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異世界最弱だけど最強のヒーラー  作者: 波崎コウ
第十六章 最強の竜騎士 その名は……
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(13)

「大したものですね、リューゴ様の特殊能力(スキル)は!!」

 リナが、霧の中に突入する王の騎士団(キングスナイツ)を見て、声を弾ませる。

「もしかしたら、このまま敵を全部やっつけてくれるかも――」


「……いいえ、リナ様。それはさすがに無理でしょう」

 嬉々とするリナに対し、僕は複雑な心境で答えた。

「いくらあの人たちのスキルが強力といっても、いかんせん敵の数が多すます」


「うーん、そうですか……?」

 リナは不満げだ。


「『無敵形態インヴィンシブルモード』はごく短時間で効果が切れてしまうのです」

 と、僕は事実を淡々と説明した。

「そのわずかな間に、あれだけ数のコボルト兵とイーザ騎兵のすべてを倒すことは不可能だと思いますよ」


 そのことは、むろんリューゴたちも分かっているはずだ。

 しかし男爵の考えたこの作戦のキモは別のところにあるのだから、それで一向にかまわない。

 むしろ今、無理をして血を流す必要はないのだ。


「で、ユウちゃん、霧の中は今どうなってるのよ。あなたならそれが分かるんでしょう?」


 馬に騎乗した男爵が僕の肩を突っついて、小型の望遠鏡を差し出す。


「男爵、少々お待ちください」

 僕は望遠鏡を受け取りレンズを覗いた。


 男爵の言う通り、術者のある僕だけは『ミスト』の霧の影響を受けず、向こうの様子が見通せるはず。

 その点は、昨日『ルミナス』の光でコボルト兵たちの目をくらませた時と似たような状況だ。


 そして実際――よーく見えた。


 薄っすらとモヤがかかっている感じはするものの、黄金のオーラを発しながら進む王の騎士団(キングスナイツ)の動きが手に取るように分かるのだ。


 リューゴたちは全員大きなときの声を上げながら、霧の中を一直線に突き走ってゆく。

 それらはすべて、敵の注意を引くための意図的な行動なのだ。


 ここまでやれば、五里霧中状態のイーザ騎兵やコボルトも、何者かが集団となって突撃してくることだけは感知できたはず。


 さあ肝心なのはここから!

 と、息を飲んで見守っていると――


 敵集団と衝突する寸前。

 まず先頭のリューゴが、続いて竜騎士たちが急遽きゅうきょ馬をターンさせ、見事に進路を右に大きく変えた。


 それはまさに絶妙なタイミングとしか言いようになかった。

 もしこれが並みの能力の騎士だったら、そのままの勢いで敵に突っ込み、大乱戦が始まってしまっていただろう。


 さすがは王の騎士団(キングスナイツ)

 ロードラント王国随一の竜騎士団だけのことはある。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 一方、このリューゴたちの謎の行動には、イーザ騎兵もコボルト兵もさぞや驚いたに違いない。


 なにしろ霧に乗じて急襲してきた何者かが、やいばを交える前ことなく、いきなりターンして逃げ出してしまったのだから。

 

 果たして敵は激しく戸惑い、かといって霧の中どうすることもできず、動きがピタリと止まってしまう。


 それからしばし間が空き――

 意外な現象が起こった。


 1500のイーザ騎兵とコボルト兵が雪崩を打つように、逃げるリューゴたち王の騎士団(キングスナイツ)を、一斉に追いかけ始めたのだ。


 視界は当然霧で遮られているため、彼らはリューゴたちが発するときの声と、『無敵形態インヴィンシブルモード』の黄金の光を追って進むしかない。




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