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異世界最弱だけど最強のヒーラー  作者: 波崎コウ
第三章 初めての魔法
13/317

(5)

 そこへ――


「おいおい、ちゃんと食わねーともたないぜ」 

 と、言いながらエリックが近寄ってきた。


 後ろに一人、身長2メートル近い大男を従えている。

 どうやらエリックの仲間らしい。


「なんか食べる気がしなくて……」


「初めての戦いだろうから、緊張するのもわかるけどな。だが腹が減ってはなんとやらだ」

 エリックはそう言いながら、骨付きベーコンを豪快にかじった。

「軍用のは塩辛くていけねえな。ワインが飲みたくなるぜ」


「あの、その人は……」


「ああ、こいつは俺と同郷のトマスっていうんだ。貧乏農家の四男坊でな、口減らしのために親に無理やり志願させられて軍に入ったのよ。本当は戦いなんて大嫌いな野郎なんだが……」


 その大男――トマスは黙ったまま照れ臭そうに頭を掻いている。

 エリックは僕の耳元で囁いた。


「こいつちょっと頭が弱くてな。だがとんでもない怪力の持ち主だから、いざという時には頼りになるぜ。まあいい奴だから仲良くしてくれよな」


 僕はトマスを見上げた。まさに雲を付くような大男だ。

 座ったままじゃ悪い気がして、立ち上がって自己紹介をする。


「あの、ユウトと言います」


「トマス……です。……ヨロシク」


 トマスはニコニコしている。

 穏やかでとても兵士には見えない。

 と、その時、唐突(とうとつ)にトマスのお腹がきゅうと鳴った。


「お腹、スイタ……」


「なんだよ、トマス。今食ったばかりじゃねえか」


 エリックはあきれ声で言った。

 が、それでもトマスは物欲しそうにエリックが持っているベーコンを見つめている。


「おいおい、これは俺の食いもんだぜ。まったくこいつは体がデカいせいで食う量も半端ないからな。だから家を追い出されるんだよ」


「…………」


 トマスは一瞬悲しそうな顔をした。

 僕はなんだか気の毒になって、自分のパンとベーコンを差し出した。


「あの、よかったら……」


「イイの……か?」


「どうぞ」


「……アリガトウ!!」

 トマスは目を輝かせて、食べ物を受け取る。


「ったく。しょうがねえな。くせになるといかんぜ」

 エリックはパンをほおばるトマスを横目に言った。


「でも、残すよりいいよ」


「まあいい。お前の食いもんだからな、好きにしろ」 


 エリックは食べ終わったベーコンの骨を、ぽいと投げ捨てた。



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