(4)
そしてそれからすぐに、ヒルダとリナアリスの結婚式が本当に始まってしまった。
まず黒のウエディングドレスを来たヒルダと、白のウエディングドレスを着たリナが、急ごしらえの祭壇の上に並んだ。
それから、二人の間に羊の被り物をした悪魔の神父が立った。
乱痴気騒ぎを止めたサバトの参加者たちが神妙に見守る中、神父が、最初にヒルダに問う。
「あなたは新婦アリス=マリー=ヴァランティーヌ=ド=クルーエル=ロードラント王女を妻とし、健やかなる時も病める時も、喜びの時も悲しみの時も、これを愛しこれを助け心を尽くすことを誓いますか?」
「誓います」
と、涼しい面持ちで答えるヒルダ。
こんな怪しげな結婚式なのにそこは普通のセリフなのか、と、拍子抜けしていると、続いて神父がリナに向かって同じ文言を繰り返した。
リナは虚ろな目をしながらも、はっきりと返事をした。
「はい、私も誓います」
ヒルダとリナが見つめ合い、ほほえんだ。
その姿は普通に、神の前で永遠の愛を誓った新郎新婦。
操られて無理やりやらされているのはわかってはいるが、見ていてあまりいい気分はしない。
しかし、それはまだ序の口だった。
続いて神父が二人に向かって、お定まりのセリフを言った。
「それでは両名とも誓いのキスを」
やっぱり、やるのかよ!
と、思わず目を見張ると、背の高いヒルダがリナの顎に軽く手を添え、少し上を向かせ、それからゆっくり口と口を重ねた。
これが普通の結婚式なら、誓いのキスなんてほんの五秒だろう。
ところがヒルダのキスは、そんなものでは済まされなかった。
最初は軽いキスだったが、一分もたったのにまったくやめる気配はなく、逆にどんどん強く激しくなっていった。
「あ……」
苦しくなったリナが、思わず吐息を漏らす。
ヒルダはその瞬間を逃さなかった。
すかさずリナの口の中に、自分の舌を強引に差し入れたのだ。
「…………!」
抵抗しないのをいいことに、ヒルダは容赦なくリナを攻め立て始めた。
舌をチューチュー吸い、粘膜をグチュグチュ絡ませ、ベチョベチョ唾液を交換する。
ヒルダのキスに最初体をこわばらせていた花嫁リナも、ヒルダのテクニックにやられてしまったのか、次第にうっとりぐったりしてしまい、後はもうなされるがままだ。
……今からこの様子じゃ、二人がベッドに移動したらいったいどうなってしまうんだ――!?
イスに縛られ何もできない僕をよそに、みだらな行為を続けるヒルダとリナ。
二人の超濃厚な百合姿を見せつけられ、悪魔の結婚式の参列者の熱気と興奮もどんどん高まってゆく。
「ふう……」
キスは十分も続いただろうが、ようやくヒルダがアリスから離れ、口を拭って言った。
「アリス王女、この先はそのベッドの上でゆっくりと……。そこでこれからいよいよ二人の初夜が始まるのです。日が昇るまで思う存分愛し合いましょう」
「はい、ヒルダ様」
案外まんざらでない風に答えるリナ。
クソッ!
このままだとリナは本当にやられてしまう――!!
なんとか拘束を解こうと、もう一度椅子の上で暴れてみたが、ヒルダの魔法によって縛られているのだから、そう簡単にほどけるわけがない。
「オーホッホ!! 愚かな奴、もがいても疲れるだけだぞ」
バカ女め! もちろん無駄なあがきであることはわかっているんだ。
だけどこの状況を、ただ黙って見てるだけなんてできっこない。
ああ! せめて、せめて口が開けて、しゃべれるようになれれば――
ヒルダは苦しむ僕を見て、今までになく下品で好色な笑みを浮かべて言った。
「そういえばユウトよ。お前、さっきから一つ疑問を感じていることがあるだろう?」
「…………?!」
「やはりな。言えずとも顔に書いてある。要は女であるこの私がどうやってアリス王女と初夜の契りを結べるか――有り体に言えば、どういう方法で王女の処女を奪い、交わることができるかという至極もっともな疑問だろう。違うか?」
「――――!!」
「図星の大正解、といったところか。しかし男だろうが女だろうが、性別なぞこの世界ではさしたる問題ではないのだ」
ヒルダはそこまで言って、大きな胸の間からピンクの液体の入った小瓶を取り出した。
あーやっぱり薬か……。
あれを飲むとどうなるか、もうだいたい察しがついた。
「これこそ私が開発した秘薬中の秘薬。女は男に男は女になれる薬なのだ。――ユウト、よーく見とけよ」
ヒルダは瓶のふたを取ると、まるで栄養ドリンクでも飲むかのように、一気に中身を空けてしまった。
すると――
「おお! おおおおお――!」
ヒルダが絶叫し、体をぶるぶる痙攣させた次の瞬間――
ヒルダの黒のドレスの股間部分が、いきなりムクムク天に向かって盛り上がったのだった。
やっぱり……。
あれは間違いなく、誰がどう見ても起立した男性器だろう。
要はあの薬は異世界のバイ〇グラなのだ――いや、ちょっと違うか……?
それにしてもヒルダのアレはとにかくデカい。
ドレスの上からでもはっきりわかる、今まで見たことないくらいのサイズだ。
もし、あんなのでリナが貫かれたら……想像するだけで恐ろしい。
「グフフフ、はしたないことだが、今のキスでもうすっかりできあがってしまった」
ヒルダは興奮を抑え切れない様子で、股間のソレをさする。
その姿は完全に、ただのエロオヤジか種付けおじさん。
異様としか言えないその倒錯した光景を、椅子に縛られた僕はただ呆然と見守るしかなかった。
「ではいよいよ本番といくか。――王女様、一緒にそちらのベッドにまいりましょう」
「……はい」
ヒルダはひょいと恥ずかしそうにする花嫁リナを抱え、待ちきれないように巨大なベッドに放り投げた。
なんてこった!!
このままだとリナが、見た目はアリスのままヒルダに本当にやられてしまう。
どう表現していいか――リナもアリスも好きな自分にとっては、まるで二重NTRされる気分だった。
R15ラインぎりぎりかもしれませんね
ここまで読んで下さる方はたぶん5名以下だとは思いますが
ちなみ次の話はさらにくだらないです