(5)
ベッドに腰掛けたリゼットが、すやすや眠るセフィーゼの髪を優しく撫でながら言った。
「ユウト様ご覧ください、セフィーちゃんのこの安らかな顔を。身も心もボロボロだったこの子の完全回復も間近、と言ったところですねぇ」
回復って――そういうことか。
僕はその時、リゼットが今までこの地下牢でセフィーゼに何をしていたのか理解できた。
「リゼットさん、あなたはセフィーゼの母親役になって彼女の面倒を見ていてくれたのですね」
「ええ、ご明察ですわ。聞くところによればセフィーちゃんは幼いころ母親を亡くし、族長の娘として父親からも厳しくしつけられたといいます。そしてその父親も死に双子の弟とも険悪な仲。この子はおそらく幼いころから人の愛に触れたことなどなかったのでしょう。現にこの地下牢獄に来たときのこの子ときたら、心は荒み殺伐としていてまるで何年も雨が降らなかったカラカラに渇いた大地のようでしたの」
リゼットの言う通りだ。
セフィーゼはたぶん僕より年下。だというのに、何者かの謀略によって死んだ父親の復讐を誓い、それを果たすため初めての戦場で数百――いやもしかしたら数千の兵士を風魔法によって傷つけ、奪ってきた。
だがやがてその力は暴走し、無謀とも言える戦いでロードラント軍に囚われ、今やすべての目的を見失ってしまった。
年端もいかぬ少女、そんな状態でまともな精神を保て、と言う方が酷だろう。
しかし、そんなセフィーゼを救ってくれたのがリゼットだったのだ。
「そこで私がこの子の母親を演じてあげ、干からびた心に水をつまり愛を注いで潤してあげたのです。どうやらそれが功を奏したようですわ」
と、リゼットは僕を見てニッコリ笑った。
が、しかし、リゼットは相変わらず黒のランジェリー姿。
美しいおっぱいは丸出しだ。
「ちょ、ちょっと待ってください!」
と、僕は我に返って言った。
「そのことはわかりました! わかりましたけど、じゃあなんで僕の前でストリップのようなことをしたんですか!? おかしいでしょ、それ!」
「フフフ、まあそれはユウト様に対するサービスと言いましょうか、ちょっとあなたをからかって見たくなったのですわ。でも――」
リゼットはベッドから立ち上がって、甘い吐息を漏らした。
そして、僕の方にゆっくり歩み寄ってきた。
「セフィーちゃんに胸を吸われて、この私も少々感じてしまいましたわ。ですのでここはセフィーちゃんが寝ている間意に、二人でイイコトをしてお互いにスッキリするのも悪くはないかと……」
「え、いや、それは――」
今度は本気っぽいリゼットの誘惑の言葉に、僕は焦って後ずさりした。
が、そうしながらも、ついつい目線はリゼットの下半身にいってしまう。
すると――
「――!!?? あ、あの……リゼットさん、それ……」
驚愕、と言うほかはなかった。
なぜなら、リゼットの股間がさっきより明らかに大きく膨らんでいたからだ。
ということは――まさか。
そこで僕はようやくリゼットの秘密を悟った。
リゼットは――彼女は♂である兄のロゼット、妹のミュゼットと違い、両性具有だったのだ。