二話
――寒いから、暖かくしてた方がいいわ。
――私なんかに、言われたくないだろうけど。
あの日、下校の仕度をする私に、彼女はそう
言ってマフラーを巻いてくれた。
「雪が降るかもしれないわ。良かったら、
一緒に帰りませんか?」
あの日から数日たった。
今日もまた、彼女は私を気遣う。
私の手をとる彼女に、ゆるく首を振る。
「そう…。でも、寒くなりそうだから…」
「もう少しして、帰るから。先に、帰って」
どうして、こんなに私を気にかけるのか。
彼女は彼に、私の体が弱いと聞いたのかもし
れない。
下校の時刻になっても屋上から動かない私を、
彼女が迎えに来た。
冷えきった手を握られ、マフラーの上から更
に彼女の着けていたマフラーを巻かれた。
彼女は何をしたいのか。
彼女は、彼よりも私を気にかける。
寒くないか、気分が悪くないかと、案じる。
彼はそんな彼女と私を満足げに見ている。
「春日、帰ろう。そうなった美冬は梃子でも動
かないよ」
彼が彼女を迎えに来た。
「…修也くん。でも、雪が降るかもしれないわ」
「心配しなくても大丈夫。美冬だってそんな時
間まで学校にいないよ。な?」
そう言った彼は、彼女の手を引き屋上から出
ていった。
「美冬さん。早めに帰ってね…」
そう言い残し、彼女は彼に連れられて行った。
「雪が降るかも」
暗い雲に覆われた空を見上げた。
「嫌いになれたら、楽なのに…」
あの日から、周囲の目も気にせず私に寄り添
おうとする彼女。
傍観する彼…。
そんな二人を見るにつけ、沸き上がるものが
ある。
雪の中、ずっと立ち続けていたら病気になる
かな。私は病弱だし、肺炎とか拗らせたら、死
んじゃうかもね。
「ふふふ…」
そんな空想に耽っていたからだろうか。
病気になって死んでしまう私が見えた。
そして、私の死に罪悪感を覚え、悔やみ嘆く
彼等の姿が見えた。
私の死に、衝撃を受ける二人。
罪意識より別れる二人。
運命に導かれるように再会する二人。
歩み寄り支えあいながら私の死を乗り越え、
愛を深めていく二人。
そんな未来が、見えた。
「あ…」
そして、私は思い出した。




