ストーリー 2,4
パンッ、と鋭い音を立てて矢が的に突き刺さった。
「……うろ覚えでも意外と作れるもんだな」
本やアニメなんかの知識から、コンパウンドボウやクロスボウを作ってみていた。クロスボウの説明は不要だろう。コンパウンドボウは弓の両端に歯車を取り付けて、少ない力で引けるようにしたものだ。
フレーム部はカーボン素材。弦はナイロンを使っている。どちらも『創造』で作成した。なんと『創造』は原子レベルで操作することが出来ると分かった。相応の魔力と集中力が必要になるので生産量は少ないが、色々と便利になる。
ともかく、そのチートスキルでゴーレムのパワーにも耐えられる素材が出来た。一応、試作品として人間サイズのものを作ったわけである。上手いこといったので、このままサイズアップするつもりだ。
「不思議な感覚……軽いのに強い」
これが、隣でコンパウンドボウを試していたイールの感想だ。普通の弓を扱ったことのない俺にはよく分からない。
そんなわけでしばらく試射を続けていると、砦の方から鐘の音が聞こえてきた。
「緊急集合?」
「間隔短いから……非緊急の方」
日が浅いから違いが分からなかった。後から聞いたことだけど、襲撃を受けるような危険性があるときが緊急集合になる。兵士的には焦るか焦らないか、の違いしかないらしいが。
◇◇◇
「……全員集まったようですね。先程、こんなものが届きました」
団長は全員に見えるように封筒を掲げた。多少距離があるけど、金色の封蝋が貼られている。
「王族からの封筒!?」
「マジかよ」「なんでそんなものが……」
周りがザワザワしてきた。気持ちは分かる……と思う。言い方は悪いし、実際に確かめたこともないが、この砦は恐らく僻地にある。ここの皆にしても、実感はないが、奴隷……最下層の身分だ。俺は例外だけど、ある意味それより下にいるようなものかもしれない。
「静かに。この手紙によれば、数日中に第一王女のリリィ・ソル・イリョス様が視察にいらっしゃいます」
ザワザワが一気に静まりかえった。
「……そもそも、なんでここに王族が来るんだ?」
「だよなぁ。行商も来ない土地だし、見るようなものも……ん?」
「あ……」「そういうことか」「うわぁ……」
最初の二人を皮切りに、そんな声が広がっていく。内容は分かる。分かってしまう。行き着く先は―――
「ライドゴーレムか」
全員の視線がこっちを向いた。なんと言うか、凄く申し訳ない。
「あ、えっと……余計なことをしてしまったようで、すみません」
ここは素直に謝るしかない。火種を持ち込んだのはこっちなんだ。
「止めてください! 元はと言えば私達が巻き込んだんです。責められるべきは団長の私です!」
周りからも同調する声が挙がる。なんていうか……その、すごく嬉しい。ここにいる期間は短くとも自分が受け入れられていると示すものだから。
「そもそもゴーレムが目的と決まったわけでもないので」
限りなく低い可能性だけど、それならいいなと思いつつ視察までの数日を過ごすことになった。




