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異世界最弱だけど最強のヒーラー  作者: 波崎コウ
第十九章 兄弟と兄妹
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(7)

 ただし、リナの現在の状態を魔法で調べるにはどうしてもスマートホンを使わなければならない。


 じゃあスマホはどこにある――


 と、部屋の中を見回すと、ベッドサイドテーブルに僕の持ち物を入れた革袋が置いてあった。

 きっとロゼットが大切に保管しておいてくれたのだろう。

 たぶん中身も無事なはずだ。


「それではユウト様」

 と、そこでロゼットが言った。

「とりあえずは、朝の身支度のお手伝いをさせていただきますね」


「いいえ、それは自分でできます」

 早く一人になってスマホを使いたいということもあり、僕はその申し出を丁重に断った。

「それよりロゼットさんたちはメイド仕事にお戻りください。もしかしたら、逃げてきた兵士たちのお世話でお城の中は大変な状況ではないですか?」


「ユウト様、お世話がいたらず本当に申し訳ございませんが、実はその通りなのです。なにしろお城の人口が突然増えましたから――」

 ロゼットの顔に、感謝の笑みが浮かぶ。

「メイドにすらそのようなお心遣いをして下さり、本当に嬉しく存じます。さすが男爵様あるじが見込んだお方ですね」


 そらから深く頭を下げ、部屋を出て行くロゼットとリゼット。

 気を利かせてわざわざ僕のために時間を割いてくれた彼(女)たちだが、本当は猫の手も借りたいくらい忙しいに違いない。


 それにしても、僕はいつの間にか男爵に見込まれていたのか。

 うーん、なぜ?

 お世辞もあるかもしれないけれど、理由がよく分からない。

  


◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 一方、ミュゼットは、着替えのため近くにあるメイドの支度室に行くらしかった。

 僕のいるこの部屋で服を着るのは、やっぱり嫌らしい。

 

「じゃあね、ユウ兄ちゃん。ボク、着替えたらもう一度ここに戻ってくるから」


「え、そうなの?」


「あのね、男爵様がユウ兄ちゃんが目が覚めたらいの一番に話がしたいんだって。で、男爵様の部屋までの案内役をボクが言付かったの。あ、それとアリス王女様もユウ兄ちゃんに早く会いたいらしいよ。――それじゃあすぐ迎えに来るから、それまでに色々用意しといてね!」


 タオル姿のミュゼットはそう言うと、廊下に人がいないことを確認し、部屋の外にこっそり出ていった。

 その後ろ姿を見送った後、僕はドアを閉め大きくため息をついた。


 リナがさらわれてしまった事実は、アリスの耳にも当然届いているはず。

 無断でリナを連れて戦場に戻り、挙句の果てに彼女を守ることができなかった僕に、アリスはどれだけ激怒したことだろう……。

 いや、僕が責められるだけならまだいい。

 本当に困るのは、アリスが自分でリナを探しに行くなんて無茶を言い出すことだ。

 そうなると、ますます誰の手も負えなくなる。


 どっちにしろ早くリナの無事を確かめよう――


 と、僕はテーブルの上の皮袋からスマホを取り出し、電源を入れた。

 心配だったバッテリーの用量はまだ65%。

 かなり電池もちのいいスマホだ。


『マップ!』


 早速魔法を唱えると、スマホの画面に地図が映し出された。

 地図の中心にはちゃんとデュロワ城が正確に表示されている。


 が、周囲にリナの(マーク)は見当たらない。

 なので、僕は指を動かしスマホの地図をどんどん拡大していった。


 すると――

 

 見つけた!!

 デュロワ城から南西およそ7キロの森の中。

 青く点滅するリナの(マーク)が!!


 光が赤くなっていない、ということは今のところリナは安全な状態。

 魔女ヒルダにイタズラされないよう、約束通りシャノンがリナを守っているのかもしれない。


 しかし、それでもまだ完全に安心はできなかった。

 そこで僕は画面上からいったん地図を消し、清家せいけセリカの顔のアイコンをタッチした。

 現実世界から異世界のすべてを観察しているであろうセリカに、リナの無事を確かめるのだ。


 1回、2回――

 コールが始まってからすぐに現実世界との通信回路が繋がった。

 スマホの画面いっぱいに、セリカの美しく冷たい顔が映し出される。

 

「あらユウト君、ずいぶん久しぶりね」


 ずっと見ていたくせに、セリカは白々しいセリフを吐いた。

 底意地が悪いというか、どうにも扱いにくい女の子だ。

 

「ずいぶん久しぶりって、僕が戦場に戻る前に話したばかりでしょ? それに清家さんは僕のことだけじゃなくて、こちらの世界で起こっている出来事を全部見ているんじゃないの?」


「ええ、そうね。正直言って、何もかもが面白いことばかりで一瞬たりとも目が離せないわ。さっきの美少女男の娘異世界ハーレムも中々の壮観だったし」


「……からかうのはやめてくれよ」


「照れなくてもいいじゃない。――それで、今はヒロイン(リナさん)がさらわれちゃって、いよいよ物語ストーリーは佳境に入ったってところかしら?」


 思った通り。

 おそらくセリカはリナの行方も、今どういう状態かも、すべてを把握しているのだ。


 リナがさらわれてしまった事実は、アリスの耳にも当然届いているはず。

 無断でリナを連れて戦場に戻り、挙句の果てに彼女を守ることができなかった僕に、アリスはどれだけ激怒しているか……。



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― 新着の感想 ―
[一言] 同じことくりかえしてますよ
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