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異世界最弱だけど最強のヒーラー  作者: 波崎コウ
第四章 戦いの始まり
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(3)

「ユウト、命拾いしたな!」

 アリスが僕の側にきて、背中をパンッと叩いた。

「お前といいその者たちといい、普通の兵士たちの中にまさかこんなに稀有(けう)な人材がいるとは思いもよらなかったぞ」


「これはアリス王女様!」

 エリックがうやうやしくお辞儀をする。 

「私はエリック、こいつはトマスと申します。以後、どうぞお見知りおきを」


「よし、名は覚えた。――ちょうどよい。エリックにトマス、そなたたちの腕を見込んで頼みがある」


「はい、何なりと申し付け下さい。不肖ながらこのエリック、命を懸けて任務を果たさせていたただきます」


「それは頼もしい。――これは大切な任務だ」

 と、アリスは馬にヒラリとまたがって言った。

「二人には後方の輜重(しちょう)部隊を先に出発させ、コノート城へ続く街道まで先導かつ護衛してほしいのだ。馬車には私の大事な友人が乗っているから慎重にな」


「かしこまりました。お安い御用で」

 エリックは再び深くお辞儀をし、そらから顔を上げ、アリスに尋ねた。

「ところで、僭越(せんえつ)ながらアリス様はこれからどうなされるおつもりで――?」


「答えるまでもない」

 アリスは平然と言った。

「むろん、私は皆を助けに行く」


「アリス様! 私もご一緒します」

 それを聞いたリナが叫ぶ。


「いや、必要ない。――それよりリナ、お前はこの者たちと共に行って、ティルファとシスターマリアに付き添ってほしい。よいか? これは王女としてのの命令ではない。お前を友と見込んでの頼みだ。分かってくれるな?」


 アリスはそう言って、リナの返事も聞かず、馬の拍車を蹴った。

 白馬はすぐに、全速力で矢の雨の中を走り出した。


「お、お待ちください!! まだ矢が危険ですぞ!!」

 と、レーモンが慌ててその後を馬で追う。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 アリス王女――


 彼女は本気で、矢から逃げまどう兵士たちを助けるつもりらしい。

 部下想いで好感は持てるけれど、かなり無謀な人でもある。


 でも、ここはまさに僕の出番。

 全員を救うことは無理でも、アリス王女一人ぐらいなら魔法で守ることはできる。


「エリックさん、トマスさん、リナ様のことはお願いします!」


 僕はそう叫び、アリスを追って走り出した。

 彼らに任せればリナもまず安心だろう。 


「おいおい! ユウト、おまえは大丈夫なのか? 矢はまだたくさん飛んでくるぞ――」


 エリックの叫ぶ声が背後から聞こえてきたので、僕は振り向いて言い返した。


「心配しないでください! 今度は魔法で防ぎますから」


 さっきはいきなりだったから、それができなかったのだ。

 でも今なら――


 僕は走りながら、自分に魔法をかけてみることにした。


『ガード!』


 一瞬、パッと自分の体のまわりが青く光った。

 初めて唱える魔法だが、上手くいったようだ。

 その効果が発揮されれば、弓矢なんてまったく怖くないはず。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



『ガード』


 剣や矢など、敵の物理攻撃を防ぐ基本的な防御魔法。

 術者のレベルに比例して威力が上がる。


 気をつけなければいけないのは、『ガード』の魔法の壁にも耐久度があるという点だ。

 ダメージが蓄積(ちくせき)すれば、最後は粉みじん砕けてしまう。

 効果範囲も狭く、自分と、ごく身近な仲間しか守れない。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 其処へまた、数本の矢が飛んでくるのが見えた。

 が、僕はあえてそれを避けないことにした。

 わざとその場に立ち止まり、矢が当たるままにする。


 次の瞬間「ピシッピシッ」と音がして、矢は魔法の壁に跳ね返され地面に落ちた。


 うまくいった!

『ガード』の効果は確かだ。


 自信を深めた僕は、再び走り出した。

 やがて前方に、アリスと白馬が見えてきた。

 混乱し逃げまどう兵士たちを、必死に立て直そうとしているらしい。


「みんな落ち着け! 下手に逃げるな! 固まって盾を持ち矢を防ぐのだ」


 アリスは一生懸命に叫ぶ。

 が、全く意味のないことだった。


 兵士たちは誰もアリスの指示など聞いていないのだ。

 右往左往して味方同士でぶつかりあったり、矢から逃れようと地面を這いつくっばったり――

 もはや軍隊の態を成していない、ひどい有様だ。


 これではとても敵と戦うどころではない。

 下手をすれば、矢の攻撃だけで全滅してしまう。



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