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異世界最弱だけど最強のヒーラー  作者: 波崎コウ
第十五章 再び戦場へ
153/317

(1)

 そしてその夜。

 僕は不思議な夢を見た。


 案内された城の一室、小ぢんまりとした部屋のやわらかいベッド。

 その上に疲労した体を横たえ、泥のように眠りこけていると――


 誰かが部屋の中に入ってきて、ベッドに近づいてくる気配を感じた。


 ????


 そういえば、ドアの鍵を閉めていなかったかもしれない……。

 いや、そもそもこの部屋に鍵なんかついていたっけ?


 夢うつつにそんなことを考えていると、ふわり、といきなり体に何かが覆いかぶさってきた。


 ――ええ!?

 何、なんなの?


 僕は驚いてそれを払いのけようとしたが、金縛りにあったように体が動かず、なぜか目も開けられなかった。


 が、まったく重くはない。

 不快感もない。

 むしろ羽根のように軽い、ふわっとした心地いい人肌の温かさを感じた。


 これって――人? 

 誰かが僕の上に乗っかっている?


 と、ただ戸惑っていると、ふっといい匂いがして――

 一瞬、唇に少し湿った柔らかな感触があった。


 うわっ、キス?

 キスされた!?


「クスクス……」


 それから、ごく微かな笑い声が聞こえたかと思うと――

 僕にキスした誰かはベッドから飛び降り、パタパタという足音を立て、部屋から出ていってしまった。


 ………………

 …………

 ……夢?


 うん、夢だろうな、これは。

 と、ぼんやり解釈する。


 ファーストキスの相手は誰だったのか?

 そんな大事なことも考えられないくらい、身も心も疲れ切っていたのだ。


 すべては夢、まぼろし。

 こんな僕に進んでキスをしようなどという物好きな人、異世界にだっているわけない。

 そう思うと、高まった心臓の鼓動もすぐに治まった。


 異世界の漆黒の夜――

 巨大なお城の小さな部屋のベッドの中で、今度こそ僕は深い眠りについた。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 翌朝。

 テーブルの上に置いたスマートホンの振動音で、僕は目が覚めた。


 電話の相手は言わずもがな。

 現実世界から電話をかけてきた、清家せいけセリカだ。

 

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