ストーリー 2,9
長くなったので分割します。次は今日の13:00に予約投稿してまさ。
初日の移動は予定通りに進み、特に何事も無く最初の目的地に到着した。
「それでは、今夜一晩だけお世話になります」
「いえいえ、リリィ様のためでしたら断る理由などございません」
村長は王女様と面識があるようだった。
「ああ。俺達は前にもこの村に来たことがあるんだ。そのとき色々あってな。感謝されるなんて滅多に無い経験をしたよ」
親衛隊の人に尋ねたところ、そんな話を聞くことができた。深く考えるつもりはないけど、どうやら王女様サイドにも何か事情はありそうだ。
「まあいいや。とりあえず俺達は夜営の準備をするぞ」
土地は貸してもらえたけど、村には部隊全員が入れる数の建物はない。ついでに言うと、王女様を雑魚寝させるわけにもいかない。
これらを見越して、輸送用コンテナはテント代わりに利用できる設計になっている。
村の人の邪魔にならないようにコンテナを並べて、夕飯の調理ができるスペースを設置するまでが夜営の準備だ。
「隊長、設置終わりましたー!」
「分かった。じゃあリッパーは全機ともアスカロンの隣に停めておいてくれ。待機姿勢は2番だ」
「分かりました!」
面倒な準備も、ライドゴーレムならすぐに終わらせられる。地面を均して、機材を並べて、それで大体おしまいだ。
作業を終えた機体からメンテナンスを始めていく。今日は戦闘は無かったけど、もし関節やコンテナの接続部が損傷していたら作戦行動や、何よりも人命に関わってくる。
「全機異常無しっと。突貫工事にしては、我ながら良い仕事したよ」
徐々に日も落ちてきて、このまま無事に終わるかと思われた1日目。事件が起こったのは、辺りが真っ暗になってからだった。
◇◇◇
「……あー、何か気配がするっすね」
見張りの交代のタイミングで、親衛隊長━━確かリュコウさんだったか━━から警告された。
「何かって、魔物ですか?」
「いや、魔力は感じないんで。だけどこっちの様子を伺ってるような感じが」
感覚的なことは分からないけど、嘘や冗談じゃなさそうだ。
「ライドゴーレム、準備します」
「よろしく頼んます」
この後の見張りのシフトになっている数人を起こして警戒体制に入る。狙われているのは村か……リリィ王女の可能性もあるか。
しかし、標的はすぐに判明した。
「悲鳴!? 村の反対側か!」
狙われているのは村の方らしい。こっちを狙ってたのは斥候か撹乱か?
「全員を起こすんだ! リッパーは乗れる奴が順に動かしてこい!」
この場で展開速度が一番早いのはアスカロンだ。ライドゴーレム同士の通信で状況も伝えられる。
「アスカロン、先行する!」