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第三話 女神と精霊神と神殺し2

 香ばしい香りが鼻に届く。

 食欲がそそられる、肉の焼けた匂いだ。そして、熱々に焼けた肉の上には香ばしい薫りがするタレが掛けられており、この匂いがまた食欲を刺激してくる。

 六人が座っても余裕がありそうな大テーブル。その上に所狭しと並べられた朝食はこんがりと焼けた肉だけではなく、採れたての新鮮な野菜も並べられており、彩りも豊かに盛り付けられている。

 食材の調和とも言うべきか。肉と野菜。喉を潤すスープと水。そのどれもが一級品。新鮮で人の手が殆ど加えられていないからこそ、こうまでも食欲を刺激してくれるのか。

 ただ、朝食というにはあまりにボリューム過多とも言えるかもしれない。


「いただきます」


 自然豊かなエルフレイム大陸だからこその朝食、その見た目をまず楽しんでいると、ムルルがその声と共にこんがりと焼けた肉をその小さな手でわし掴んだ。

 そのまま、手元にあった瑞々しい野菜で包むと、ムルルの小さな拳と同程度はありそうな肉へ齧り付いた。その三分の一ほどを、一気に口内に納める。


「美味そうに食べるなあ」

『行儀が悪いぞ』

「料理は、熱いうちに食べない方が失礼」


 それもそうだ。ムルルの正論に苦笑しながら同意すると、俺も同じように野菜で包んだ肉へ齧り付く。

 外は焦げ目がつくほどに焼かれているのに中は大量の肉汁と僅かな血が滲む程度に火が通っている肉は、噛めば噛むほど味が口内に広がる。水気を含んだ瑞々しい野菜は濃い肉の味を和らげてくれ、丁度良い塩梅にしてくれる。

 最近はベッドの上で、消化に良い、野菜が溶けるほど柔らかくなるまで煮込んだ薄味のスープばかりだったので、濃い味の肉料理は脳に刺激が来るほどに美味しく感じてしまう。

 こうやって美味しい料理を食べると、怪我などするものではないと心から思う。

 怪我をした俺を気遣ってくれていた料理ではあるが、やはりまだ二十代。薄味で消化の良い料理よりも、濃い味で噛み応えがある料理の方が美味しいと思ってしまうのだ。


「んー」

「随分と美味そうに食べるのだな」


 この美味しさを言葉にする事が出来ず、表情を崩しながら二口目を齧る。

 すると、フェイロナが口元を緩めながら、そんな俺の表情を評してくれた。


「まあ、なあ。ここ何日か、薄味のスープばかりだったからな」


 シェルファとの戦いで、怪我というほどでもないが全身を痛めつけてしまったので、用意してもらえる料理は消化に良いが……まあ、少々味気ない料理ばかりだったのだ。

 ちゃんと俺の事を考えてくれていた料理ではあるのだが、やはり……味付けが薄い料理が続くと、味が濃い料理を恋しく思ってしまう。


「美味しくなかった?」

「美味かったけどな。やっぱり人間、同じような味ばかりだと飽きるもんさ」

『贅沢な……』

「まったくだ。人間ってのは、贅沢な生き物だね」


 かかと笑って、今度は野菜を多めにして肉を齧る。肉とは違う、瑞々しい歯応えが堪らない。何度も咀嚼して嚥下すると、透き通った天然水を飲む。


「偶に野菜が大きく切られているがあってな。まだ芯が残っていて、噛み応えがあった……アレが美味しかったな」

「そ、そうですか……」

「はあ……」


 俺がベッドで休んでいる間に食べていたものを説明すると、阿弥とフランシェスカ嬢が肩を落としていた。

 その反応から一つの仮説が浮かぶが……面白そうなので気付かないフリをしておくことにする。そんな俺の様子に気付いたフェイロナも黙っている辺り、この状況を楽しんでいるようだ。

 そう思いながら少し離れた位置にあった、適当な大きさの肉へと手を伸ばそうとして……俺の手が届くよりも一瞬早く、小さな手によってその肉が(さら)われてしまう。


「…………」

「……なに?」


 無言で視線を向けると、俺から肉を奪った当人は素知らぬ顔でその肉を齧る。それがまるで見せつけているようだと感じるのは、俺の心が卑屈なせいかもしれない。


「ご飯は、熱いうちに食べるのが礼儀」

「食べながら喋るのは行儀が良くないぞ。ソルネアを見てみろ」

「うん」


 食べながら先ほどと似たような事を口にするムルルへ注意をすると、意外なほどに素直な返事。

 突然話題に出されたソルネアは……特に気にする事無くその小さな口を大きく開いて肉へ齧り付いていた。俺の真似をしているのだろうが、容姿が整っているだけに何とも言えない気持ちになってしまう。真似をするなら、俺ではなくフランシェスカ嬢や阿弥の真似をすればいいのに。

 こればかりは、何度言っても直してくれない。


「…………」


 そして、そんなソルネアの真似をするように、音を立てないよう肉を齧り始めるムルル。

 こういう所は可愛いのだがと思いながら、別の肉へと手を伸ばす。しかし、先ほどの肉をさっさと食べ終わったのか、ムルルの手と俺の手ばぶつかりそうになってしまう。


「ちゃんと噛んで食べているのか?」

「大丈夫」

「いや、大丈夫じゃなくてだな……噛まないと、身体に悪いぞ?」

「……そうなの?」

『親子か、お前達は』


 当たり前のようにムルルへ注意をすると、エルメンヒルデが疲れたように呟く。その声に視線を周囲へ向けると、阿弥を初めとした他の面々も何とも言えない……微笑ましいものを見るように、俺とムルルを見ていた。


「髪の色が違うだろう?」

「うん」


 俺が言うと、ムルルが同意してくれる。まあ、親子には見えないだろう。年齢的にも、ムルルが娘というには少々大きすぎる……と思う。ムルルが小柄なので、見えない事も無いかもしれないが。


『そういう意味で言ったわけではないのだがな』

「分かっているけど、言ってやるな。グラアニアが泣くぞ」


 比喩ではなく、本当に。

 そう思っていると、ゾクリ、と。背筋に冷たい氷のような物を投げ込まれたような感覚。

 一瞬の事だったが阿弥とフェイロナが不思議そうに俺を見て、そんな二人に気付かれないようにそっと殺気を感じた方へ視線を向ける。

 そこには、キッチンの影からこちらを見て(睨んで)いるグラアニアの姿が――一瞬見えたような気がしたが、すぐに隠れてしまった。その消えた方向から小さな喧噪が聞こえた気がした。

 奥さんに怒られているのだろうか? ああやって娘の行動を逐一観察しようとするから、ムルルに煙たがられるというのに……。

 父親とは大変だなあ、と思いながら用意されていた濡れた布でムルルの手を軽く拭いてやる。肉に付いているタレが垂れて、服に付着しようとしていたのだ。


「もう十五なんだから、食べる事ばかりに集中したらダメだろ」

「大丈夫。食べる時は、レンジかフランの隣に座る」

「……余計に駄目な気がするぞ」


 フランシェスカ嬢の方へ視線を向けると、笑顔を浮かべながら野菜を食べている。俺は呆れるしかできないというのに、大人な対応だと思ってしまう。更に言うなら、母性すら感じられた。

 これが先日二十歳になった影響だろうか。以前にも増して綺麗に見える……とまあ、馬鹿な考えは置いておいて、さっさと食事を済ませてしまう事にする。このままだと、俺の分までムルルに食べられてしまいそうだ。


「よく、朝からそんなに食べれますね」


 争うようにとまではいかないが、ムルルに対抗するように肉へ手を伸ばしていると、阿弥が感心したような声を出す。

 その阿弥は、フランシェスカ嬢よりも食が細く、小皿の上には野菜ばかりが乗っている。こちらとしては、阿弥の方がそれだけで昼まで持つのかと心配になるのだが、女の子としては色々と考えるべき事が多いのだろう。何がとは言わないが、俺はあまり気にしなくても良いと思うのだが。


「阿弥も、昔は沢山……」

「昔の事ですっ」


 そして、怒られてしまった。

 昔は俺と同じとまでは言わなくても、自分の生活態度やらをまったく気にせず好きなものを好きなだけ食うという世の女性に喧嘩を売っているとしか言いようのない工藤と同じくらい食べていたのに。それであのスタイルなのだから、本当に世の女性に喧嘩を売っている。

 なにせ、胸は大きいし、腰は(くび)れているのだ。初めて会った時も思ったが、アイツのスタイルは日本人離れしている。それでいて俺以上にぐうたらな生活をしているというのだ。

 だというのに、先日商業都市(メルディオレ)で会った時は、そのスタイルに些かの曇りも無かったのだから驚きだ。

 その事を思い出そうとすると、阿弥がこちらへ鋭い視線が向けてくる。相変わらず、こういう事への勘は凄まじい。


「なにか?」

「いや」


 視線を逸らし、ムルルと一緒に食べる事へ集中する事にする。こういう時の阿弥というか、女性陣は怖いというか恐ろしいというか。

 逆らわない方が良いのだと身に染みて知っているので、さっさと朝食を食べてしまおうと思う。

 そんな俺を見てフランシェスカ嬢達が笑っているが、まあいつもの事だ。


「それはそうと。傷が癒えたのなら、今後はどうする?」


 そう聞いてくるフェイロナは、手も口元も汚れないような綺麗な食べ方をしている。こういう所に性格は現れると思う。


「ん。俺は、この後ツェネリィアに会ってくる」

「……そう簡単に会える御方でもないと思うのだが」

「一応、面識というか……資格はあるからな」


 その言葉に、フェイロナの手が止まる。驚いたようにこちらを見て、どこか納得したように頷かれる。

 俺の何処に納得したのかは分からないが、ツェネリィアとあって今後の方針を決める事を話すと納得される。まあ、以前アストラエラから聞いた話と、そう変わらないのかもしれないが。


「ツェネリィア様にですか?」


 そして、少し興奮気味に食いついてくるフランシェスカ嬢。なんだか最近、こういう新しい事に貪欲なようにも思えるのは気のせいだろうか。聞いたところによると、幸太郎にも魔法を見せてほしいと頼み込んでいたらしい。

 魔法とは、この世界で唯一人――井上幸太郎だけが使える魔術である。つまり、アイツの魔法は模倣されると使えなくなるという制限があるので、見せたくないと断るのが大変だったとベッドで横になる俺へ愚痴っていた。

 冒険者としては正しい姿とも言えるのだろう。幸太郎には悪いが、頑張ってほしい。聞いた話では、フランシェスカ嬢はまだ諦めていないようだし。やはり魔術師として、魔法に興味があるのだろうか。


「ああ。一緒に……は難しいか」


 丁度良いので一緒に会おうかと思ったが、流石に俺の一存で決めるのは難しい。古くから伝わる仕来(しきた)りというのは、物事の判断基準だ。それを行う事で認められる事もある。

 よく考えると、俺達も女神の――精霊神に使える神官と同等である女神の使徒であると認めてもらうために、色々と頑張ったものだ。


「んー……フランシェスカ嬢やフェイロナだと、ちゃんと儀式をこなさないと周りから怒られそうだな」

「そうですね。蓮司さんだけならともかく、私達はちゃんとした手順を踏む必要があるかと」

「阿弥は大丈夫だろ」

「駄目ですよ。私はただの女神の使徒。蓮司さんとは、少し違いますから」

「気にし過ぎだと思うけどな」


 多分デルウィン達は気にしないだろうし、ツェネリィアも気にしない。でも、まあ……周りは気にするのかもしれないな。いくら女神の使徒であっても、世界を救った英雄であっても、儀式はちゃんとしろ、と。

 俺が周りから何も言われないのは、世界を救ったではなく――神を殺したからか。

 神を殺した人間と、女神の使徒、精霊神の神官。誰の格が上かと聞かれれば、やはり神を殺した人間か。


「手順?」


 フランシェスカ嬢が、阿弥へ聞き返す。そして、フェイロナもまた疑問符の浮いた顔で阿弥を見た。


「ツェネリィア様への謁見が許されるには、まず私達の実力を示さなければならないのです」

「実力……魔物討伐ですか?」

「それもありますし。いくつか、森へ潜って果物や香木や……」

「簡単に言えば、ツェネリィアの好物だな」

『――簡単に言い過ぎだ』


 エルメンヒルデから咎められるが、素知らぬ顔で食事を続ける。実際、そうなのだ。

 エルフレイム大陸ではツェネリィアへ謁見を許されるための供物を集める儀式だと言われているが、実際はあの精霊神が好きな食べ物を集めるだけなのだから。

 巨大猿(エイプ)の肉に、いくつかの果物と気分が高揚する香木。後は、世界樹の濃密な魔力で洗浄された霊水で作られた清酒。

 それを世界樹前にある祭壇へ捧げれば、好物を持ってきてくれた人と会ってくれるという訳だ。神へ遭うための儀式など、裏を返せばそういうものである。


「会いたいなら、儀式に必要な物を一緒に集めるか?」

「え?」

「いや。儀式をこなせばデルウィン達も文句は言わないだろうしな……多分」


 汚れた手を濡れた布で拭き、水を飲む。果物や清酒はエルフの村へ行って分けてもらえば簡単に集まるが、香木と巨大猿(エイプ)が少々厄介である。

 香木は気分を高揚させる効果があり、それは魔物にも影響する。その所為か、その香木の元となる大樹の傍には魔物が集まってしまうのだ。そして、その魔物の中にはツェネリィアの好物である巨大猿(エイプ)も含まれる。

 グリフィンのように空を飛ぶわけでもないしオーガほど大きいわけでもないが、その敏捷性と腕力はオーガを軽く凌ぐし、体力もエルフレイム大陸にすむ魔物の中では桁外れに高い。かなりの難敵ではあるが、何度か戦った事がある相手でもある。阿弥とフェイロナ、ムルルが居るなら問題無い相手だろう。


「なら、儀式に必要な道具を集めてから――」

「道具は私達で集めますよ。蓮司さんは、先にツェネリィア様へ会ってきたらどうですか?」

「ん?」


 これからどうするかを考えていると、阿弥が口元をハンカチで拭きながらそう言ってくる。

 それに同意するように、フランシェスカ嬢も頷いていた。ムルルを見ると……こちらは食事に集中している。平常運転で安心してしまうのは何故だろう。


「いえ。私達だけで大丈夫ですから、先にソルネアさんと一緒にツェネリィア様の元へ行った方が良いと思いますけど……」

「ああ、まあ……けど、大丈夫か?」


 いくらフェイロナが居るとはいえ、まだエルフレイム大陸へ来て日が浅い。経験や知識なら、ムルルの方が多いだろう。

 咄嗟に何かが起きた時に対応できるかと考えると、少しばかり不安になる。俺が居るから何でもできるという訳ではないが、これでも一応、知識だけはそれなりだという自負がある。

 そして、それ以上に……毒蛇やら毒草やらがある森なのだから、阿弥やムルルが心配になるのは当然の事だろう。


「大丈夫ですよ。私だって、何時までも子供じゃないんです」


 子供達だけだと心配なのだが……という視線を感じたのかどうかは分からないが、阿弥がそう言ってくる。胸を張って言っているが、やはり不安なのは親心からか。

 まあ、つまり。いつもこうやって俺が子供扱いをしているから、自分達でも仕事が出来ると言いたいのだろう。

 「本当に大丈夫か?」という言葉を、なんとか飲み込む。それを言えば、阿弥が意固地になってしまうというのは考えなくても分かる事だ。なので、その言葉を口しないで、じっと阿弥を見つめる。

 その目は真剣で、先の自分達で道具集めをするという言葉は本心なのだと感じられた。


「そうか。わかった」


 だから、その意思を尊重するように両手を上げて降参のポーズをする。


「なら。今日は阿弥に甘える事にして、俺とソルネアはツェネリィアへ会いに行くとするよ」

「――」


 俺がそう言うと、喜びを隠そうとして……でも隠しきれていないという何とも表現に困る表情を浮かべる。顔は平静を(つくろ)おうとしているのに、口元は緩んでしまう。

 そんなに俺から子供扱いされたくないのか。そう思うが、俺が子供の頃もそんな感じだったなあ、と。

 どうしてか、子供の頃は子供扱いされる事が嫌だった。けど、大人になると今度は子供時代に戻りたくなる。


「はいっ。偶には、私に甘えてくれていいんですからね?」

「そりゃあ心強い。今後は、色々と頼らせてもらおうかな」

『アヤ。甘やかすとレンジは何でもアヤに任せるが……』

「そ、それでもいいですっ」


 その強がりが可愛らしくて口元を緩めると、一転して子供のような顔で怒りを露わにしてしまう。そんな阿弥の反応を微笑ましいものを見るような目で見ているフェイロナとフランシェスカ嬢。まあ、そうなるよなあ、と。多分、俺も似たような顔で阿弥を見ているはずだ。

 そういう所が子供っぽいのだが……まあ、今は言わないでおこう。


「では、私は今日もレンジと一緒なのですね」


 話が纏まったと感じたのか、今まで黙っていたソルネアが口を開く。いつの間にか食事も終えており、汚れた手と口元を拭う仕草は今までよりも洗練されているようにも感じられる。


「そうだな」

「わかりました」

「む」


 しかし、それが面白くなかったのか。先ほどまでの表情とは一転、何か面白くないモノを見たような顔をする阿弥。


「最近、随分と仲が良いですよね」

「そうか?」


 前からこんな感じだったと思うが。不思議に思ってフェイロナとフランシェスカ嬢を見るが、こちらは苦笑いを浮かべるばかりである。当の本人であるソルネアと、満腹になってぼうっとしているムルルは我関せずを貫いている。

 ……いつも通りの流れだな、としか思わない。


『何といったか……ああ、そうだ。身から出た錆だな』

「お前の刀身を錆だらけにしてやろうか」

『それはやめてくれ』


 まあ、出来るとは思わないが。

 まったく。どこでそんな言葉を――もしかしたら、俺が教えたのかもしれないが。


「とにかく。あんまり無理をしないようにな」

「もう。また子供扱い……」

「子供扱いじゃなくて、心配しているんだよ。――心配するくらいは良いだろう?」

「……もぅ」


 それくらいは素直に受け取ってほしいものだ。


「それじゃあ、ムルル。お前はエルフレイムの出身なんだから、皆を頼むぞ」

「うん、まかせて」


 心強いね、本当に。眠そうな声なのが、尚更ムルルらしい。

 そう思いながら、フランシェスカ嬢へ視線を向ける。


「もう二十歳になったんだ。子供たちの相手を頼むからな」

「はい」


 力強い返事に胸を軽くすると、また視線を感じる。

 そちらでは、阿弥が俺を睨んで……続いて、その胸元へ視線が動く。

 そんなに気にしなくていいのに、と思うのは俺が男だからだろうな。宇多野さんも、いつも気にしていたし。



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