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周りから火の一族と呼ばれる貴族ブレイクス家に双子の兄妹が生まれた。


双子の兄は黄昏色の髪をして、双子の妹は真紅の髪をしていた。双子の兄の名前はウラド、双子の妹の名前はミリー。


6歳では、全ての子供が精霊と契約する儀式がある。そこで双子の妹ミリーは火の精霊と契約したが、双子の兄ウラドは闇の精霊と契約した。

生まれてからずっと、現当主の祖父や分家の奴らに髪の色で馬鹿にされていた。そして、儀式の後、さらに明確になった。


しかし、それでも、両親と双子の妹のミリー、二つ年下の弟のイクスは普通に接してくれた。ブレイクス家は火に誇りを持つので、闇の精霊と契約したウラドはさらに嫌悪されたのだ。両親は祖父や分家の奴らにウラドを家から追い出せと言われたが、頑なに反対した。


12歳の頃


「まだ、お前いるのか…」


分家の奴らに今日も絡まれた。話しかけて来たのは分家当主の嫡男クレイだ。俺と同い年だ。年齢的にみれば、火属性の魔法師としてはかなりの腕だが、俺から見るとただの雑魚にしか見えない。


魔法の属性は火、土、水、氷、風、雷、闇、光、無だ。あと、稀に固有属性を持つ奴がいる。無属性は魔力を持っていれば、誰でも使用可能だ。それ以外は精霊と契約することで使用できる。


闇属性は無、光を除いて、全ての属性に対して相性が良い。ただ、光に対しては相性が最悪だ。術師に圧倒的な差がなければ、勝てない程だ。


他の属性の相性は火と土は風と雷に良く、風と雷は水と氷に良く、水と氷は火と土に良いと言われている。光が闇に対して程ではないが、多少有利だ。光は闇に対しては良いが、他の属性に対しては微妙だ。しかし、光属性は治癒が使えるので、重宝される。


「まぁな。」


(こいつらは何回もボコボコにされても懲りないな。)


『それ程、馬鹿なんでしょ。』


今、話しかけたのは俺の精霊メネシスだ。見た目は綺麗な吸血鬼だが、やることはエゲツない。闇属性でかなり、上位にくる精霊らしい。本人からの情報だから、信用はできない。


ウラドはこの家では落ちこぼれ扱いだが、闇の魔法師としてはかなり、優秀だ。分家の大人でも返り討ちにする程だ。


「火を使えない癖にここにいるな。ブレイクス家に迷惑だ。」


妹のミリーは火の魔法師として、優秀だ。一時期、次期当主と言われていたが、弟のイクスが生まれてから無くなった。弟のイクスも火の精霊と契約して、火の魔法師として育っている。


「意見を言うならせめて、俺に勝ってから言え。」


「くっ」


(なんで、毎回毎回、絡んで来るんだ…)


『暇なんじゃない?』


(暇つぶしで相手をしている俺の身にもなれよ…)


『本当に大変ね。』


(まるで、他人事だな。)


『だって、他人事だもの。』


こうして、精霊と話している間もクレイは一方的に話している。正直、何も聞いていないから問題はないが…


「おい!聞いているのか⁉︎」


「あっ、すまん。別のことを考えてた。」


「貴様〜」


クレイは苦虫を噛み締めた顔をしている。


「話は終わりか?終わりならじゃあな。」


「人を馬鹿にするな!ファイアーランス!!!」


クレイは詠唱破棄で発動した。本来、魔法の前に詠唱をすることで、威力を上げ、魔力消費量を減らすが、詠唱破棄は多少、威力を下げ、魔力消費量を増やすが発動の早さが全然違う。さらに発動の早さを上げるのに無詠唱という技術がある。


「ダークフレア」


紫炎がウラドの手から出て来てしまいファイアーランスを飲み込んだ。


「これで、終わりか?」


「くっ」


紫炎はウラドの周りを動いている。ウラドとクレイでは魔法師としての格が違うのだ。


「じゃあな。」


「待て!!!」


後ろで何か、言ってるが無視して歩いた。


(弱い癖に絡んで来るなよ…)


『本当にね。』


(これから母様と父様に呼ばれてるんだよな。)


『何かやったの?』


(いや、特に何もしてないはずだ。やったといっても、裏山を多少、消し飛ばしたくらいだ。)


『絶対にそれでしょ…』


(あの二人がそんなんで怒らないだろ。)


『それもそうね。』


二人でなんで、呼ばれるのかを考えながら、両親の元へ向かった。



コンコン


「ウラドです。」


「入っていいぞ。」


「失礼します。」


部屋に入ると両親がイチャイチャしていた。この二人は暇さえあれば、こうしている。今、母上は身籠っている。これで四人目だ。随分とお盛んだ、と思う。


「どうして、呼ばれたんでしょうか?」


「お前、裏山を消し飛ばしただろう?」


「まぁ…はい。」


「一応、注意をしておこうと思ってな。」


「はぁ…」


注意といっても既に注意すると言った後ではどうしようもない気がするんだが…


「本当の用事はなんですか?」


「お前は本当に鋭いな…」


「いえ。」


「俺から説明するより、クレアから説明をした方が良いな。」


クレアとは俺の母上のことだ。父上はクラウンだ。母上は火の魔法師としてはこの国で一番と言われている。この家にいる誰よりも強いのだ。だから、誰も母上に逆らえないのだ。この家は実力主義な為、嫁入りだが、母上が一番上なのだ。


「そうね。クラウンと話したんだけど…あなたには私の実家に行ってもらうわ。」


「なっ⁉︎どういうことですか⁉︎」


「ちゃんと説明をするから落ち着いて。」


これまで、周りからどんなに言われても、反対したきた両親に実家に行けなんて言われたら、落ち着いてはいられない。


「私の実家って、ニュクシオン家なのよ。」


「はっ?」


ニュクシオン家は火の名門と言われるブレイクス家と同じ、八家と言われている。八家とは無属性を除く、それぞれの属性の優秀な家に送られる称号だ。ウラノス家は光、ニュクシオン家は闇、ブレイクス家は火、ガイアス家は土、ミュートス家は水、メビウス家は氷、ライザー家は風、メゼリウス家は雷、たまに、世代で八家から外れることもある属性の家もあるが、ほとんど変わることがない。

変わる時にはその属性以外の当主が集まり、会議を開き、多数決で決める。


その中でニュクシオン家は一度も変わったことがない超名門だ。一度も変わったことがないのは他にウラノス家とブレイクス家のみだ。ウラノス家は王家としても活躍しているので、変わることがない。


しかし、なぜ、火の魔法師の母上がニュクシオン家出身なのかが、理解不能だ。


「実は私の両親って闇属性だったんだけど、なぜか、私は火属性だったのよ。それでも、こことは違って周りの人はよくしてくれたけどね。」


「はぁ…」


(俺の立場と母上の立場が同じだから優しくしてくれたのか。)


「それでね。私達で話し合って決めたんだけどね。あなたがこんな家にいたら、あなたの才能が潰れてしまうと思ったのよ。私にも勝つことが可能な腕を持ってるのにそれを失うのは惜しいでしょ?」


過去に母上と何度か戦ったことがあるが、良い勝負をしていたと思う。属性で有利だっただけのような気がするが…


「この前、実家に帰った時に呟いたら、従姉妹がウチに養子にくれないか?って言ったの。あっ、私の従姉妹が今の当主ね。」


これには驚いた。従姉妹が当主ということは母上はかなり、良い血筋だったらしい。


「だから、ウラドにはニュクシオン家に行ってもらおうと思ったのよ。別れるのはかなり、寂しいけど、あなたのことを思うとここにいるよりも幸せだと思って…どうかな?」


(メネシス、両親は俺のことを思って決めたんだよな。)


『話を聞いている限り、それしかないわね。それにあなたの両親はあなたのことが嫌いで提案するわけがないでしょ?』


(そうだな…)


今までどんな時も助けてくれた両親を思うと、ものすごく感謝している。


「俺はそこに行った方が、幸せですか?」


「ええ。」


「なら、俺は行きます。」


「そう…私が提案したけど、寂しいわね。」


「そうですね。」


「じゃあ、今日のウチに荷物を纏めなさい。明日、出発してもらうから。荷物を纏め終わったら、ここに来なさい。最後の夜に家族で話をしましょう?」


「わかりました。」


そう言って、部屋を出た。そして自室に荷物を纏めに行った。自室で荷物を纏めていると突然、部屋が開いた。


「ウラド、私と勝負しなさい!!!」


妹のミリーだ。真紅の長い髪に真紅の目で少し、キッとした形をしている。初対面の相手はだいたい、性格がキツそうなイメージを抱くが、実際に話してみると明るい子で性格も良い。綺麗というより可愛いの方が言い方が合っているだろう。将来はどうなるかはわからないが…


ミリーは俺に今日まで一度も勝ったことがないので、毎日のように試合を申し込んで来る。


「すまん。やることがあるから無理だ。」


「そう…なんで荷物を纏めているの?」


「あとで、父上と母上から話があると思うが、俺はニュクシオン家の養子になることになった。」


「えっ?」


突然のことで理解が出来ていないようだ。


「どういうこと?」


「明日、この家を出ることになった。」


「なんでよ⁉︎」


「母上が俺のことを考えて、提案してくれたんだ。母上の実家がニュクシオン家みたいでな。行ってみるか?と言われたんだ。」


「実家がニュクシオン家⁉︎」


ミリーも知らなかったようだ。


「ああ。」


「それでウラドが養子に行くことになったの⁉︎」


「そうだ。最後は自分の意思で決めたんだがな。」


「嫌よ!!!」


「嫌って…」


「勝ち逃げなんて許さないわ!!!」


この妹はかなり不器用だから、正直に話せないのだ。家族はよく、そのことをわかってるから本当は何がいいたいのか、わかるのだ。


「お前も王立魔法学校に通うつもりだろ?」


「当たり前よ!」


王立魔法学校とは13歳になった者が受けることが可能な魔法学校だ。たまに、飛び級する者もいるが、少数だ。学校には貴族の者がかなり、入学する。そこは貴族の繋がりを作る為の場所でもあるのだ。


「なら、俺も学校に行くつもりだからそこで続きをやってやるよ。」


「そういうことじゃなくて。」


「わかってるから。お前の言いたいことは…」


「うっ…また、子供扱いする。」


目に涙を貯めながら、俯く妹の頭を撫でてやった。


「これでもお前の兄だからな。」


「ウラド〜」


別れが寂しいようで、泣き始めてしまった。


「泣くなよ…」


「グスッ…グスッ…」


ミリーはしばらく、ウラドの腕の中で泣いていた。


「イクスには言ったの?」


「いや、まだだ。」


「イクスも悲しむよ?」


「だろうな。」


「荷物を纏めるのを手伝うよ。」


「助かる。」


二人は昔のことなどを話しながら荷物を纏めて、それから家族のいる部屋に向かった。


結局、そこで次の日の朝まで家族で話していた。


(眠い…)


『そりゃ、あんだけ騒げばね。』


ほぼ完徹をした為、体が重い。イクスも俺が出て行くと言うと泣まくり、大変だった。


「これがニュクシオン家の地図ね。ここから急げば、15分くらいで着くから。」


「わかりました。」


「元気でね。」


母上は俺のことを抱きしめた。母上とはこれが最後かもしれないのだ。母上はなかなか、家から出れないので、会うことは比較的に難しいのだ。


「はい。」


「あと、寂しくなったら意地でも会いに行くから。」


「そ、そうですか…」


この人は本当にやりそうだから怖い。


「お前の成長を楽しみにしている。」


父上から撫でられた。父上は王宮勤めなので、俺が王宮に勤めたら必然的に会うことになるだろう。


「ウラド…」


「来年に会おう。その時までに強くなってろよ。」


「うん!目を瞑っても勝てるくらい強くなるんだから!!!」


「そうか…」


ミリーは二人でいる時に散々泣きまくった為、今は元気だ。


「ウラド兄様…」


イクスだ。見た目は少女にしか見えないが、男だ。いわゆる、ショタというやつだ。髪の毛と瞳の色は真紅だ。髪の長さは肩くらいまで伸ばしている。本人はもう少し、切りたいようだが、母上が切らせてくれないらしい。明らかに狙ってるとしか、思えない。


「元気でな。お前と確実に会えるのは3年後だな。それまでに男らしくなれよ。」


「はい。」


「では、行って来ます。」


「ええ…気をつけてね。」


「最後に一言良いですか?」


「ええ。」


「お世話になりました!!!今日までいろんなことで迷惑をかけましたが、その度に助けてくださってありがとうございました!この恩、忘れません!!!」


頭を下げてお礼を言った。この時、初めて両親に真剣にお礼を言った気がする。


「良いのよ。私達は家族なんだから…」


「そうだぞ。あっちでも元気でな。」


この時、初めて両親が泣いた。


「もし、母上が外に出れなくても、ブレイクス家の中でも俺の名前を聞くくらい有名になります。」


「そう…楽しみにしてるわね。約束よ?」


「はい。」


そこでニュクシオン家に向かった。後ろを向くと家族が手を振っていた。何度も何度も…


俺は誰にもバレないように涙を流した。

この作品は周りの作品では主人公が家族に捨てられてから始まる物語が多いので、逆に愛情が与えられて育った場合の話を書いてみました。

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