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異世界最弱だけど最強のヒーラー  作者: 波崎コウ
第二十一章 狂気の少女
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(3)

 となると、説得して戦いを止めさせるのはほぼ無理か。


 やむを得ない。

 セフィーゼのことに関してはできれば人の力を借りたくなかったが、ここは当初の作戦通りクロードに頼るしかない。

 それにはまず、セフィーゼを孤立させこの場から誘い出さなければ――


「みなさん、ここは僕が引き受けますからどうぞ後ろに下がってください」


 方針転換した僕は、セフィーゼを遠巻きに囲む守備兵たちに向かって声をかけた。

 兵士たちは僕の言葉に従い、槍や剣を構えたまま大きく後退する。

 

「ふふ、一対一でやるの? アリス王女もいないのに大した度胸ね」

 と、セフィーゼがこぼれた涙をぬぐい、笑みを浮かべて言う。

「でもね、今度は同じ手には乗らないから」


 そこは言われなくても分かっていた。

 この位置からでは僕の魔法は届かない。つまりセフィーゼの魔力を吸い取ったり、魔法を封じたりすることは単純に不可能だからだ。


 対してセフィーゼの風魔法の飛距離はかなり長く、自由自在に飛ぶ方向も変えられる。

 間を詰められないように気を付ければ、僕を一方的に攻撃できるわけだ。

 すなわち、戦う前から勝負の結果は出ていると言ってもいい。


「――私の風魔法はこの世界で最強。唯一無二」

 セフィーゼは目を閉じ、自分に言い聞かせるようにつぶやいた。

「今、私は、ユウトを殺す」

 

 くる――!!

 と、身構えた瞬間、セフィーゼは瞳を開き呪文をとなえた。


「エアブレード――!!!』


 セフィーゼの指先から発生した風が鋭い三日月型の刃に形を変わり、こちらに向かって飛んでくる。

 虹色の風は空を切り裂きながら、ほんの一瞬で僕に――

 正確に言えば、僕があらかじめ張り巡らせておいた『(マジック)ガード』の壁にぶつかり、「ピシッ!」と音を立てて消滅した。

 

「今の『エアブレード』の威力はかなりのものだったね」

 僕はわざとセフィーゼを煽るように言った。

「でも、僕の作った防御壁はその程度じゃ破れないよ」


「あーあ、思った通りの展開ね!」

 が、セフィーゼも平然と返す。

「『(マジック)ガード』で自分を守る、結局ユウトはそれしか芸がないもんね。でも、本番はこれからだよ。果たしてこの攻撃に耐え切れる?」


 セフィーゼはそう言って目をさらに大きく見開き、鬼気迫る様子で、『エアブレード』を狂ったように連続して唱え始めた。

 当然、避ける間もない。

 魔法によって作り出さ荒れた虹色の風が、まるで台風のストームのように、僕の周りに吹き荒れる。


 このまだとまずい。

 セフィーゼの魔力が凄まじすぎて、すぐに『(マジック)ガード』の耐久力は限界を迎える。

 そして防御壁が破られたその瞬間、僕の体はズタズタに切り裂かれてしまうだろう。


 だからそうなる前に、僕は行動を起こした。

 セフィーゼの攻撃のわずかな合間を見て、大声で叫んだのだ。


「セフィーゼ、こっちだ!! こっちに来い!!」


 あとは返事も聞かず、一目散に走りだす。


「な、なによ! ユウト、逃げるの?」


「いいから! 僕を殺したければ追って来い!」


 バレバレの罠だと思われたかもしれないが、セフィーゼも最大の敵を放っておくわけにはいかないのだろう。

 慌てて僕の背中を追って走り出した。


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