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異世界最弱だけど最強のヒーラー  作者: 波崎コウ
第二十三章 王女殿下がXXXの丸焼きをお召し上がりなるまで
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(9)

「ユウト君、向こうはもう大丈夫です。ほとんどの人を救うことができました」

 クロードはそう言ってから、そばにアリスがいるのに気が付いた。

「――ああこれは、アリス様もお出ででしたが」

 

「ごくろうだった、クロード」

 と、アリスがうなずいて声をかける。

「今しがたユウトから事情を聞いた。毒の水とはまた困難な事態になったな」


「ええ、他の井戸も見て回りましたがほとんど毒でやられています。どうやら敵が水源に猛毒をまいて、それがどんどん広がってきているようですね」


「内部の者の犯行の可能性はないか?」


「井戸の周りには常に誰が人がいることが多いので、それはないでしょう。一つならともかく複数の井戸に毒を投げ入れるのは難しいかと思います」


 なるほどそうか。

 さっき城の中の方で被害がでなかったと聞いて一瞬不思議に思ったが、なんのことはない、時間差があって、まだそこまで毒が流れていなかっただけのことだ。

 しかし、今はもう汚染されてしまった可能性が高いだろう。


「アリス様、僕もクロード様と同じ意見です」

 僕はアリスに言った。

「おそらくこの城のすべての水は危険で飲料としてはもう使えません」


「アリス様そのことなんですが、実は――」

 と、ロゼットが続ける。

「兵士のみなさんから喉が渇いた、早く水を飲ませてくれという訴えが相次いででております」


「そうか、では急ぎ対処しなければなるまい」

 そう言ってから、アリスはゴクリと唾をのんだ。

「……考えてみれば私も朝から水一滴飲んでなかったな。飲めないとなると喉の渇きがよりひどく感じるものだ」


 すると、その様子を見ていたクロードが、アリスに金属製の容器――たぶん水筒を差し出した。

 中からちゃぷちゃぷと音がする。


「アリス様、ひとまずこれで喉をおうるおし下さい。これは私が常に戦場で持ち歩いているものです。もちろん昨日毒が広まる前に汲んだ安全な水ですから、ご安心下さい」

 

「いや――」

 アリスは首を振った。

「気持ちはありがたいが皆を差し置いて私だけ飲むわけにはいかない。それより本当に水が必要な者に分けてやってくれ」


「しかし……」


「いらんといったらいらん!」


 アリスは断固拒否の構えだ。

 なので、クロードは僕の方を向いて言った。


「ではユウト君はどうですか? 朝から魔法を使い続けてさぞや喉がカラカラでしょう。魔法は魔力と体力を消耗しますからね」


「いえ、僕もまだ必要ありません。できるなら、どうか弱った兵士のみなさんにあげてください」

 

 その言葉は別にやせ我慢ではなかった。

 アリスと同じく僕にも朝からまったく水を飲んでいないに、不思議にも喉は渇いていないのだ。

 とはいえ、戦争という超ハードワークに加えこの汗ばむ陽気。

 水の補給は当然すぐにでも必要になるだろう。

 なにしろ人体の確か六割は水分で構成されているそうだから――


 と、そこまで考えてふとひらめいた。


 待てよ……? 

 人の体は水分が多い。

 つまり、さっき僕が『クリア』の魔法で兵士たちの解毒に成功したということは、すなわち体内の血液など、液体に混ざった毒を取り除いた、とも言えるのではないか?


 この思い付きは試す価値がありそうだ。

 僕はロゼットに向かって頼んだ。

 

「すみませんロゼットさん、申し訳ないんですがそこの井戸から水を汲んできてくれますか? 飲まない限りは体に悪い影響はないかと思いますけど、一応水に触れないように注意して」


「かしこまりました」


 ロゼットはすぐに井戸のそばまで飛んでいき、毒の混じった水を汲んで木のバケツに入れると、僕の元へ戻ってきた。


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