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異世界最弱だけど最強のヒーラー  作者: 波崎コウ
第十章 恐怖の森
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(3)

 死神に魂を抜き取られたかのような三人の死を目の当たりにして、その場にいた誰もが背筋に冷たい戦慄(せんりつ)を覚えた。

 セフィーゼの風魔法とはまた違う、即死魔法の恐怖を肌で感じたのだ。


 魔法の知識がある僕でさえ体が震えを抑えることができない。

 ましてやリナは――

 今、真っ先に狙われるのは、アリスの身代わりになった彼女かもしれないのだ。


「大丈夫ですか? リナ様」

 僕はリナに訊いた。


「……リナ? 違います。今の私はアリスです」


 リナは特におびえた様子は見せない。

 外見だけではなく、性格までアリスになり切ろうとしているのだ。


 リナのあまりの変身ぶりに驚いていると――

 もう一人、恐るべき敵に毅然きぜんと立ち向かおうとしている人がいた。

 マティアスだ。


 即死魔法をものともしなかったマティアスは、冷徹な表情を崩さないまま、するりと背中の剣を抜いた。


「キサマ、どうやって魔法を防いだ? 普通の人間なら即死しているはず――」


 ローブの魔女は平然と剣を構えるマティアスを見て、いぶかしげな声を出した。

「鎧か……そうか、その鎧の効果だな」


 なるほど、戦場でもやたら目立っていたマティアスの赤銅しゃくどう色の鎧は、闇魔法に耐性のある聖なる装備だったのだ。

 ハイオークとの戦いでひどくひしゃげてしまったけれど、特殊効果は残っていたらしい。


 だが、マティアスは魔女の言うことには取り合わず、剣を上段に構えて叫んだ。


「それをお前が知る必要はない――ゆくぞ!」


 マティアスの掛け声とともに、竜騎士団の前衛10騎がローブの魔女目指し突撃を開始した。

 いきなり三人の竜騎士が殺され、もはや様子見している段階ではない。

 多少の犠牲は覚悟の上、数で押し切って強行突破するつもりなのだ。


「愚か者どもめ!」

 ローブの魔女は舌打ちし叫んだ。

「シャノン!」


「…………」


 シャノンと呼ばれた黒髪の女剣士は、何も言わず、寄りかかっていた枯れ木からパッと離れ道の中央に踊り出た。


 魔女を守るため、突進してくる竜騎士を真正面で迎え撃つのか――

 と、思いきや、シャノンは地面を蹴りあげ一気に空へ高く跳んだ。


『リープ』の魔法を使ったかのような、驚くべきジャンプ力。

 シャノンの体は一瞬にして、馬上の竜騎士よりはるかに高く、木々のてっぺん近くまで浮き上がった。

 その美しい髪が、まるで大きな羽を広げた黒鳥のように空中でパッと広がり、暗い森と見事に溶け合う。


 ――シャノンの姿が消えた!


 と、錯覚した時にはもう手遅れだった。 

 シャノンは抜刀し、竜騎士の一人にまとを定めて急降下していた。



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