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異世界最弱だけど最強のヒーラー  作者: 波崎コウ
第四章 戦いの始まり
35/319

(13)

「まあ、待て」

 アリスが怒り心頭のレーモンを制して言った。

「エリック、そこまで言うからには何か他に考えがあってのことだろう? 聞かせてくれ、お前の作戦を」


「ええ、もちろんです、アリス様」

 エリックは自信ありげにうなずいた。

「実は今、敵と戦って一つわかったことがあるんです。――あそこを見てください」


 エリックが西の方を指差した。


「見えますか? かなり遠いですが、コボルトどものうしろにばかデカい怪物がいるでしょう?」


 エリックの言う通り、西の遠方、コボルト兵の大群の中に一個の巨大な生物が、ずっしり立っているのが見えた。

 おそらく身長は普通の人間の三倍以上――七メートル近くありそうだ。

 その謎の巨人は、大きな戦斧と黒い鎧を装備しており、遠目で見てもとてつもなく強そうな雰囲気を漂わせている。


「あのデカブツか。私も馬上から見て気付いていた」


「アリスさま、あいつはオークですよ。それもオークの中でも上位種のハイオーク。凶悪で、力も知能もコボルトとはケタ違い、おまけに全身は鋼鉄のような皮膚に覆われていて、普通の剣や槍じゃ殺せないときています」


「そんな化け物が我々の相手なのか」


「ええ。おそらく、あの化け物がコボルト兵を指揮――というか支配してるんです。普段は烏合の衆のコボルト兵どもがまとまってるのも、ハイオークという大ボスが背後に控えているからでしょう」


「そうか、つまり!」


「そうです。あのハイオークを倒せれば、コボルト兵はおそらくバラバラになりますよ。そこを狙えば、俺たちはここから逃げ延びることができるかもしれません。少なくとも無闇に突撃するよりよほどいい」


「なるほど、ではどうやってハイオークを倒す? 雑魚が多すぎて近づくだけでも大変だぞ」


「それはもちろん考えています、こいつを見てください」


 エリックは懐から隠し持っていた短剣を出した。

 鞘から剣を抜いてアリスに見せる。

 刀身はおおよそ30センチぐらい、銀色に光る短剣だ。


「おお、これは素晴らしいものだな。それにただの剣ではない」

 と、アリスはしきりに感心している。


「さすがアリス王女様、お目が肥えてらっしゃる。これはその名の通り『オーク殺し』と呼ばれる魔力を持つ短剣です。オークに特効があって、急所に突き刺せばたとえハイオークといえども一撃で殺せるはずですよ」


「エリック、お前、どこでこれを手に入れたのだ?」


「それはまあいろいろと。私は武器を集めるのが趣味でして」


「なにか(いわ)くありげだな。――まあそんなことはどうでもよい。それよりいったい誰がハイオークを殺しにゆく? むろん、できるものなら私がやってもよいが。王が先頭に立って戦うのは我が王国の伝統だからな」


「いやいや、アリス様御自(おんみずか)らに戦うのは、ロードラント軍最後の時ですよ」

 エリックは苦笑して言った。

「それに失礼を承知で申し上げますが、アリス様の剣の腕では少々心もとない。なにせチャンスは一度きりですからね


「……それはそうかもしれんが」


「だからどうぞ私におまかせ下さい。この短剣は扱いが難しくて、慣れていないと使いこなせませんしね」


「お前が殺れると?」


「はい。しかし二つ条件がありまして……」


「なんだ?」


「まず、私に馬を一頭お貸しください。一気にハイオークに近づきたいんで」


「うむ、当然だな」


「もう一つ、これはレーモン様にお願いしたいのですが、竜騎士を――そうですね三十騎ほど私に同行させてほしいのです。竜騎士様の力があれば、コボルト兵を蹴散らしハイオークの所までたどり着くことはたぶん可能でしょう」


 それを聞いて、レーモンが眉を吊り上げた。


「たぶん、だと? 竜騎士を見くびるな。そんなことたやすくできる。――だが、それだとまるで貴様の指示に従って我々が動くようではないか!」


「なにせ緊急事態ですからね、どうかご了解下さい」


「わかった。いいだろう」

 アリスがうなずく。


「――し、しかしアリス様!」

 レーモンが叫んだ。


「異議は許さん。レーモン、この軍を指揮するのは私だと言っただろう」

 と、アリスはまたまた有無を言わせない。



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