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紫水晶の回帰  作者: 秋雨
赤の彼方と金の此方
93/94

気合い入れなきゃ!

2年放置やつ…_(:3 」∠)_

ちょこちょこ更新していきたい(願望)


背徳的且つ淫靡(いんび)な午前、では済まされず、結局伊織が昼食を食べたのはいつもであればお茶と一緒におやつを食べている時間だった。

当然の事ながら、ギルベルトにも伊織の侍女の3人にも何をしていたかはバレているし、着替えやお風呂の用意などもしっかり準備されていた。伊織は居た堪れない思いをしたが、元はと言えば半分は自分が悪い為、ヴィルフリートに文句を言う事も出来ない。

しかも現在進行形で皇帝陛下(ヴィルフリート)に手ずから食事を食べさせて貰っているので、文句を言うなど以ての外だ。

伊織は自分で食べると言ったのだが、ヴィルフリートが偶にはいいだろうと食器を渡してくれなかったことが原因ではある。


「ヴィルさん、もうお腹いっぱい。ごちそうさま。」


「そうか。では残りは余が頂こう。」


伊織が限界を訴えてから、ものの数分で全ての料理が綺麗に食べあげられる。ヴィルフリートも伊織も未だベッドの上にいる為、空いた食器はヴィルフリートがキャスター付のテーブル(ごと)ベッドの脇に押しやった。

食事も終わり、満腹感と疲労感に(さいな)まれ、触れ合ったところから伝わるヴィルフリートの体温も相俟って、伊織は次第に瞼が重くなった。


「…少し、休むか。」


「ん。…僕が起きるまで、いて…くれる?」


「…そうだな、怠惰に過ごす日があってもよかろう。だが、鍛錬はせねばな。しっかり体力を付けてもらわねば、余としては少々物足りん。」


「…ウソ…」


「嘘ではないぞ。其方が良いと申すなら、幾らでも。…しかし、今は厳しいか。」


小さくフッと笑を零し、言い終わるやいなや体を後ろに倒したヴィルフリートに、体重を預けていた伊織はそのまま倒れる。部屋の電気が消されると、元々カーテンが閉まっていたこともあり、部屋は薄暗くなった。


「余としては…鍛錬の代わりにもう一度、でも構わぬが。」


「…えっち。」


伊織は薄闇の中で輝くヴィルフリートの紫の瞳に魅入られながら、不埒な動きをする手を頬を染めつつ握った。


「今はやめておこう。…安心して眠るがよい。」


「うん…少しだけ、おやすみなさい…」


元より力が入ってなかった手から、ヴィルフリートの手がするりと抜け出し、腹の辺りにあった上掛けを伊織の首元まで引き上げる。伊織はヴィルフリートの胸元に擦り寄って目を閉じた。



----------------------------------------------------------------




「……ォリ……ィオリ……イオリ。そろそろ目覚めの時間だ。」


「ぅ…ん……ぁぃ、ヴィルさん…おはょ…」


眠る前の体制のままのヴィルフリートに声を掛けられ、伊織は眠気が抜けきらないまま手をついて体を支え、伸び上がってヴィルフリートの唇に軽い音を立てて口付ける。


「…なかなか()いことをする。」


すかさず後頭部を大きな手で固定され、離れる前にもう一度しっかりと唇が合わさった。伊織は夢現(ゆめうつつ)のまま施される口付けを享受する。


(…キス、好き…)


「…コホン。」


伊織が強請るように薄く口を開いたタイミングで故意に立てられた咳払いが聞え、ヴィルフリートの唇が伊織の下唇を軽く吸いながら離れた。


「…ギルベルト。」


「仲が良いのは大変宜しいのですが、予定が詰まっておいでですので。誠に僭越ながら介入させて頂きました。」


ベッドの脇には澄まし顔のギルベルトとアニエッタ、薄笑いのフランツィスカが並んでおり、伊織は状況を把握すると共に顔を真っ赤に染めてヴィルフリートの首元に縋り付いて顔を隠す。ヴィルフリートが伊織の背中を支えながら体を起こし、ベッド脇に立った3人を見て溜め息を吐いた。


「…わかっておる。…が、多少の誤差だろう。」


「とんでも御座いません。あのままでは予定は全て白紙になりかねます。」


「そう差し迫ったものもなかったと記憶しているが。」


「イオリ様の体力増強と各種レッスンは差し迫ったものにございます。それに加えて夕食も召し上がって頂かねばなりません。」


「…致し方ない。イオリ、準備致せ。」


「う〜…、はい…。」


「許せ。」


背中を優しく撫でられ、渋々ヴィルフリートから体を離し、3人には視線を向けずにベッドから降りる。頬の赤みはまだ引いておらず、のろのろとした動きに伊織の心情がよく表れていた。


(うわ~ん!!…見られた!見られた!!見られちゃったよ~~~!!!)


内心かなりのパニック状態になりながらも先行するアニエッタの後を着いていく。行先は伊織の自室で、先程の会話からこれから体力作りに励むことになるのだろう。正直、自室のベッドの中に引きこもりたい気持ちは山々だが、そうはギルベルトが許さないとは伊織も良くわかっている。

ヴィルフリートの部屋から伊織の部屋までそこまで離れてもいない為、早々部屋に着いてしまった。


「いやーん。イオリ様って意外と大胆ですね~」


部屋の中に入ると早速フランツィスカがからかいの言葉を発する。

確かにヴィルフリートと2人きりだと思い込み完全に甘えたモードになってた伊織にも責任はあるが、今回ばかりは知らないふりをしていて欲しかった。


「…フランなんて、ヴォルフガングさんに良いようにされちゃえ。」


「い、イイイイオリサマ?ナンノコトデスカネー?」


伊織が意趣返しと腹癒(はらい)せも含めてぽそりと言った言葉に、フランツィスカが目に見えて狼狽えた。フランツィスカの様子を見る限り、ヴォルフガングは中々肉食系男子だったらしい。普段はあまり慌てるところを見せないフランツィスカが赤くなったり青くなったりする様子を見て、伊織は溜飲を下げた。


「はい、そこまでですわ。イオリ様もご準備をなさいませんと。」


静かに見守っていたアニエッタが伊織の気が少し晴れたところを見計らって、準備をするように促す。あまり待たせるとギルベルトに小言を言われてしまう為、伊織も文句を言わずに衣裳部屋に入った。


「イオリ様。ひと月は柔軟運動と筋力増強、それに走り込みらしいですわ?」


アニエッタが伊織の昼寝用のドレスを脱がせながら、運動の内容を教えてくれた。


「…結局基礎体力が全然足りないってこと?」


「そういう事になりますわね。」


「大丈夫ですわ、イオリ様。ひと月も訓練すればダンスくらい軽く(こな)せる様になりますわ。」


「…そうだといいんだけど…。」


アニエッタとフランツィスカの連携で伊織の着替えはほとんど終わり、椅子に座るように促されて髪を纏められる。鏡に映る伊織は不安気に溜め息を吐いた。

こちらの世界(異世界)に来てからめっきり運動量も減って体力も落ちに落ちている。以前は通学に自転車を使っていたし、体育の授業で週に3時間は運動する時間があった。インドアといっても最低限の運動量があった為、ここまで体力が落ちることがなかった。

その上、身体が女になったことも関係しているかもしれない。こちらに来た当初はバランスが変わったこともあるのか頻繁に躓いたりよろけたりしたものだ。見兼ねたヴィルフリートが抱き上げるようになったのもその所為で、一概に全てヴィルフリートの所為という訳でもなかったりする。

つい最近まで、それこそ体の弱い深窓の令嬢のような生活をしていた訳で。


(誰がどう見ても、納得の結果だよねぇ…。)


鏡に映った自分を見て、伊織はもう一度深い溜め息を吐いた。

その間に、伊織の腰まである長い髪は編み込まれ、結い上げられてすっきりと纏められた。これなら多少激しい運動をしても動きやすいだろう。


「結局、何処に行っても努力はしなきゃだよねぇ。」


衣裳部屋の扉が開くのを鏡越しに見ながらポツリと呟く。ヴィルフリートのようなハイスペックな男性を好きになってしまったのが原因なのか、ヴィルフリートが地位のある男性だったことが原因なのか。


(今はやるべきことを着実にしないと。…よし、がんばろ。)


気合いを入れるために頬を叩いた伊織に、鏡に映るヴィルフリートの眉が跳ね上がった。


「一体どうした?」


「んー?気合い入れただけだよ。」


「…其方(イオリ)を傷付けるものは、たとえ其方(イオリ)でも許さぬ。心せよ。」


後ろからひんやりとした大きな手に頬を包まれ、鏡越しに苦笑いする。ヴィルフリートの瞳が赤く染まっている事から、今ヴィルフリートの手が冷たいのは魔法を使用したらしい。


「大袈裟だよ。少し叩いたくらいじゃ何ともならないから大丈夫。」


頬の手を外してもらい立ち上がる。自分の為にも、ヴィルフリートの為にも、侍女や護衛騎士の為にも今努力しなければならない。


「いこ、ヴィルさん。」


「…無理はせぬようにな。」


訝し気なヴィルフリートにクスクスと笑みを零し、開らかれた扉から修練場に向かって歩き始める。

後ろから少し遅れて歩き出したヴィルフリートが、10歩も歩かない内に伊織の隣に並ぶ。


「見ててね、ヴィルさん。2か月後には完璧に仕上げて、誰にも文句は言わせないからね!」


「ほう…?」


「その為には、ヴィルさんにもいっぱい協力してもらうから。」


伊織は隣を並ぶヴィルフリートの腕に自分の腕を絡ませて、見上げた先のヴィルフリートに自然と上目遣いになりながら挑発的に笑った。伊織の表情を見てヴィルフリートが目を細める。


「其方の手並み、拝見させてもらおう。」


ヴィルフリートが挑発的な笑みを返し、その表情に伊織が赤面した。


「…ずるい。」


ヴィルフリートの事を見ていられなくなり、絡ませた腕に頬を寄せて呟く。小さな声はヴィルフリートには聞こえていた様で、空いた手で伊織の頭が撫でられた。


「…甘い…。」


完全に2人の世界に入っている伊織とヴィルフリートに、少し離れた後ろを追従していたリタが誰に言うでもなく呟く。ヴィルフリートと伊織に見えない位置にいたものは、激しく同意の頷きをしていた。


「…私も、彼氏欲しい…。」




久しぶりに書いたら砂糖吐きかけました。

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