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異世界最弱だけど最強のヒーラー  作者: 波崎コウ
第六章 風の少女
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(17)

「だけどさ、あなたって魔法は使えないんだよね?」

 と、セフィーゼがアリスに訊く。


「残念ながらな」


「それじゃあ戦っても一瞬で勝負が付いちゃうね。そんな戦い方をしたら後でやっぱり卑怯者呼ばわりされそう――わかった、私も剣で戦う。魔法は使わない」


「セフィーゼ、あなたはさっきから何を言っているんです!!」

 ヘクターがついに耐えきれなくなったのか、大声で叫んだ。

「私たちは勝利をほぼ手中に収めているのですよ。それを今さら一騎打ちだなんてあり得ません。ましてや剣で戦うなんて! 気でも狂ったのですか!」


「ヘクター、聞いてなかったの? これはパパの仇を打つための正式な決闘(デュエル)なの! ヘクターは王女を生かしておきたいのだろうけど、そうはいかないんだから。王女は私が正々堂々戦って殺す。もう決めたもの」


「なりません! 団長に万が一のことがあっては――」


「いいから口を挟まないで!」


「絶対にダメです!」


「なによ! この分からず屋!」

 セフィーゼはまるで親に反抗する駄々っ子に、ムスッとふくれてしまった。


「ヘクター!」

 と、そこでアリスが二人の会話を(さえぎ)った。


「なんですか? アリス王女」


「何度でも言う。今はセフィーゼが族長だということを忘れるな! お前はその族長の意思に背くというのか?」


「……しかし」


「まだためらうのか、ヘクター? ――ならば条件をもう二つ付け加えてやる。私はレーモンのようにケチくさいことは言わん。もしセフィーゼが私に勝ったら、イーザの完全な独立を認めよう。その上で私が王国領土に所有する荘園を全部くれてやる。年間20億エキュの収入のある土地だ。どうだ? これで不満はないだろう」


「それはまたずいぶん気前のいい。ですが、にわかには信じられません」


「何だと!? 疑うのか? よりによってこの私を!」

 アリスはここぞとばかりに声を張り上げる。

「ヘクター、見くびるな! ロードラントの次期王位継承者の名に懸け、私は嘘偽りは申さん!」 


 僕には分かる。

 もし決闘(デュエル)に負けたなら、アリスは本気でそうするつもりなのだ。


「でもでも、もしわたしがあなたに勝つどころか本当に殺しちゃったら?」

 すっかり開き直ったセフィーゼが、アリスに問いかける。

「ロードラントはイーザを絶対に許さないんじゃない?」


「いや、王位継承者に二言はない。レーモンに厳命し、たとえ私が死んだとして約束は必ず実行させる。向こうで戦いを見守っている私の兵士たち全員がその証人だ。彼らが無事にロードラントに帰った(あかつき)に、この取り決めが真実だということを証言させる」


 なるほど、それなら万が一アリスが決闘(デュエル)に負け命を失っても、セフィーゼたちが撤退するロードラント軍に手を出すことはないはずだ。

 アリスはそこまで考えて発言しているのだ。


 もちろん僕は、決闘(デュエル)でアリスをみすみす殺させるつもりはないが――


「あとは私が勝った場合だが――セフィーゼ、その時は武装を解除しおとなしく撤退しろ。その後は我々に武器と軍馬すべてを引き渡し、二度と反乱を起こさないように誓え。――それだけだ」


「いいわ、私もイーザの長として約束する」

 セフィーゼがうなずく。


「それと戦いにハンデなどいらんぞ。最初から魔法を使って全力でこい」


「えー」

 セフィーゼは口をあんぐりさせた。

「本当にいいの?」


「うむ。ただしこちらも一人、魔法を使える味方を呼ぶ。だがもちろん二対一ではない。セフィーゼはヘクターと組めばよい」


「二対二――計四人で戦うってこと?」


「そうだ。それで対等だろう」 


「ホントに、本当にそれでいの?」

 セフィーゼはあきれた顔で念を押す。

「言っとくけど、ヘクターはイーザの戦士の中でも一番強いんだよ? たぶん絶対後悔するよ。仲間の死体が一つ増えるだけだよ」 


「かまわん」


「へえー、ずいぶん余裕なんだね。ねえヘクター、その条件ならいいよね?」


「……仕方ありません。我々もあまり時間がない。早く終わらせましょう」

 ヘクターは渋々うなずいた。


 とはいえヘクターも、自身の剣とセフィーゼの魔法との組み合わせなら、絶対に負けないという確信があるのだろう。

 でなければこんな決闘(デュエル)を承諾するはずがない。


 そんな二人に対して、僕たちは――

 剣の腕に関してはまあまあのアリスと、白魔法しか使えない自分。


 勝てるのか? それで……。



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