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異世界最弱だけど最強のヒーラー  作者: 波崎コウ
第十九章 兄弟と兄妹
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(4)

 気絶こそしなかったものの、強烈な刺激で頭がくらくらした僕は、ロゼットに支えられながらベッドルームに戻った。

 その後に、ロゼットに拳骨を食らい頭にたんこぶを作ったリゼットと、体にタオルを巻いたミュゼットが続く。


「痛ーい。もう、ロゼット姉さまったら 乱暴なんだからぁ」

 と、リゼットが頭をさすりながら言った。

「ユウト様もそんなに驚かないでくださいよ。さっきはヒミツ、って言っちゃいまいしたけど、実は私たち、ここら辺りではちょっとした有名人なんですよぉ」 

  

 通称ゼット三兄弟――


 しっかり者のロゼット。

 お調子者のリゼット。

 純情可憐なミュゼット。

 

 彼らは昔から近所でも評判の、飛び切り美人な男の娘三兄弟だったという。

 グリモ男爵に仕えるメイドとしては、まさにうってつけとしか言いようがない。 



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 さっきは薄暗かったベッドルームも、窓から差し込む朝の光で今はすっかり明るくなっていた。

 いつの間にか、ロゼットがカーテンを開けてくれていたらしい。

 

 それでもまだ気分はすぐれない。

 よろめきながらベッドの縁に腰掛けた僕に、ロゼットが言った。


「ユウト様、喉がお渇きでしたね。ただいま冷たいお水をご用意いたしますので、しばらくお持ち下さい」

 

 いちいちお願いしなくても僕が一番やって欲しいことをしてくる。

 さすが完璧なメイドさんだ。


 と、水を取りに部屋から出ていったロゼットに感心していると、リゼットがほっと肩の力を抜いて僕の隣にポンッと座った。


「ウフフフ、(デーモン)の居ぬ間に、というわけではないですけれどぉ、ロゼット姉さまはちょっと堅すぎるんですよねぇ」

 

「そうですか? 素晴らしいメイドさんだと思いますけど」


「確かに頼りにはなりますけど――ずっと私とミュゼットの親代わりをしてくれたわけだし」


「え……? 親代わり、ですか?」


「ええ、こう見えても私たち三姉妹――本当は兄弟ですけど、昔っから苦労してるんですよぉ。両親は数年前に流行病で死んじゃって――」

 と、なぜか身の上話を始めるリゼット。

「他に身寄りがなかった私たちは親戚やフレンドの家を渡り歩いたりして、グリモ男爵様に拾っていただくまではメチャクチャ大変だったんです」


「はあ……」


「それに加えてですねえ、自分で言うのも何でけど、私たち兄弟は三人とも異常なまでにモテすぎちゃうというか、行く先々で色んな人に言い寄られて本当に困ってしまって」


「え……あの、その……」

 僕はつい興味本位で尋ねてしまった。

「みんなリゼットさんたちが実は性別が男と知ってて告白してくるんですか?」


「ウフフ、ユウト様、もちろんそうですよぉ」

 と、リゼットが色っぽく笑って言った。

「むしろ男だからこそ人気があるのかなぁ。――もうちまたの女には飽きた、だから今度は絶世に美しいオトコの娘とイタしてみたい、そんなイケない男の人が多くて多くて。襲われて押し倒されて、危うく難を逃れたことも一度や二度じゃないんです」


「は!?」


 なんだ……。

 その倒錯とうさくした世界は!?


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