。

 そうこうしているうちに、彼女たちは、山まで続く道の途中に作られた、少し大きめの村へとたどり着くことになった。



「実をいうと……ワシは、こうして堂々と村の中に入るのは初めてじゃ」


「(しっ!誰かに聞かれると、不審がられるでしゅよ?アメしゃん!)」


 これまでに不審がられた経験でもあったのか、周囲を見渡しながら、そう口にするシロ。しかし、幸いなことに、彼女たちの近くには、人影はおらず……。2人のやり取りを聞いている者は、いなかったようである。

 

 その光景に何か思う所があったのか、アメは、シロに対して、問いかけた。


「しかし、シロよ。人の村というものは、これほどまでに閑散としておったかのう?お主が住んでおった村よりも、遥かに大きいと思うのじゃが、いかんせん、住んでおる者の数は、逆に少ない気がしてならぬ……」


「(ダメでしゅよ?アメしゃん!始めてやってくる村だからといって、そんな、キョロキョロと見回しては……。田舎者扱いされて、バカにされ……)あれ?そう言えば、本当に人がいないでしゅね?」


「いや、まったくおらぬ……というわけでも無いようじゃ。ところどころ、人の気配の感じられる家はあるからのう……」


「何か問題でも起こっているのでしゅかね?」


「さぁのう。その辺の家におる村人に、直接、聞いてみるしかなかろう」


「……これは……お金の気配がするでしゅね!」きゅぴーん


「……さよか」

 

 何を訳のわからないことを言っているのか、といった様子で、シロに対してジト目を向けるアメ。

  だが、この後、彼女は、シロに対する考えを改めることになる。

 

 

「ごめんくだしゃーい!仕事くだしゃーい!」ゴンゴンゴン


「(こ、こやつ、本当に言っておる……)」


 恥じらいとは無縁な様子で、家の戸を叩きながら、中にいるだろう村人に対して、仕事を求めるシロ。それを見ていたアメとしては、彼女が本当に手当たり次第に仕事を求めるとは思っていなかったらしく、呆れ半分、驚き半分といった表情を浮かべて固まっていたようだ。


 ……しかしである。


「あれ?出てこないでしゅねぇ……」


 家の中には、確かに人の気配があるというのに、シロが呼び掛けても出て来なかったのだ。


「もしかして、居留守でしゅか?恥ずかしがり屋しゃんなんでしゅねー」


「……お主がいきなり仕事を求めるからじゃろ……」


「そんなはずは無いでしゅよ。うるさいなら、うるさいと言われるはずでしゅし……」


「…………」


 その言葉を聞いて、色々と言いたかった様子のアメ。しかしそれでも、彼女がそれを口にしなかったのは、シロがこの場にいなければ、自分は未だ、村の周りを、ぐるぐると回りながら、村の中の様子を伺っていただろうことに気づいていたためか。


 それから彼女たちが、7軒目の家を回った時のことだった。


「ごめんくだしゃーい……。お仕事がないと……わっち……売り捌かれてしまうでしゅ……」げっそり


 演技(?)が板に付いたシロが、家の扉を叩こうとした、そんな時である。


ガチャ……

 

 家の扉が開いて――

 

「お前さんたち!お入り!」

 

ガバッ!

 

「ふにゅ?!」

「ふぬっ?!」


――中にいた村人に引っ張られ、彼女たちは家の中に引きずり込まれてしまったのである。

 

 そして、勢いよく閉められる家の扉。

 どうやら家の外には、アメたち以外に、何か招かれざる存在がいたようである……。


シロちゃんが、何となくコルちゃんに見えてくる不思議。

まぁ、アメちゃんはアメちゃんですけどね。


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