ストーリー 1,5
団長さんが出て行った後、彼女の部下らしき人から、また別の部屋に案内された。部屋を出るときの指示はそういうことだったらしい。
「ここでお待ちください」
広い部屋に似合わない小さな窓から外を見る。そこには規模こそ違うものの夢で見たような光景が広がっていた。
鎧を着た兵士達が武器を手にして戦場を駆けていく。剣よりも槍を持っている方が多いようだ。
「アレが魔物か……」
兵士達が相手しているのはオオカミのような異形の存在だ。後足が極端に肥大していて、歪なシルエットを成している。団長さんが言うには、この戦闘で何か分かるらしいんだけど……あれ?
「女性が多いような……この世界ではこれが標準なのか?」
創作物なら女性だけの部隊だろうと珍しくないけど、現実での軍隊は殆ど男なイメージがある。そのまま見続けていると、更に目を疑うようなものが目に入った。
「獣人……はまあ異世界だし。それより、あれは流石におかしいだろ」
戦場の中には、誰がどう見ても明らかに子供と分かる人物が交ざっている。どれだけ激しい戦国時代だとしても、子供を積極的に戦場に出す世界はないはずだ。
「ここの問題ってそういうことかな」
極端な人手不足、引いては戦力不足ということか。俺みたいな怪しい奴でもスカウトしたくなる訳だ。
「とはいえ俺に出来ることって……」
運動神経は中の下程度だから戦力にはならないだろうし、魔法もそう簡単に覚えられはしないだろう。
徐々に数を減らしていく魔物を見ながら考える。ゴーレム相手でもなければ、夢の中のようなギリギリの戦闘にはならないらしい。
「……まてよ。ゴーレムを作ればいいのか」
自分が戦力にならないなら、戦力になるものを作ればいいじゃないか。問題はゴーレムが作れるものなのかってことだけど……
「あれだけ強いんだし捕獲できるようなヤツではないよな。やっぱり作るんじゃないかな」
窓の外では戦闘が終わろうとしている。さて、俺も……
◇◇◇
「ゴーレムの作り方、ですか?」
「はい。というかそもそも、作れるものなんですか?」
魔物を全滅させて戻ってきた団長さんに、さっそくゴーレムについて聞いてみた。
「作れないものでもないですけど……」
しまった。夢の出来事だと思ってたけど、ここの人達ってゴーレムの被害者なんだった。何聞いてんだ俺!
「あ、えっと……」
「倉庫に設計書があったはずです。案内しますね」
「……ありがとうございます」
まあとりあえず、今後のことは設計書を見てから考えようか。