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異世界最弱だけど最強のヒーラー  作者: 波崎コウ
第十三章 バロンの城
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(6)

 な、なんなんだこの人……。


 サムい。

 スベってる。


 一瞬だけ、そう感じた。


 しかしそんな月並みな感想など吹き飛ばすくらい、有無を言わせない圧倒的なパワーが男爵にはあった。

 異世界の“かぶき者”とでもいった感じだろうか、あるいは、これがいわゆる“ドラッグクイーン”というやつなのか、歌も踊りもきめポーズも次第に格好よく見えてきて、いつの間にか目が離せなくなっているのだ。 


 リナと竜騎士たちも僕と同じ感想を抱いたのか、目の前で繰り広げられる世にも奇妙な光景を、あっけにとられながら黙って見つめている。 


 ただ一人、マティアスを除いて――


「グリモ! お前という男は!」

 ポーズをきめたままの男爵を、マティアスが怒鳴りつけた。

「相変わらずふざけた野郎だ!」


「あら!?」

 男爵は怒るマティアスを見て、細い眉をピクリと動かした。

「その声は竜騎士の中の竜騎士、マティアス=アーレンス――」


「そうだ! さあグリモ! さっさと我々を中に入れろ!」


「……いいえ、違うわね」

 と、男爵は甲高いおネエ言葉で言った。

「そんなに乱暴でしみったれた男、アタシの知るマティアスじゃあないわ!」


「グリモ、き、貴様!」


「まさかと思ってこんな夜更けにわざわざ出てきてあげたけど、とんだ無駄骨折っちゃった。アタシは寝室に戻って寝るから、アンタたちも黙ってお家に帰りなさい」


「待て待て待て!」

 マティアスは切歯して叫び、僕に向かって言った。


「――おい、ユウト! 今すぐ俺の顔を魔法で照らせ!」


「は!?」


「いいからやるんだ!」


「は、はい」


 マティアスのすごい剣幕に押され、僕は考える暇なく反射的に魔法を唱えた。


『ルミナス!』


 マティアスの頭上に光の弾がパッと出現した。

 もちろん今回は、コボルト兵の目くらましに使った時より魔力を大幅に抑えてある。

 本来の使用目的に沿って、あくまで照明用として唱えたのだ。


 だが、マティアスはいきなり僕の頭をポカリと殴った。


「痛たっ」

 目から火花が出てつい叫んでしまった。

「な、なにするんですか!」


 言われた通りにしたのにあまりに理不尽!

 いくら上官とはいえ抗議したくなるもの当然だろう。


 だが、マティアスは――


「バカ! いくらなんでも光が強すぎるぞ! 敵に見つかったらどうする! 俺の顔だけを照らせばいいんだ」


 確かに今、城内に入れないでいる僕たちを敵が見つけたらアウトだ。

 デュロワ城の堀と挟み撃ちになってどこにも逃げ場はないからだ。 


 ……にしても殴ることないじゃないか。


 マティアスは怒りっぽすぎだ。完全に人が変わってしまっている。


 

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