第十三話 小さな小さな、一歩
その家は、吹けば飛んでしまいそうなほどにボロボロな家だった。メルディオレの端、小高い丘の上。海側は崖となっており、海風が心地良い。景色も良く、近くに墓場が無ければ一等地といえるだろう。見栄えがどうとか、軽く殴るだけで壁に穴が開きそうだとか思わなくもないが、住めば都という言葉もある。もしかしたら、俺が知らない良い所があるのかもしれない。
この家は、雄一郎が住んでいる家だ。というか、歴代の墓守達が使っていた家というべきか。本人から聞いたので間違いはないはずだが、こうまで見た目がアレなのは予想外だったので、純粋に驚いてしまう。
国に……いや、ダグラム辺りに頼めばもっといい家を用意してくれると思うのだが。
それともこの家に、何か思い入れがあるのか。そう考えながら、年月が経ち傷が目立つドアを軽く叩く。力を込めて叩くと壊れそうだったのだ。
「あ。いらっしゃい、山田さん」
「よう、雄一郎。邪魔していいか?」
その家の主、江野宮雄一郎がドアから顔を出す。
灰色の髪に、陽に焼けた肌、そして濃い紫色の瞳。身長も高く、日本人離れした容姿だが、これは幸太郎のようにアストラエラへ願って容姿を変えたわけではい。本人も、今は気にしていないが、昔はこの容姿の事を酷く気にしていたものだ。元の世界では、イジメの原因だったという事も聞き及んでいる。
服装も着古したもので、俺よりも一般人らしい。まあ、別に競っているわけではないのだが。
「いいですけど……狭いですよ?」
「気にしないさ」
そう言って、家の中へ入れてもらう。外見は結構ボロボロだったが、中は綺麗に整理整頓されている。外で感じた海風を感じる事も無いので、隙間風対策もちゃんとしているようだ。風が結構強かったが家が軋む音もしないので、見た目以上に丈夫である事も分かる。
家具は最小限で、ランプに食器、料理道具がいくつか目に付くくらいか。
「あら」
不審に思われない程度に室内を観察していると、奥の部屋から先日会ったセルウィさんが出てくる。綿の上着と丈の長いスカートという、いかにも町娘といった服装だが、お姉さんと違って物静かな雰囲気が感じられるセラウィさんには良く似合うように思う。
どうやら、彼女が今出てきた部屋が寝室のようだ。手櫛で髪型を整えている事から、寝起きなのかもしれない。もう昼時なのだが。一体この時間まで眠っているほど、昨夜は夜遅くまで何をしていたのだろうか。
仲間の幸せを喜ぶべきか、妬むべきか。
「いらっしゃいませ、レンジ・ヤマダ様」
「こんにちは、セラウィさん。あと、様付けは苦手なので、出来れば別の呼び方で」
あいさつの後にそう言うと、困ったようにその視線が雄一郎へ向く。その雄一郎は、小さく笑ったあと一つ頷いて応えた。
視線で通じ合ってるよ。そんな俺の視線に気付いたのか、雄一郎は恥ずかしそうに頬を掻きながら、視線を逸らす。男がやっても、まったくときめかない仕草である。
「山田さん。立ち話も何ですし、座って下さい」
恥ずかしさを紛らわすように早口でそう言うと、椅子を勧められる。その内心が手に取るように感じられ、苦笑して勧められた椅子へ腰を下ろす。
昔から、雄一郎は感情の動きを隠すのが苦手だった。本人は黙っていても、僅かな所作や顔に感情が出てしまう。何を考えているのかまでは本人ではないので分からないが、焦っているのか、楽しんでいるのかというくらいは簡単に分かってしまう。
仲良くなるとそれが顕著で、そうなってくると気を許してくれているように感じられて嬉しかったものだ。
「紅茶は大丈夫ですか?」
「ああ。あまり気にしないでください、こっちは空手ですから」
そう言って両手を上げると、クスリと笑う。ああ、たしかに。セレスティアとセラウィさんは姉妹なのだろう。その笑い顔は、姉であるセレスティアを連想させる。
「なあ、雄一郎。セラウィさんとは、どうやって仲良くなったんだ?」
テーブルへ肘を付きながら、意図して意地の悪い笑顔を浮かべて雄一郎へセラウィさんとの馴れ初めを聞く。俺の意図を悟ったのか、雄一郎は困ったような、でも少し嬉しそうな顔になりながら視線を窓の方へと向けた。
「またそういう事を……。別に、特別な事は何もしていませんよ」
「ふうん」
「イヤな笑い方だなあ」
「元々だ、気にするな」
「まったく」
そして、溜息。だが、その口元は緩んでいるので、本心から話すのが嫌という訳ではないようだ。
誰だって、自分と彼女の馴れ初めを誰かに自慢したいという欲求は持っているものなのだろう。
「山田さんが王都から消えた後、この街に来たんです。セレスティアさんがメルディオレ出身だという事を聞いていましたから」
彼女の事は踏ん切りがついているのか、それともその道半ばなのかは分からない。だが、こうやって口に出来るほどには、セレスティアの死を乗り越えたという事か。まだエルの死を口に出来ない俺よりも、目の前に座る十八歳の方が大人のように感じてしまう。
子供の成長は早いと思うべきか、俺が子供なだけなのか。そう考えて、深く息を吐いた。
「どうかしましたか?」
「いんや。それで、街に来てからセレスティアの家を訪ねたのか?」
「はい。といっても、セレスティアさんの家族は――」
そこまで口にして、視線がセラウィさんの方へ向く。彼女はこちらへ背を向けて紅茶の用意をしていた。
小さく聞こえるのは鼻歌だろうか。先日見た時は陰鬱な性格なのかと思ったが、もしかしたら今の姿が素の性格なのかもしれない。だとすると、人見知りが激しいのか。
そして、雄一郎の視線の意味。その事に思い至ると、そうか、とだけ口にした。
セレスティアの家族。それはきっと、妹だけだったのだろう。両親がどうなったのかは分からないが、あの時は魔物の攻勢が激しかった。女だてらに騎士団の副団長という立場だった事を思うと、深く考えずとも分かってしまう。
「そこで知り合ったのか」
「はい」
きっと、最初から仲が良かったわけではないはずだ。唯一の家族、肉親、姉。それを失くして、その時一緒に旅をしていた男を許せる人がどれだけ居るか。
雄一郎はそこまで語らないが、容易に想像できる。
「良い人そうじゃないか」
「本当に。僕には勿体無いくらいです」
「そうでもない。お前も良い奴だよ。自信を持ってくれ」
俺が間髪入れずにそう言うと、一瞬面喰った顔をした後、恥ずかしげに視線を逸らして頬を掻いた。
他人の為に泣ける、他人の為に命を賭けれる。口にするだけなら簡単なそれを実行できた雄一郎は、本当にイイ奴だと知っている。その為に、その左腕は失われ、セレスティアは命を失った。それでも、こうやって笑っている。
先日は驚いたが、こんなに喜ばしい事もない。俺が笑うと、居心地が悪そうに身じろいだ。
「墓守の仕事は……」
「セレスティアさんのお墓を。僕達は、あの人を連れて帰る事が出来ませんでしたから」
そこまで話して、ん、と伸びをする。
「それにしても。この家は、二人で済むには少し危なくないか?」
湿っぽい話は終わりだと言外に告げるよう、話題を逸らす。
視線を天井へ向けると、雨風は防げるだろうが、老朽化が目立つ木製の天井が視界に映る。言っては悪いが、いつ崩れてもおかしくないように思えるほどだ。
「もう少しお金が貯まったら、改築する予定です」
「そうか。ダグラム辺りに頼めば、金くらい出してくれるんじゃないか?」
友人であるドワーフの名前を出すと、雄一郎がそうかもしれません、と苦笑する。
ギルドの受付員兼冒険者であるダグラムは蓄えも十分あるし、義理人情にも篤い。雄一郎が頼めば、二つ返事で金を貸してくれそうなものだが。
「この家も、結構いいところがあるんですよ」
「そうなのか?」
「ええ。狭いから、何がどこにあるかがすぐ分かるし、小さな声でも相手に届く」
ふむ、と頷く。
「そしてなにより、冬の夜は寒いですから。ベッドの上でくっつかないといけない」
雄一郎がそう言った瞬間、カチャ、と音を立ててティーカップが置かれた。
「どうぞ」
「はい」
その視線はとても冷たくて、同棲して愛し合っているとはとても思えない。先ほどまで鼻歌を歌っていた人とは、まるで別人だ。
しばらくして、俺の方には音を立てる事無くティーカップが置かれる。
その違いを感じてくつ、と笑ってしまった。
「お口に合えばいいのですが」
「ありがとうございます」
こちらには、恥ずかしげに目を伏せながらだ。実際恥ずかしいのだろう。見ず知らずといってもいいような男に、夜の話などをされたのだから。
そこには気付かないふりをして、礼を口にする。
「もう。変な事を言わないで」
「だって」
その視線を向けられても動じる事無く、雄一郎が湯気を出す紅茶を口に含んだ。
動揺は欠片も無く、むしろ彼女の反応を楽しんでいるようにも感じる。昔はあんなにオドオドしていたのに、強くなったなあ、と。感心しながら、俺も紅茶を一口啜る。
「こんなに幸せなんだから。誰にだって教えたいし」
「へいへい。リア充爆発しやがれ、チクショウ」
というか、俺が知っている雄一郎とキャラが違い過ぎるのはどうしたものか。これが愛の力か。などと馬鹿な事を考えてみる。
実際は、こちらが雄一郎の素なのかもしれない。元の世界では苛められ、この世界では殺伐とした旅をして。そうして、気分が落ち込んでしまっていた。それが、俺の知っている雄一郎。
セレスティアが死んで、もう二年以上になるのか。正確な時間は分からないが、おそらくそれくらいだろう。時間が心の傷を癒すという言葉があるのは知っている。しかし、所詮は言葉でしかない。心の傷は本人が乗り越えなければならないし、時間が経つことで傷が深くなる人間も居る。
少なくとも、雄一郎という少年は、後者であった。セレスティアが死に、荒れに荒れ、彼は『復讐者』となった。怒りと肉体の傷が力の源である雄一郎にとって、今の状態は望んだものであり、十全の力を振えない枷でもあるはずだ。
ダグラム達がグリフィン討伐の際に犠牲者を出し、完全には討伐できなかった理由が分かった。
雄一郎を討伐隊に組み込まなかった。理由は、今の雄一郎が戦力として役に立たないからだ。それは喜ぶべき事なのだが、いまだに魔物という脅威が残るこの世界では、色々と複雑でもあるのではないだろうか。
「山田さんだって、十分充実した毎日を送ってるみたいだけど」
「そうかあ?」
「でも、また阿弥ちゃんと旅をしているんでしょう?」
「そりゃ、まあ」
その言葉に、曖昧な返事をしてしまう。雄一郎から視線を逸らし、窓の外を見る。気持ちの良いくらいの快晴だが、今の俺には眩しい太陽が憎たらしすぎる。
俺達と一緒に旅をしていた頃は無口で大人しい少年だったというのに、今ははきはきと喋り、冗談を口にして、心底から楽しそうに笑っている。
……以前とは全く違うが、今の方が生き生きとしている。そう感じた。
「そういえば、エルさんは?」
「置いてきた。アイツは最近、また小言が増えてきたからな」
「それは、山田さんが言われるような事をするからじゃ……」
「そうかもなあ」
性格というのは、生まれつきのものではない。今まで生きてきた人生で作られるものだと俺は思う。
なら、エルメンヒルデという人格。その性格というものは俺と一緒に生きた一年で作られたものであり、彼女の小言が多いという事は、それだけ俺がだらしないという事なのだろう。
「相変わらず、仲が良いですね」
「そうでもない。小言を言われて、呆れられる毎日さ」
「仲が良くないと、小言も言ってくれませんよ」
「確かに、それもそうだ」
まあ、小言で仲の良し悪しを計られても困るのだが。その辺りは、あまり気にしないでおこう。
「珍しいね。昔は、エルさんといつも一緒だったのに」
「そうでもなかっただろ……多分」
雄一郎からの一言へ即座に言葉を返すが、その声には自分でも力が無いと感じた。それはきっと、俺自身が事を分かっているからだろう。
ああ、確かに。いつも一緒だったなあ、と。そう思い出して、苦笑する。街に居る時も、旅の間も、戦う時も。ずっと一緒だった。彼女は俺の相棒であり、武器だった。そして俺は、彼女の使い手だった。一緒に居るのが当たり前で、俺の勝手な思い込みかもしれないが……きっと、アストラエラよりも深く繋がっていたのだと。そう思う。
それがどうだ。今はもう、こうやってエルメンヒルデと別れて行動する事にも慣れ、一人の時間が増えた。
自分の時間が増えたと喜ぶべきか、エルメンヒルデと別れて行動できるようになったと悲しむべきか。その事を考えても、答えは出ない。それはきっと、俺自身が答えを出す事に抵抗があるからだ。
「何かあった?」
「……分かるか?」
「なんとなく」
「そうか」
そう呟く。顔に出したつもりは無いが、そう思っているのは俺だけなのかもしれない。
息を深く吐くと、身体から力が抜けた。
「エルが死んだ」
「…………」
口にすると、更に力が抜ける。まるで両腕が自分の物ではないかのように、まだ半分以上紅茶が残っているティーカップをテーブルに置く。
「だから、一人で旅に」
雄一郎がそう言うと、セラウィさんに目配せをする。その彼女は、気を効かせて退室してくれた
「じゃあ、この前一緒だったのは……」
「俺がアストラエラに頼んで蘇らせた――今は、エルメンヒルデと呼んでいる」
「そうか。ああ、確かに。前はエルって呼んでたもんね。山田さんも」
しばらくの無言。
俺は何を言っているのだろう。そう、自問する。こんな話をするために、雄一郎の元を訪ねたわけではなかった。グリフィンの討伐。その際に力を貸してもらうために尋ねたのだというのに、俺はどうして身の上話をしているのか。
きっと、幸せそうな雄一郎とセラウィさんを見て、我慢できなくなったのだろう。エルの死を、抱え込んでいる現実に。
心の傷は時間が癒してくれるという言葉がある。きっとその通りだ。……周りに、支えてくれる人が居るなら、その傷はいつか癒えるだろう。
けど……一人で抱え込んでいるバカは、その傷が深く、抉り込んでくる。だというのに、時間はエルの記憶を確実に奪っていくのだ。失ったという記憶はあるのに、失った人の事を思い出せなくなる。その現実に、いつか耐えられなくなる。
耐えられなくなった時、どうなるのだろう。昔の雄一郎のように暴走するのか、乗り越えるのか。
「くそっ。他の誰にも言うなよ? 知っているの、お前以外には宇多野さんと幸太郎だけだからな」
「はあ? じゃあ、なんで僕に言ったんですか」
「知るか。お前が幸せそうだから、口が滑ったんだよ」
「普通、僕より先に阿弥ちゃんでしょ。順番的にっ」
「なんだよ、順番って……」
右手で顔を覆い、深く溜息を吐く。俺は一体、何をしているのか。
口にしたのは隠したかったことのはずなのに、感情すら伴わない、思い付きのまま口にしてしまった。後悔先に立たずとはよく言ったものだ。
「じゃあな。今はアストラエラの依頼でバタバタしているが、それが終わったら、また顔を出すよ」
「……いや、今日は何をしに来たんですか?」
「何でもねえよ」
椅子から立ち上がり、雄一郎たちの愛の巣を出る。寧ろ、逃げるように出たという方が正しいかもしれない。
すると、そんな俺を追って雄一郎も外へ出た。今は無い左腕を通すべき服の袖が、風に靡いて揺れている。
「さっきの話、本当に阿弥ちゃんも知らないんですか?」
「ああ。まだ言っていない。それに、エルメンヒルデにも。あいつは、俺達と旅をした事は覚えているけど、俺との事は覚えていないんだ」
「――そっか」
その肩が落ちる。それは、昔の仲間が変わってしまったと知ったからか。
俺達は、死に慣れてしまった。沢山の人が死に、仲間が死に、友人が死に。そんな現実を何度も見てきた。だから、エルの死もその一つ。そう思えばよかったはずなのだ。エルの死を隠す必要などなかった。皆で共有し、支え合えばよかったのだ。
だというのに、俺は一人で抱え込み、皆の前から姿を消した。エルの死、エルメンヒルデとしての意思。その事に耐えられなかった。だから暴れた。それこそ、たった半年で何度も死に掛けるほどに。
分からない。あの時、俺はどうしてエルの死を自分だけで抱え込んだのか。皆に隠してしまったのか。
英雄に憧れた。だが結局、俺は英雄にはなれなかった。沢山の人を犠牲にし、大切な人を死なせ、それでやっと神と戦える。そんな俺が……一番守りたかった人を守れなかった俺が、英雄になれるはずがない。
その現実から目を背けたかったのか。それとも、エルの死を認めたくなかったのか。
「でも、まだって事は、何時か言うつもりなんですよね?」
「……ああ。この旅が終わったら、言うつもりだ」
「そうですか。じゃあ、僕は何も言いません」
「すまん」
本当に。一回りも歳が下の雄一郎に、俺は何を言っているのか。頭を掻いて、思考を逸らす。
人の幸せを見て、自分の心情を吐露するなど。いい歳した大人の行動ではない。自己嫌悪で気持ちが悪くなりそうだ。
「それじゃあ、また遊びに来てください。何も無い家ですけど」
「そうでもない。お前からノロケられるだなんて想像もしてなかったからな、楽しかったよ」
「別に、ノロケたわけじゃないですけど……」
そう言って、照れたのか口元をにやけさせる雄一郎へ向けて溜息を吐く。今更だろうに。
まあ、でも。雄一郎とこうやって話せるとは予想していなかったが、今は驚きよりも喜びの感情が大きい。やはり、人の幸せな時間を感じられるのは、好きだ。
「ああ、また来るよ。元気でな。仕事、頑張れよ」
「はい」
だから、グリフィンの事は伏せておく。幸せな生活を送っているのだから、危ない事に誘う必要も無い。
阿弥が居る、信頼できる仲間が居る。なら、俺達だけで面倒事は片付けよう。雄一郎が戦うためには傷を負う必要がある。そうなったら、セラウィさんが心配してしまうだろうから。
誰かを心配させてまで、泣かせてまで、戦わせたいだなんて思わない。
「またな」
そう言って、歩き出す。
さて、雄一郎の分まで頑張るかね。やる気を出して戦うのは、あまり得意ではないのだが。
「山田さん、頑張って」
その声はとても小さくて、おそらく俺に向けた言葉だが、俺に聞かせるための声ではなかったのだろう。
だから、聞こえないふりをして足を進める。
その言葉が、胸の奥に落ちる。反論も、恥ずかしさも、感じない。きっとそれは、乗り越えた雄一郎の言葉だからだろう。
頑張るよ。そう胸中で口にして、小さな小さな、本当に小さな一歩を踏み出した。




