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異世界最弱だけど最強のヒーラー  作者: 波崎コウ
第二十五章 決死行
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(8)

「――!?」


 ヘクターの様子はまったく変わらない。血走った目をしながら、狂ったように青竜刀を木に叩きつけている。

 あれ? 『キュア』の魔法が効いていない――

 いや、違う!!

 

 僕は確認のため、もう一度ヘクターに向かって『キュア』の魔法を唱えた。

 すると、緑色の魔法の光が、ヘクターに届く前に跳ね返されたのがはっきりわかった。


 やられた。

 ヒルダは僕が『キュア』を使うことを予想して、あらかじめヘクターに魔法を跳ね返す『リフレクション』をかけておいたのだ。

 あるいは、ここまで長い時間『リフレクション』の効果が続くということは、なにか強力なマジックアイテムをヘクターに使用したのかもしれない。

 いずれにせよ、今のヘクターには『キュア』――いや、どんな魔法も跳ね返されてしまう。


 意表を突かれ焦る僕の存在に、ヘクターが気付いた。

 その途端に、攻撃対象が変わる。

 木を切り倒すことを中断したヘクターは、青竜刀を振り上げて、雄叫びを上げながらいきなりこちらに向かってきたのだ。 

 ほとんど一瞬で間を詰められてしまい、恐怖すら感じる暇さえなかった。

 エルスペスを背負ったまま、何もできないでいると、上の方からセフィーゼの呪文を唱える声が聞こえた。


『エアブレード!!』


 風の刃がヘクター目がけて飛んできた。

 いや待て! 

 今のヘクターに攻撃魔法を使っても跳ね返されてしまう。

 むしろこっちが危ない――

 

 が、僕たちの様子を木の上から見ていたセフィーゼには、そんなヘマはしなかった。

 『エアブレード』は、ヘクター本人ではなく、その武器、つまり青竜刀を狙って放たれたのだ。

 二メートル近い長さのある青竜刀に『リフレクション』の効果は及ばない。

 そして風の刃は魔法の壁に跳ねかえされることなく、見事、青竜刀の刃と柄をすっぱり二つに切断したのだった。


 いくら狂戦士状態だとはいえ、突然武器を失ったヘクターは驚いていったん攻撃を止めた。

 そこへ――


「ヘクター! あなたの相手はこの私よ!」


 セフィーゼが木の上から地面にひらりと着地して言った。


「グオオォ……」


 ヘクターが唸る。

 狂戦士の注意が再びセフィーゼに戻ったのだ。


「そんな風になって、可哀そうなヘクター……。さあ、こっちに来て!」


 セフィーゼが手招きをして、ヒルダが待ち構えている森の奥とは逆方向に、走り出した。

 彼女は自分が囮になってヘクターを引きつけ、僕たちを先に行かせる気だ。

  

「ねえ、早く!!」


 セフィーゼの単純な作戦に、ヘクターは釣られた。

 獲物を追う肉食動物のように、逃げるセフィーゼを捕まえようと突進を始めたのだ。


「ユウト――早く! ヘクターのことは私にまかせてあなたは魔女(ヒルダ)を倒して!」


 ソフィーゼはそう叫び、深い森の中へ入っていった。

 ヘクターもそれを追って、僕の前から姿を消した。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 こうしてついに、背中のエルスペスは別として、僕は一人ぼっちになってしまった。

 ヒルダとの対決はもう目の前に迫っているというのに、果たしてこんなことであの恐ろしい魔女に勝てるのか?

 リナを無事に救い出すことができるのか?


 それは99%不可能なことと思われた。

 ただし――

 残りの1%、たった一つのある方法を除いては……。

 

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