表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界最弱だけど最強のヒーラー  作者: 波崎コウ
第二十二章 一夜の出来事
257/317

(11)

 アリスは部屋に入ってドアに鍵をかけると、ようやくリラックスできたのか、肩の力を抜いてほっと息をついた。

 が、僕はまったくその逆。

 大きなベッドが置かれた寝室でアリスと二人きり――という予想外のシチュエーションに、緊張度がいきなりMAXに達してしまったのだ。


「い、いい部屋ですね」


「そうだな。これもグリモのおかげだ。――さて、まずは喉を潤そうではないか」


 アリスは僕のうわずった声など気にも留めず、テーブルの上に置かれていたデカンタを取り、不思議なピンク色をした液体を二つのゴブレットに注いだ。


「あ! アリス様、そんなこと僕がやります!」


 しかし、アリスは慌てる僕を押し止めて言った。


「いや、この程度のことは私にさせてくれ。少しでもお前の労をねぎらいたいからな。さあ、ユウトこれを飲め――」


 大国の王女様にこんなことをさせていいのかと思いつつ、僕はアリスの差し出したゴブレットを受け取った。

 しかしなんだろうこの飲み物? ロゼワインぽいっけれど……。


「ありがとうございます。でも、僕はお酒はちょっと……」

 

「ん? これは酒ではないぞ。ティザーヌという茶の一種だ。ちなみに私も酒は好かないからな、宮廷ではこればかり飲んでいる」


 と言って、アリスは自分のコップをいっきにあけた。

 それにつられように、僕もティザーヌに口を付ける。

 

 うーん……味は現実世界のハーブティーまんまだ。

 甘くないし、大しておいしくもない。が、のどがすっと爽やかになって、高ぶった気持ちがいくらかほぐれてきた気がする。

 この飲み物、多少は鎮静効果があるのかもしれない。


「アリス様、ごちそうさまでした」


「いや、礼には及ばぬ。――それではユウト」

 と、アリスはくるりと僕に背を向けた。

「すまないがこの銀の胸当てを脱ぐのを手伝ってくれ。背の方に留め具があるだろう。まずはそれを外してほしい」


 ……まあ、胸当てを取るぐらいなら問題ないか。

 そう思って、僕はアリスの背中に手を伸ばした。

 が、アリスのほどけかけた長い髪が背中に垂れ、胸当ての留め具が見えない。


「あの、アリス様。申し訳ありませんが、ちょっと髪の毛を除けていただけませんか――?」


「ああそうか。これでいいか」


 アリスは後ろ姿のまま、艶やかな金の髪を手で持ち上げた。

 すると、白くほっそりとした美しいうなじが露わになった。


 綺麗だ、かなり――いや素晴らしく、とっても。

 僕は一瞬見とれ、それから思わず「ゴクリ」と唾を飲み込んでしまう。

 

 ……って、いかんいかん!

 兵士たちがアリスに何かしてしまうかも、なんて余計な心配したくせに、現にアリスによからぬ気持ちを抱いてしまっているのは、僕の方じゃないか。


「じゃ、じゃあ外します」


 別に服を脱がすわけじゃないし、やましいことは何もない!

 と、自分に言い聞かせながら、計四か所の留め具を外していく。

 

「すまないな。助かる」


 銀の胸当てはあっさり取れた。

 その下の服装は、白いレースの刺繍のほどこされたブラウスと、ややダボダボして動きやすそうな中世風の茶色のズボン。

 お姫様とは思えない簡素な格好だ。


「あーこれで少し体が軽くなった」

 アリスは胸当てを部屋の隅に適当に置いて、くっと背伸びをしながら言った。

「さあて、ここからは自分で脱げるぞ」


「え、え……!?」


 いったい何をし出すのかと思ったら――

 アリスは僕が目をそらす暇もないくらい素早く、ブラウスのボタン上から順に外し始めたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ