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異世界最弱だけど最強のヒーラー  作者: 波崎コウ
第六章 風の少女
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(18)

「ユウト!」


 そこでアリスが僕を呼んだ。

 ついに出番が回ってきたのだ。


 そうだ、今は迷っている場合ではない。

 ここまで来たらやるしかない!


「いま行きます!」


 僕は兵士の群れを抜け、急いでアリスの元へ向かった。


「ユウト、すまない」


 緊張が緩んだのか、アリスの顔に一瞬ほっとした表情が浮かぶ。

 無理もない。

 この圧倒的に不利な状況下で、セフィーゼとヘクターという難敵を相手に雄弁し、彼らを言い負かし、ついに二対二の勝負に持ち込んだのだ。

 アリスは戦わずして、すでに敵に一泡も二泡も吹かせたと言っていい。


「これぐらい譲歩しないとあの男(ヘクター)決闘デュエルなぞ認めないだろうからな」

 アリスが僕に小声で耳打ちした。


「わかってます」

 僕はアリスの瞳を見て答えた。


「私の魔法でアリス様を絶対に守ってみせます」


「……頼もしいな」

 アリスの頬がちょっぴり赤くなる。


 あ……。

 ついキザなセリフをはいてしまった。

 そう思って急に恥ずかしくなったが、でもまあ、セフィーゼからアリスを必ず守りぬくという決意だけは本物だ。

 しかし僕を見て、セフィーゼが「キャハハ」といきなり笑い出した。


「え! 助っ人ってあんた? 冗談でしょう!? なあーにが『守って見せますよ』」


「……どういう意味だよ、それ?」 


 やっぱりこの()、とってもムカつく……!

 僕は思わずセフィーゼをにらんだ。


「別にぃ。ただ王女のお付きの魔術師なんだからもっとこう大魔法使い、みたいなすっごい人を呼んだと思ったの。でも実際出てきたのはフツーの兵士――どころかひょろガキなんだもん。おかしいじゃん」


 あのなぁ、自分はどうなんだ自分は! 

 どう見ても僕より年下、しかもさっきまで泣きべそかいていたくせに!


 そう思うと怒りも湧いてくるが、僕はここはグッと我慢し、沈黙を貫くことにした。

 戦う前にセフィーゼが気を緩ませてくれれば、それはそれで好都合だ。


「あんたみたいなのを助けに呼ぶなんて、王女様、追い詰められて頭がおかしくなってしまったのかしら? それともロードラントってよっぽど人材不足なの?」


「ふん……」

 アリスがニヤリと笑う。

「さっき言った通り、この“普通の兵士”は魔法が使えるぞ」


「魔法が使えればそれでいい、ってわけじゃないでしょ」

 セフィーゼは僕を見て尋ねた。


「――ねえあんた名前は?」


「……ユウト、ですけど」


「ユウトくん、悪いことは言わないからとっとどっかに逃げなよ。今回は見逃してあげるからさあ」


「お断りします。僕はアリス様を守るためにここにいるのですから」


「アハハ、白馬に乗った王子さま気取り? 無理しちゃって。まあ、その勇気だけは買ってあげる。でもね――」

 セィーゼの顔が急に真剣になった。目に殺気が宿る。

「戦いが始まったら、容赦はしないよ」


 ここまで明確な殺意を向けられたのは、たぶん生まれて始めてだ。  

 だが案外、恐怖も何も感じない。

 自分でもなぜかよく分からないけれど、もしかしたら、『アリスを守る』という大切な目的があるせいなのかもしれない。


「ねえ、ヘクター」

 セフィーゼがヘクターの方を向いて言った。

「やっぱ、助けはいらない。わたし一人で十分よ」


「いけません!」


「えーどうして?」


「この少年――私にも読めませんが、何か強い力を持っているような気がします」


「どこがよ。大した魔法を使えるようにも見えなないし。さっきの爺さんへの評価といい、今日のヘクターおかしいんじゃない?」


「とにかく油断は禁物です」


「ヘクターはそればっかり。でもまあ、いっか。一応警告はしたもんね。ヘクターと私、最強コンビの力を見せてあげる」 


 くそっ――今に見ていろ。

 僕は心の中でつぶやいた。 


 要するにセフィーゼは自分の魔力を過信しすぎなのだ。

 その自信の源を徹底的に打ちのめしてやれば、それだけで彼女はもろく崩れ去るに違いない。



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