ストーリー 1,9
筆が乗ったので連続更新。
勤が居ないので第三者視点です。
「彼の様子はどうですか?」
「ハ、ハイ! 今は特に問題ありません。基本的には、ずっとゴーレムを作っているようです」
「そう……外部と連絡を取ろうとはしてないのね?」
「えっと、そんな素振りは無かったと思います」
ゴーレムを作ると言う勤の言葉は、砦内に大きな影響を与えていた。そもそも、ゴーレムを戦闘用に使うという考え方は今まで存在していない。だからこそ、帝国が投入してきたときに被害が甚大なものになった。
「戦闘用ゴーレム、異世界の人間は普通に思い付くものなのかしら?」
それはそれで恐ろしい話だ。でも身の内にスパイがいるよりは気が楽に思える。
「それじゃ、また監視に戻って下さい。明日の定時報告もよろしくお願いします」
「りょ、了解です」
◇◇◇
「はあ、緊張したぁ」
軍人に限らず、新人にとって上への報告とは非常に精神にダメージを受ける行為である。ミラも例外ではなく、背中に嫌な汗をかいていた。
「監視かぁ、あの人って悪い人じゃないよね」
ゴーレムを作っている等の変な行動はしているが、助けてもらったということもあり、彼女はいつの間にか怖い人という評価から上方修正していた。
「あっ、ミラこっちこっち」
ミラに声を掛けたのは、彼女と同日にここへ来た栗鼠人の少女だった。奴隷館に入れられた日も一緒だったという縁もあり、よく話す間柄になっていた。
「クィル、どうしたの?」
「んー、いや、特に用事はないんだけどね。最近、顔見れなかったから」
そのまま雑談を始め、いつの間にか話題は勤のものへと変わっていった。
「凄いよね、色々と」
「あれ、クィルってあの人に会ったことあるの?」
「喋ったことはないけど。ご飯食べてるところとか、壁直してるとこは見たことあるよ」
勤はゴーレム制作以外にも、砦内の様々なことに対して手伝いをしていた。特に各種設備の修理は『創造』と非常に相性が良く、重宝されていた。
「良い人だよね。そういえば、ミラも助けてもらってるし」
「ゴーレムを作ってるときは、ちょっと変なんだけどね」
「えー、どんな感じなの?」
その後もしばらく会話は続いていた。緊急事態を知らせる警報が鳴り響くまでは━━
◇◇◇
「いったい何があったの? 報告は?」
人員も少なく戦略的な重要性もない砦では、警報を鳴らす事態はそうそう起こらない。可能性は限りなく0だろうが、ミリアは誤報という考えすらあった。
「団長、大変です!」
その報告は、ミリアの時間を凍らせるのに十分な冷気を持っていた。まるで、薄氷の上に立っているような気分が彼女を襲う。
「帝国のゴーレムです! その数、3体!!」