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異世界最弱だけど最強のヒーラー  作者: 波崎コウ
第十三章 バロンの城
132/317

(1)

 森を抜けるといきなり視界が開け、広い岩場に出た。


 夜も更けてきたというのに辺りは不思議と明るい。

 なぜだろうと思い空を見上げると、そこには現実世界にはない、無窮むきゅうの星々が光の洪水のように輝いていたのだった。


 が、いくら美しい星空でも、その光景に感動している余裕はない。

 竜騎士団はまばゆいまでの星明りを頼りに、ゴツゴツした岩場の夜道をひたすら走り続けた。


 それからさらに三十分ほど――

 景色は山と山に挟まれた渓谷へと変化し、流れの速い川が見えてきた。


 身も心も疲れ果て誰もが無言。

 衰え知らずの竜騎士の乗る駿馬(しゅんめ)すら息切れをおこし始めたころ、リナが叫んだ。


「ユウトさん、あれです! あれがデュロワ城です!」


 夢でも幻でもない。

 渓谷を出た先に、巨大な城壁に囲まれた白い城がそびえ立っているのが見えた。

 かがり火によってライトアップされたその姿は、ファンタジーの世界そのもの。

 非常に壮麗な外観だ。


 しかし――あれ?

 と、僕は少し変に思ってリナ尋ねた。


「あの、リナ様。デュロワ城って確か廃城寸前のさびれたお城だったのでは? それにしては綺麗すぎるような気がしますが……」


「そう言えばそうですね。私も訪れるのは初めてですが――」

 リナも訝しんで言った。

「こんな立派なお城とは思いませんでした」


「ああ、それなら――」

 僕たちの会話を横で聞いていたマティアスが言った。

「取り立てて心配することはない」


「そうでしょうか? ――ええと、このお城を治めているのは誰でしたっけ?」

 と、リナは必死に城主の名前を思い出そうとする。


「……行けばわかる」

 

 マティアスが仏頂面でそう答えた時、リナが叫んだ。


「そうだ! グリモ男爵! ここは男爵の城です!!」


 ところが――

 

「その名を出すな!!」

 

 グリモ男爵の名前を聞いた途端、突然マティアスが切れたのだった。 

 僕もリナもびっくりして、思わずマティアスの顔を見る。


「し、失礼した!」

 マティアスが慌てて取り繕う。

「不快な名を聞いたものだから、つい」


 どうやら触れてはいけないことに触れてしまったらしい。

 僕もリナもそれを察し、デュロワ城の城主の話題はそこで打ち切られた。

 

 マティアスの豹変ぶりには驚いたが、とにかく、デュロワ城に何かの罠が潜んでいることはなさそうだ。 





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