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異世界最弱だけど最強のヒーラー  作者: 波崎コウ
第十四章 それぞれの再会
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(8)

「困ったわねえ。無理やり口をこじ開けて薬を飲ませるわけにもいかないし」

 男爵がどうしようかしら、と首をかしげる。


 ならば、ここでこそ回復職(ヒーラー)の出番だ。

 ティルファの精神的な病を治すのは僕にも無理だけれど、ゆっくり眠らせてあげることぐらいならできるだろう。


 あ!

 でも、その前にティルファに渡すものがあったっけ。


 僕はふと思い出して腰の皮袋に手を突っ込んだ。

 その中には、アンデッド化したティルファの父、ヴィクトル将軍が残した家紋入りのマント留めが入っていた。


「あの――」


「なあにユウちゃん?」

 と、男爵が僕の方を見る。


「これ……」


 僕は皮袋から取り出したマント留めを、ティルファの目の前に差し出した。

 するとティルファは暴れるのをピタリと止め、手を震わせながらマント留めを受け取った。


「あ……あ……」


 お礼でも言いたかったのだろうか?

 ティルファはマント留めをギュッと握りしめ、口から何か言葉を漏らした。

 その表情は、いつの間にかごく穏やかなものに変わっている。


 これならもう薬を使うまでもない。

 後は魔法で――

 と思っていると、男爵がつい大きな声を出してしまった。


「どうしたの、ユウちゃん? いったい何を渡したのよ?」


「しっ! 静かにしてください」


「あらヤダ、アタシったら」

 男爵が申し訳なさそうに手を口で塞ぐ。


 やれやれ、明るいのはいいけれど、騒がしすぎるのも困るな……。

 ともあれ男爵が黙って静かになったので、僕はティルファをいたわる気持ちを込めて魔法を唱えた。


『スリープ!』 


 魔法は一瞬で効果を発揮した。

 ティルファはスッとまぶたを閉じ、深い眠りについたのだ。


 せめて眠っている間だけでも、良い夢を見てくれればいいが――



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