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(3)

「散々考えたよ。でも何も思いつかないんだ。もう時間がないんだから頼む!」


 あくまで下手に出てお願いすると、セリカは数秒思案してから答えた。


「そうね、わかった。ここでユウト君に死なれちゃってもつまらないし」


「……つまらないってどういう意味だよ」


「あ、つい口が滑っちゃった」

 セリカはフフフっと笑う。

「今のは取り消し。そうではなくて、あなたの戦いぶりに敬意を表してちょっとだけヒントを上げる」


「アドバイスじゃなくてヒントだけ!?」


「いいから! まず言いたいのは、あなたは戦いの基本を忘れてるってこと」


「基本?」


「うん、基本中の基本。――そう言えば、あなた確か戦記物とか軍記物とか、そういった類の話が好きだって言ってたよね」


「え、なんで知っているの?」


「現実世界でちょっとそんな話しをしたじゃない」


「そうだっけ?」


 そんな記憶、まったくない。


「でね、『敵を知り己を知れば百戦あやうからず』って超有名な格言は知っているでしょ? ユウト君はその『敵を知る』って部分がちょっとばっかし足りなかったかなあって思うの」


「敵を知る?」


「そう! あなた、最初にコボルト兵と戦った時、そのステータスを調べようともしなかったよね」


「……確かに思いつきもしなかった。あんまり強くなさそうだったし」


「それが間違いの始まりよ。もっとも数が多い、その敵の強さを知っておかないなんて愚の骨頂。さあ、今からでも遅くないからコボルト兵を『スキャン』してみなさい」


「分かった……」


 言われるままに、僕は間近に迫るコボルト兵一匹に照準を合わせ『スキャン』を唱えた。


 ネーム:コボルト

 クラス:モンスター

 H P:225/250

 M P:0/0

  力 :120 

 知 力:40

 速 さ:133

 守 備:120

  運 :95

 白魔法:0

 黒魔法:0

 スキル:なし

 状 態:普通

 弱 点:聖なる光 強い光


 やっぱりステータスはかなり低い。普通の人間に毛が生えた程度の強さといえる。

 が、注目すべきはその弱点だった。


「そうか! それだ!!」


「気付いたようね。コボルト兵は本来夜行性。目が大きいから光に対する感受性が強いのかもね」


「でも!」

 セリカに対し、急に怒りが湧いてきた。

「そんなこと知っているなら何で、何で早く教えてくれなかったんだよ! もっと多くの人を救えたかもしれないのに!」

 

「え? それも人のせいにするんだ」

 けれど、セリカの声はさらに冷たくなった。

「いい、ユウト君。そんな甘ったれた思考回路だから現実世界で失敗続きだったのよ。むしろ最初にそれを思いつかなかった己の不明を恥じなさい。すべては自己責任!」


「……清家さんにそこまで言われる筋合いはないよ」


「とにかく私に怒りの矛先を向けるなんてお門違いもいいとこ。それより急いだほうがいいんじゃない? なにもかも手遅れになってしまう」


「絶対助かってやるから、見てろよ!」


「その意気よ。ま、せいぜい期待してる――」


 と、セリカが言いかけたところで、僕は乱暴に電話を切った。

 

 無性に腹が立つ。

 セリカはまるっきり上から目線の神様気取りだ。

 もし現実世界に戻る機会があったら、セリカのこと必ずとっちめてやる!



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 しかし、とにかく今はこのピンチを脱しなければ――

 そしてそれにはアリスの協力が不可欠なのだ。


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