地球なんて爆発しました。
一週間連続短編投稿の3/7です
大きな部屋にこれ見よがしにスイッチが置いてあった。それも見るからに危険そうなドクロマークの付いたスイッチだった。
そこには三人の人物がいた。一人は背の高い青年、その隣にスーツの似合う初老の男、その隣にショートカットでランドセルを背負った小学生女児が立っていた。
「ねえ、いい加減そのボタン押しちゃえば?」
そうつぶやいたのは女児だった。それに初老の男が答えた。
「そんなことを言ってはいけないよ。それにこれを押してしまえば地球は爆発してしまうんだよ」
「んな事言ってもこれ作ったの爺さんじゃねえか。なんのために作ったんだよ」
初老の男に疑問を投げかけたのは青年だった。初老の男は困ったように髭を撫でた。
「だって作ってみたら作れちゃったんだもん」
「爺の癖に、子供ぶるんじゃねえよ。そもそもこのスイッチなんだよ。お手軽に地球爆破が出来るスイッチって」
初老の男は博識な老人のイメージを一気に崩しはしゃぎ始めた。こうなるともう女児の方が大人に見えるくらいである。
青年はそれが我慢できないのか初老の男をどうにか黙らせようと初老の男に手刀を繰り出す。初老の男はそれを軽々と避けてしまう。
「まったく、男はいつまで経っても子供なのね」
女児はそんな二人を見てやれやれと首を振る。
「子供に言われるとは情けない。ここは年長者として責任を取らねばな」
「何が“責任を取らねばな”だ! ここがどこか分かってるのか?」
「ここがどこも、宇宙じゃよ。もしも地球が爆発しても安心じゃ」
「おじいちゃん、地球は昨日爆破したじゃない」
いい加減、男二人の会話を聞いていて暇だったのだろう。会話の邪魔をして遊び始めた。
「待て待て、ボケとは違うから。しかも恐ろしいボケだな。そのままノリで押すんじゃねえぞ」
青年がそう注意を呼びかけるが時すでに遅し。
「ごめん、もう押しちゃった。だってこんな怪しいボタン押さずには居られないでしょ? それにボタンは押すためにあるのよ」
女児の言葉が終わると同時に部屋の窓から地球が粉々に爆発する姿が見えた。
その地球を見て押した張本人の女児は「まるでCGみたいね」と楽しそうに眺めていた。一方青年は本当に爆発してしまったことに驚き、絶望し、焦っていた。初老の老人はと言えば発明の出来栄えに満足そうにうなずいている。
「どうすんだよ! 本当の本当に爆発しちまったぞ!」
焦りも焦って何を言っているのか分からなくなってきていた。
「なぁに、安心せい。こんな時のために惑星誕生キットを作ってある」
「何それ!楽しそう私が惑星作る!」
初老の男が取り出した怪しげな道具に女児は目を輝かせて飛びついた。
それを見た青年は慌てて止めに入る。
「待てよ。またそんな事して俺達の罪をもっと増やすつもりかよ」
「罪とはなんじゃ? わしは何も知らん。お譲ちゃんは知っとるかね?」
「さぁ? 何のことでしょう。お兄ちゃんは疲れてるんじゃないですか」
青年はそれに目を見張った。
「おい。お前ら、そんなこと言って誤魔化そうとするなよ。たった今地球を爆発させたのはお前だろ」
そう言って青年は女児の細い肩に掴みかかった。
「痛い。やめて」
「若いのやめろ。子供相手に手を上げるとは大人として恥ずかしくないのか? 少し疲れてるんだ。休んでな」
女児と青年の間に初老の男が入り青年を宥める。
女児は何かを思いついたのか初老の男に近寄ってきた。
「ねえ、おじいちゃん。いい事思いついた。これから作る星を地の球って書いて地球ってどうかな」
「地球? なかなかいい名前だな。それにしよう」
すると女児と初老の男は部屋の隅にあったテレビに惑星誕生キットを繋げた。
「お兄ちゃん何やってるの? お兄ちゃん抜きで地球作り始めちゃうよ?」
「ああ、俺もやるから待ってくれ」
そう言った青年の口は薄っすらと笑っていた。
今回は時間がなかったので原稿用紙5枚分程度ということで書かして頂きました。
面白かったでしょうか?