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異世界最弱だけど最強のヒーラー  作者: 波崎コウ
第十章 恐怖の森
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(14)

「人の恋路の邪魔をするなど、なんとも野暮で興ざめな奴。さあてどうしてくれようか」


「だ、黙れ! このヘンタイ女!」


「おやおや、ワタシに向かってそんな口を聞くなぞずいぶん勇気があるねえ。でも残念なことに、ワタシは男に興味はない――」


 ローブの魔女はフフフと笑いを漏らし、紫色の杖をローブの裾からさっと取り出した。


『ストーン!』


 次の瞬間、目の前がパッと暗くなって、軽く感電したような感覚に襲われた。

 魔女の闇魔法をもろに喰らってしまったのだ。


 が、しかしそれ以上何も起きない。

 十秒経っても二十秒経っても体が石に変わる気配は一向にない。

 どうやら魔女の初弾は効かなかったようだ。


 石化魔法が失敗したことが分かり、魔女は舌打ちをすると、杖を振り上げ次の呪文を唱えた。


小癪(こしゃく)な奴! 今度こそ死ね――『デス!』」


 たちまち杖の先から黒い稲妻が発生し、僕の体を直撃した。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



『デス』


 発動すれば敵を即死させる上位の闇魔法。

 ただし竜騎士をいっぺんに殺した『ソウルスティール』と違って、対象は一体。

 その分威力は数倍ある。

 つまり即死する確率はかなり高くなるということだ。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 再び目の前が暗転し、数秒の間、体が麻痺したように動かなくなった。

 この魔法の威力が『ストーン』より強いことを、僕は身をもって感じた。


 ――が、それも束の間、すぐに視界晴れた。


 そして生きている。

 息はできるし手足は動く。

『デス』の魔法をもってしても、僕は死ななかったのだ。 


「な、なんだと!」


 ピンピンしている僕を見て、魔女が驚愕の声を上げた。

 悔しさのあまり歯ぎしりをする音が、ここまで聞こえてくるようだ。


「王女を返せ!!」

 僕は叫びながらショートソードを振り上げ突撃した。


 本当は「リナを返せ!」が正しいのだが――

 王女の正体がバレるその一言を口にしなかったのは、僕の最後の理性が働いたのかもしれない。


「生意気な! このザコが!」


 魔女は憎らしげにそう吐き捨て、逆に杖で積極的に殴りかかってきた。


 とはいえ大した攻撃ではない。

 僕はショートソードで魔女の杖を受け、力いっぱいそれを押し返した。

 魔女はよろめき、危うくうしろに倒れそうになる。


「よくも王女を!」


 そのまま怒りに身を任せ、ショートソードで魔女に切りつける。


「ギャアッ」


 魔女が悲鳴を上げ、血の飛沫が数滴、僕の顔にかかった。

 ショートソードの刃が、わずかに魔女の右手の甲をかすったらしい。


「おのれっおのれ――!! よくもワタシの体に傷をつけたな!! キサマ、必ず殺してやる!!」


 魔女がたらたら流れる血を手で押さえ、吠えまくっている。


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