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その数日後からウィラードとセレナとドイルが参加していた。
「なんで、アイリス様がウラド様に教えてるのですか?」
「初めは私が教えてたんだけど、アイリスがウラドに恋をしてるから無理やり、代えさせられたのよ。」
「あなたがウラド君と話してて全く進まないからでしょ⁉︎」
「恋をしてるところは否定しないんだ。」
「うっ」
「まさかのアイリス様が敵になるとは思いませんでした。」
「て、敵なんて…」
「おい、ウィル…なんとかしてくれ。」
「無理だね。これはウラドの問題だからね。」
「ウラドは良いな〜」
俺はウィラードと親しくなってから、時間が過ぎるとウィラードのことをウィルと呼ぶようになった。ドイルは見た目は良いんだが、女癖が悪過ぎるため、残念なイケメンなのだ。
「だが、今は紅茶が優先だ。」
そう言って、ディアナさんからもらった紅茶を飲んでいた。
「ウラドは本当に紅茶が好きだよね?」
「まぁな…」
「紅茶って苦くないか?」
「お前は本当に美味い紅茶を飲んだことがないからそんなことが言えるんだ。」
「よく、わかんないな。」
「まだ、子供だな。」
「そんなことねぇよ!!!」
「ウラド、あなたにお客さんよ?」
突然、義母さんに言われた。
「誰ですか?」
「コラン様よ。」
「「「「「なっ⁉︎」」」」」
「わかりました。」
「コラン様って誰だ?」
「愚弟、あなたは黙ってなさい。恥を晒すだけだから。」
「なっ⁉︎そこまで言うことないだろ。ウィル、それで誰なんだ?」
「コラン様は魔法師と錬金術師がランクSの有名人だよ。ランクSの魔法師はかなりの数がいるけど、錬金術師はこの国に三人しか、いないんだ。それにもうすぐ、ランクSSになると言われてるんだ。だから、この国では目標とされる人物なんだよ。」
「凄いな…」
すると、コランが入ってきた。
「ウラド、久しぶりだな!元気にしてたか⁉︎」
「まぁな。」
「相変わらず、生意気なガキだな。」
「それで何の用だ?」
「実はあのバカから指名依頼が来た。一緒に行くぞ!」
「バカってあいつか?」
「あいつだ。」
「兄様、あいつって誰ですか?」
「超変人天才のエールだ。」
「エールってエール様ですか⁉︎」
「あんな奴に様なんてつけなくて良い。」
「本当だ。」
「でも、この国唯一のランクSSの調薬師ですよ?」
今回、依頼をして来たのはエールという男だ。ランクAの魔法師だが、調薬師はこの国唯一のランクSSなのだ。どこの家もとりこもうと必死だが、うまくいっていない。
「あいつの依頼は無茶苦茶なのしかないからな。」
「今回もだろ?」
「ああ。だが、私たちにとっては見逃せないことだ。」
「どういうことだ?」
「まず、報酬は金だ。」
「ああ。依頼内容は?」
「オールフィールの木が見つかった。」
「なんだと⁉︎」
「オールフィール?」
「ああ…ほとんどの奴は知らないか。オールフィールっていうのは紅茶の中で王者と呼ばれるものだ。ただ、オールフィールはかなり、キツイ奴が見張ってる為、入手がほぼ、出来ないんだ。だが、オールフィールは紅茶だけではなく、良い薬の材料でもあるから、調薬師にとってもこれほど、良い材料はないからどうしても欲しいんだ。」
「オールフィールの木は近くにいるだけで魔力が回復するんだ。だから、その周りには魔物が集まる。だが、オールフィールには番人と呼ばれる魔物がいる。それがフルメタルドラゴンだ。フルメタルドラゴンの弱点は火なんだが、オールフィールの木が近くにあって燃えてしまうから火属性の魔法は使えないんだ。だからそれ以外の属性で攻撃をしなければならないんだが、それなりに耐性がある為、効かないんだ。それで、おびき寄せて、火属性の魔法で叩こうとしたら、ブレスで一撃でやられたんだ。フルメタルドラゴンは体の周りに金属があって、それが魔力を吸収する。オールフィールの木から吸収してブレスをするから無限に撃てるんだ。だから、オールフィールを入手するのは困難なんだ。」
「そんなのどうしたら良いんですか?」
「その為のウラドの固有魔法だ。フルメタルドラゴンを気絶させて、そのうちに回収して去る。それが作戦だ。別に戦わなくて、構わない。それと、今回の依頼を成功させるとウラドのランクが上がるぞ。」
「ランクよりもオールフィールだ。その依頼は受けるぞ。死ぬ前に飲めたら良いと思ってたが、こんなに早く出会えるとは思わなかった。場所はどこだ?」
「龍九の谷だ。」
龍九の谷には全部で九種類のドラゴンの縄張りがある。もちろん、それ以外にも魔物は存在するが、圧倒的な力を持つ九種類のドラゴンが龍九の谷を占めている。
「はっ⁉︎」
「そんな危ない所に行ってはダメですよ!!!」
アイリスがキレた。
「大丈夫だろ。コランもいるし、龍九の谷と言っても、戦うのは一種類だけだしな。」
「なら、私も着いて行きます。」
ルナが言った。
「お前じゃ無理だ。死ぬぞ。」
コランが答えた。
「あそこは確かにドラゴンばかりに目が行くが、それ以外にも大量に強い魔物がいる。私が見てる限り、この中でミレイ様以外は生き残れないぞ。ウラドとは何回も仕事をしてるから実力を知ってるが、お前達じゃ足手まといだ。おそらく、お前を庇ってる余裕が私たちには無い。」
「くっ」
「悔しいのはわかるがこれが現実だ。悔しいなら次までに強くなってろ。」
「コラン、それは今、受けないとダメか?」
「いや、そんことはないぞ。おそらく、入手できる奴らはいないだろう。」
「なら、少し待ってくれないか?」
「なんでだ?」
「もうすぐ、学校のテストなんだ。それが終わったらじゃダメか?」
「テストは来月だよな?」
「ああ。」
「なら、良いぞ。テストが終わって三日したらまた、来る。」
「わかった。」
コランは去って行った。
「ウラド様はいろんな人と知り合いなんですね。」
セレナが聞いてきた。
「コランとは紅茶の葉を取りに何回も一緒に行って、エールにはその葉を売ったりしてたら仲良くなり、よく三人でつるんでる。」
「ものすごく濃い面子ね。」
「ただ、今回の依頼は今までで、難易度が一番高いな。失敗はないが、どうしても絶対とは言い切れないからな。それよりも深刻なのはテストの方だ。依頼の方はなんとかなるが、テストがヤバイから教えてくれ。」
「アイリスさんばかりではつまらないと思うので、わたしが教えます。」
セレナが言ってきた。
「なら、私でも良いですね。」
ルナが対抗して言った。
「ルナさんは受験生なんだから、自分の勉強をしてください。」
「私は既に終わっています。」
「絶対はないんですよ?ウラド様が言ってたじゃないですか。」
「うっ」
「なら、私が教えるわ。あまり、話さないでしっかりと教えるわ。セレナは来年の為に勉強をしなさい。」
「うっ…けど、まだ先のことです。」
「けど、絶対はないんでしょ?」
「うっ」
まさかの返しで自分が何も言えなくなるとは思わず、睨むことしか出来なかった。
「なら、決定ね。」
女の戦いはまさかのディアナに軍配が上がったと思ったが、横槍が入った。
「ダメよ。ディアナはドイル君の面倒を見なさい。ドイル君は筆記が死んでるんだから、教えないと落ちるわよ?」
「なら、アイリスが教えてよ。」
「ディアナはウラド君に甘いからなかなか、進まないだろうし、ウラド君に教えるより弟のドイル君に教えるのが筋が通ってるんじゃないの?」
「そうだけど…」
「自分の弟の面倒くらいしっかりと見なさい。」
「うっ…ドイル、この恨みは忘れないからね?」
「す、すまん。なんとか、返せるように頑張るから許してくれ。」
「内容によるわね。」
ディアナさんはドイルだけにはとんでもないくらい、厳しい。
「けど、アイリスはどうしてもウラドの側を離れたくないみたいね。」
「なっ⁉︎」
「結婚相手の話はアイリスが関わってないとは思えないんだけど。」
「それは違うから!!!」
「それはってことは、ウラドの側を離れたくないって方は本当なんですね。」
「それは言葉の綾です!」
結局、アイリスはみんなから弄られるのだった。
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それから特に何もなく、テストの時がやって来た。
「兄様、緊張しますね。」
「いや、そうでもないぞ。やることはやったしな。それに、落ちる気はさらさらないからな。」
「では、行きましょうか。」
「ああ。」
学園は王都の東に位置する。学園の周りにはいろんな店がある。学園に通う人が寄ることが多いからだ。学園には寮がある。寮には王都の外から通う人が入るのとになってる。寮にいる人は門限までは自由に学園の外に出ることができるが、家に帰ることは出来ない。外出許可をもらえば、家に帰ることができるが、滅多なことがない限り、許可をされない。俺は学園まで、十分程で着くので家から通うことになってる。
「おはようございます!」
遠くの方からウィラードとセレナが来た。
「おはよう。なんで、セレナがいるんだ?」
「実は私だけ、遅れて入学するのは嫌なので、飛び級で入試を受けれるようにお父様を説得したんです。それにミレイ様にウラド様のブレーキ役になってくれとお願いされました。」
「マジか…」
実は、ウィラードと模擬戦をたくさんしていたら、試しにセレナと模擬戦をしたんだ。すると、セレナはルナと戦った時は手加減をしていたらしく、俺が第二形態変化をしても負けた。実はセレナも第二形態変化が出来たらしく、今まで使用する機会がなかったようで、誰も知らなかったらしい。セレナの第二形態変化はセレナが射った矢が追尾するようになり、全てにおいて性能が倍近くまで向上する物で、逃げても逃げても、ついて来て、さらに射程も長くなっていて、威力も上がってるため、防御が出来ないので、攻撃するしかないのだ。しかし、闇属性に対する防御が固過ぎて、突破出来なかった。それで魔力強化で攻撃するしかなくなり、攻撃しようとしたらバインドされて、終わった。それから、何回も戦ってるが、一回も勝てないのだ。それから、セレナには頭が上がらなくなり、俺のブレーキ役になった。
「これから5年間、お願いしますね。」
「あ、ああ…」
それからテストを受けに行った。ウィラードとセレナとは教室が違く、途中で別れた。そして、ルナと一緒に教室に行った。
「まさか、セレナ様が受けるとは思いませんでした。」
「ああ…」
「でも、これで兄様は完全に見張られますね。」
「そうだな。」
「とりあえず、テストが終わってから考えましょう。」
席に着くと全員が真面目に参考書などを読んでいた。俺はノートを一冊だけ、持ってきた。これはアイリスからもらったノートの一冊だ。とりあえず、アイリスからもらったノートは全部、暗記した。それでテストは余裕で受かると言われ、死ぬ気で覚えた。アイリスのノートは読みやすく、内容がわかりやすいのだ。だから意外にすぐに覚えられた。だから、学園で使ったノートは全てくれると約束した。これで、そのノートを覚えれば、学園にいる間はなんとかなるだろう。
すると、試験官が入ってきた。
「これからテストを始める。まずは歴史からだ。」
テストは魔法学と歴史と実技のみだ。魔法学と実技は得意なので、歴史さえなんとかなれば、受かるだろう。全てはアイリスのノートにかかってる。テストが配られた。
「それではテスト時間は一時間、はじめ。」
一時間後
「兄様、歴史はどうでしたか?」
「出来たぞ。アイリスさんのノートは最強だな。」
「そうですか…まだ、テストはあるので、頑張りましょう。」
「ああ…」
それから、次のテストに備えた。