表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界最弱だけど最強のヒーラー  作者: 波崎コウ
第三章 初めての魔法
16/317

(8)

 しかし魔法を唱えるって……。

 いざやってみようとすると、なんだか気恥ずかしい。


「さあ、早く」

 と、セリカがせかす。

「深く考えないで。シスターマリアを見ながら、心に強く念じ呪文名を口に出せばいいの」


「……わかった。やってみる」

 僕はぐったりしたマリアをじっと見つめ、神経を集中させた。


『スキャン!』


 ほんの一瞬マリアの体が光った。

 それと連動するように、スマホの画面に文字がずらりと表示される。


 ネーム:マリア=シャレット

 クラス:シスター

 H P:75/100

 M P:8/550

  力 :20

 知 力:350

 速 さ:88

 守 備:40

  運 :223

 黒魔法:0

 白魔法:1025  

 スキル:回復+

 状 態:激しい疲労

 弱 点:昆虫


 できた!

 本当にできた!


 ステータスの表示は僕の遊んでいたオンラインRPG(アナザーデスティニー)とまったく同じだった。

 各能力の基準値は100で、経験を積んでレベルが上がるたびに数値も上昇していく。


「ね、やればできるじゃない」

 セリカはそらみなさい、と言わんばかりだ。


「あのさ……これ、スマホの機能じゃないの?」


「そんなわけないでしょ。すべてあなたの力。スマホの画面にただそれが写っているだけ」


「すごい!」


「さて、なぜシスターマリアをスキャンしたかといえば……ねえ、ゲームの中で有川君のキャラ、白魔法の能力値はいくつだった?」


「20000ちょい」


 昼夜問わない、廃人プレイで得た力。

 十万人を超えるというプレイヤーの中でも、上位一桁に入る数値だ。


「つまりあなたは白魔法の力、あのシスターのだいたい20倍の力ということ。ね、少しは自信付いた?」


 自分にそんな能力が本当に備わっているのだろうか?

 僕はどうしても信じられなかった。

 

「まだダメ? じゃ、試しに自分自身を『スキャン』してみなさい」


「わかった」


 僕は自分自身に向かって『スキャン』を唱えた。

 するとすぐに、スマホの画面に新たな数値が表示された。


 ネーム:ユウト=アリカワ

 クラス:ソルジャー

 H P:1350/1350

 M P:9780/9800

  力 :80

 知 力:6555

 速 さ:430

 守 備:352

  運 :100

 黒魔法:0

 白魔法:21025


 スキル:白魔法マスター

 状 態:正常

 弱 点:対人関係


 自分の能力を数値化して見るのは、なんだか変な感じがする。

 それに弱点が対人関係って――当たっているだけに、割とショックだ。


 ……でもまあ、確かに白魔法の能力とスキルは飛び抜けて高い。

 ゲーム上のマイキャラ(アバター)そのまんまの数値なんだから、当然と言えば当然なんだけれど。


 とにかく、シスターマリアが倒れた理由は『スキャン』ではっきりわかった。魔法を使いすぎたことによる激しい疲労だ。

 ならばティルファの状態も同じように調べられるはず。

 

 僕はぐったりしたままのティルファを見つめ、神経を集中させた。

 再び『スキャン』を唱える。

 また一瞬で、画面の数値の表示が変わった。


 ネーム:ティルファ=ド=ロレーヌ

 クラス:ナイト

 H P:50/1350

 M P:0/0

  力 :211

 知 力:300

 速 さ:420

 守 備:356

  運 :78

 白魔法:0

 黒魔法:0


 スキル:見切り+

 状 態:気絶 ひん死 猛毒

 弱 点:なし


 かなり危険な状態だが、僕が注目したのは彼女が猛毒に侵されていることだ。

 これではマリアがいくら『リカバー』をかけ続けてもよくなるはずがない。

 つまり、HPの回復よりも、まずは毒を取り除かなければならないのだ。 

 

 そうこうしている間に、ティルファのHPが50、49、48と、どんどん減っていく。

 まるで死のカウントダウンだ。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 とにかくこれで原因ははっきりした。

 そして今、彼女を救えるのは自分しかいない!


「ありがとう、清家(せいけ)さん。何とかやってみる!」


 僕はいてもたってもいられず、スマホを革袋にしまうと、ティルファの方に向かって駆けだした。   


「すいません、どいて下さい……」


 兵士たちをかきわけ、僕はようやく列の先頭に出た。

 さらにティルファに近づこうと、前に進む。


 ところが、そこでレーモン公爵に気付かれてしまった。

 レーモンは武人らしい威圧感を漂わせながら、怒鳴り声を上げた。


「なんだお前は!」


 目の前にレーモンが立ちはだかる。

 冷たい目線だ。

 明らかに一般兵の僕を見下している。


 が、そんなことに(ひる)んではいられない。

 このままでは手遅れになってしまうからだ。


「通してください!」


「お前、何をしようというのだ。さっさと隊列に戻れ」


「待ってください。僕なら、僕ならその女の人――いえ騎士様をお救いできます」


「なに? バカげたことを言いよって。一介の兵卒にそんなことできるわけなかろう。それ以上一歩でも前に出れば、アリス様に害をなす者と見なし切って捨てるぞ!」


 レーモンはそう叫んで、いきなり腰の剣を抜き、僕に剣先を向けた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ