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異世界最弱だけど最強のヒーラー  作者: 波崎コウ
第二十四章 生の悦びを知りやがって
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(2)

 地下牢へ続く階段を下りながら今一度スマホを取り出し、画面にデュロワ城の周囲の地図(マップ)を呼び出してみる。

 幸い魔法のマーカーの効果は続いており、城の南西の深い森に中に、リナの存在を示す丸い青の(マーク)が点滅しているのが確認できた。

 その位置は、リナがさらわれた当初からまったく動いていない。


 なぜなのか?

 本来なら、アリス(正体はリナ)を手に入れた時点で、ヒルダは自分の国(ゴート)へ帰還してもよかったはずだ。

 にもかかわらず、あえてこの地に留まっているということは、デュロワ城に立て籠るロードラント兵の掃討というもっともな理由もあるだろうが、なによりも“復讐”――  

 魔力を奪われ赤っ恥をかかされた相手、つまり僕を殺すという恐ろしい目的を果たすために違いなかった。


 とはいえ、こちらにとってもそれは願ってもないこと。

 ヒルダのリベンジを逆手に取れば、こちらにもリナを救い出すチャンスが出てくるからだ。


 そしてその第一歩として、セリカの指摘の通り、まずは城を抜け出し数万の敵勢の包囲網の外に出なければならないわけだ。

 前回包囲された時は、僕の『ルミナス』の魔法で魔物たちの目をくらませ脱出したけれど、敵の数はさらに多いし、同じ手もさすがに通用しないだろう。

 となると、新たな脱出方法を考えなければいけないのだが――


 三日ほど前、城壁の上に出て外の景色を観察ししばらく考えた後、たった一つだけ、ある妙案が僕の頭の中に浮かんだ。

 そのカギとなるのが、風の少女セフィーゼ。

 より正確に言えば、セフィーゼの風魔法だ。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 あらかじめ調べておいたので、城の最深層にある地下牢には迷うことなくたどりつけた。

 セフィーゼは、ここでロゼットの妹でミュゼットの姉、ゼット三姉妹(兄弟)の次女、メイドのリゼットの監視の元、収容されているはずだ 。

 ところが――


「え……!? なに、ここは……?」


 地下牢に通じる扉の前に立って、僕は首をかしげた。

 普通地下牢といったら、暗くてじめじめして、あちこちに鉄格子がはめられていて、そこにいるだけで病気になりそうなネガティブなイメージしかなかった。

 だけど、デュロワ城の牢屋はまったく違うのだ。

 ピンク色のやけに明るく怪しげな照明が、美しい天使の彫刻がほり込まれた白い大理石の扉を照らし、中からはお香のいい匂いが漂ってくる。

 見張りの兵もいないし、何だか怪しげな感じだ。


 場所を間違ったかな? と、思いつつ周囲を確認したが、やっぱりどう考えても、ここで合っている。

 とりあえずノックしてみようと扉に手を触れると、それだけで扉はあっさり開いてしまった。

 つまり牢獄だというのに、施錠すらされていないのだ。


 戸惑いながら、おっかなびっくりで中に入ると、そこにはムーディーな音が流れる、赤色のカーペットが敷き詰められた綺麗な部屋が広がっていた。

 壁際にはカウンター、中央にはソファ、テーブルが配置されており、その奥にはどこかへ続く廊下が見える。

 これも男爵の趣味なのだろうか? この牢獄の雰囲気は、まるで高級風俗店のラウンジのような感じだ。

 いや、もちろん実際に行ったことあるわけではないけど……。


「ようこそいらっしゃいました。これは――ユウト様ですね! ご活躍のほどはかねてから存じております」


 カウンターの方から声がして、そこからまるで現実世界のコンカフェ店員のようなメイドが一人出てきた。 

 これまた飛び切りカワイイ。

 が、この城のメイドは男の娘なのか女の娘なのか、いまいち判別できない。


「ユウト様、ご用件はなんでしょうか」


「あ、あの――ここって一応牢屋、ですよね……」


「その通りでございます。デュロワ城唯一の地下牢獄ですわ」


「……にしては雰囲気がちょっとおかしいと言おうか。なんか誰でも自由に出入りできそますよね? ここ」


「はい。ですが囚人の方は規則でこの部屋から外へ出ることはできません」


「でも、入り口に見張りもいなければ鍵もかかっていないようですが」


「それはそうですが、まったく問題はありません」


 と、牢屋番(?)のメイドはニコニコしながら言った。

 しかし、そんな自由な牢屋ってそもそも牢屋の意味があるのだろうか――?


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