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異世界最弱だけど最強のヒーラー  作者: 波崎コウ
第十章 恐怖の森
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(10)

 この魔女、やっぱりイーザの一員なのか?

 王女をみんなの前で(はずかし)め、ロードラント王国に復讐しようというのか?


 いや、違う。

 見たところ本気でリナ――じゃなかったアリスが目当てとしか思えない。

 でも女同士なのに?

 いや、それについては別に驚くことではないかもしれないが……。


「ああ、なんという若さ美しさ!」


 魔女はこれ見よがしにリナの身体を撫でまわす。

 見ているこっちが恥ずかしくなるような、いやらしい手つきだ。


「や、止めなさい!」

 リナは顔を赤らめ叫んだ。

「あなたは私を誰か知った上で、こんな狼藉(ろうぜき)を働いているのですか!」


「もちろん」

 魔女はククク、と笑って言った。

「アリス=マリー=ヴァランティーヌ=ド=クルーエル=ロードラント。ロードラント王国の第一王女にして、ルドルフ王の最愛の娘――」


 顔と顔がくっつきそうなくらい間近でみているというのに、魔女は自分が捕らえたアリス王女が、実は偽物(リナ)だということにまったく気付いていない。


「ならばロードラント王国第一王女の名において命じます。すぐに魔法をとき私を解放しなさい! そしてアンデッドたちを土に返すのです! そうすれば寛大な処置を考えなくもありません」


「なんて気丈な王女様――でも残念ながらその願いは聞き入れられないねぇ。こんなにも美しく高貴な血をやすやす手放すなんてありえない」


 魔女は話しながら巧みに手を動かし、リナの装備していた鋼の胸当てを簡単に取り外してしまった。

 さらにその下に着ていた白いブラウスのボタンを二、三個外し、胸の中に手を滑り込ませた。


「キャァァーー!!」


「フフフ。カワイイカワイイ」

 魔女は嫌がるリナの気持ちなどお構いなしに胸を触り始めた。

「ああ――なんて柔らかで滑らかな手触り! 完璧だ」


「や、止やめろ!!!」


 僕は絶叫した。 

 このままではあのヘンタイ魔女にリナがどうにかされてしまう!

 が、魔女はリナに夢中で、僕の叫びなどまったく聞こえていないようだった。


 そこへマティアスの怒鳴り声が飛んできた。


「ユウト、落ち着け! 足が動かないのなら魔法で治せ!」


 そうだった。

 言われるまで気付かないなんてバカだ、バカすぎる。

 ケガをしたって、自分で回復すればいいだけのことじゃないか!


 僕はさっそく手を患部にかざし『リカバー』を唱えた。

 まばゆい光が足首を包み、すぐに痛みが引いていく。

 どうやら骨折まではしていなかったらしく、一分も経たないうちにケガはあっけなく治ってしまった。


 これでローブの魔女と戦える。

 でも、まさかマティアスが僕のことを気にかけて、助言してくれるとは思わなかった。

 あとでお礼を言わなきゃ、と思いつつ、リナを取り戻すため走り出そうとしたその時――


「ウウッ」

 という、マティアスの苦悶(くもん)のうめきが聞こえた。


 シャノンを圧倒していたのにどうして――!?


 驚いて声のした方に顔を向けると、そこには、真っ赤な血だまりの中で膝をつくマティアスの姿があった。

 よく見ると、鎧の胴の中心部分がぱっくりと縦に割れ、そこから絶え間なく血が流れ出ている。

 

「他人の心配なんかしてるからこうなるのよ!」

 シャノンが冷たく言い放つ。


 どうやらマティアスは、僕のピンチに一瞬気を取られ、その隙にシャノンに一太刀浴びせられてしまったらしい。


「覚悟!」


 この機を逃すまいと、シャノンはマティアスに刀の乱れ打ちを浴びせる。

 マティアスも必死に防戦しているが、そんなに長くはもたないだろう。


 すぐにでも治療しないと、命が危ない。




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