見つけてくれて、
伏線ももう少なくなってまいりましたー(゜-゜)
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翌日、着替えと朝食を済ませ、ヴィルフリートが10刻の少し前まで執務をするというので伊織は久しぶりに中庭を散歩することにした。
どれくらい久しぶりかというと、辺境の旧リーネル領に行く以前なので伊織の運動不足は推して知れるだろう。ちなみに現在旧リーネル領は表向きの責任者を押し付けられたバルトロメウスが仮領主をしているらしく、領地に行けないバルトロメウスは代官を立てて任せきりになっているらしい。
領民の搾取が著しかったこともあり、現在は税金などは免除されて貧困街などは白騎士と緋騎士、蒼騎士が合同で大掃除がなされたらしい。その際逃げ出そうとした犯罪者や違法移民で黄騎士まで大忙しだったと言えば、どのくらいリーネル領が犯罪を放置していたかがわかる。
黄騎士は国境警備なのであまり関係はないが、リーネル領全体で白騎士6部隊60名、緋騎士12部隊120名、蒼騎士12部隊120名、黄騎士15部隊150名の全450名いるはずの騎士はバルトロメウスに実権が移った時点では397名になっていた。リーネル領にいた黄騎士を除いた騎士の全体の200名は魔物の掃討に追われ、残りの約50名は買収され、残りの騎士は証拠隠滅の為に消されたと推測される。そのいずれも魔物掃討時の事故や犯罪者捕縛中の事故として処理されているが、騎士になるものの多くは腕に覚えのある冒険者上りも多く、出身も地方の農家や商家の次男以降のものが多い。貴族出身の子弟も中にはいたようだ。
買収されていた騎士は懲戒免職処分をされた上で、5年間の強制労働の刑に処されて各地の危険地帯で魔物の掃討を行っている。5年後にはさぞ腕が立つようになっているだろう。
白騎士は治安維持が主な仕事だった為、買収されていたり生存していなかったりと随分減ったらしい。クラウディアの父である白騎士団団長は事後処理で奔走していると、クラウディアは溜息を吐いた。
肝心のリーネル家の一同だが、伊織には詳しく教えて貰えなかった。ただ、娘のエディト・リーネルは獄中で亡くなったそうだ。歩きながら現在のリーネル領に関して教えてくれたフランツィスカだが、リーネル一家の事はエディトが亡くなった以外は言葉を濁した。
バルトロメウスは伯爵位を賜っているが領地を持たないので、もしかするとこのまま領地を押し付けられる可能性も無きにしも非ずと言った所らしい。コルネリウスは以前の大粛清後、爵位を賜った時に空いた領地を賜っているそうだ。
中庭から内城の裏にも回ることができ、内城の裏は断崖絶壁になっていて、眼下にはアルジェ湖が広がっている。実はヴェルクランは湖と川に囲まれた自然要塞になっていて、過去において難攻不落を誇っている。川の内側に農園や牧場もある為、兵糧攻めも困難であると言わざるを得ない。伊織が以前流された川もアルジェ湖から流れる川の支流の一つだ。
薔薇園を抜けて城の裏に回り、小さな森を抜けると開けた場所に真っ白な石が2つ並んで見えた。見晴らしのいい其処はアルジェ湖が一望できる。
「ここ…これは、墓石…?」
(僕が小さい時に、初代皇帝と出逢った…)
2つ並んだ墓碑はすでに風化して文字などは削れてしまっているが、墓碑の周りには小さくて可愛らしい花が群生して生えていて、墓碑自体もつい最近磨かれたのか綺麗だ。
「…あぁ、これが伝承の空の墓標ですのね…」
アニエッタが小さな声で呟いた言葉に伊織は振り返る。
「伝承って?」
「そうですわね…建国の伝承は覚えていますでしょうか?」
「うん。王女の体は…あ、そっか…」
「ええ、王女の体は全て初代皇帝と神によって余すことなくこの国の礎となったのですわ。」
「…そして、初代皇帝の体も…」
「え?…いいえ?初代皇帝については伝承には書かれておりませんわ。」
「そっか、書かれてないんだ…」
アニエッタの不思議そうな声に伊織は聞こえないような声で小さく呟き、しゃがみ込んで2つ並ぶ墓碑の片方に指を這わす。そのまま両膝をついて手を組んで祈りを捧げた。
神が伊織に見せた記憶には初代皇帝は心臓を箱に封じられた後、血も骨も王女と同じように、血は泉に、骨は城の礎に、残った全ては灰になったはずだ。
(…そうして欲しいって、初代皇帝が神に頼んだから…)
「…イオリ様、そろそろ戻りませんとお時間が…」
祈る伊織にフランツィスカが遠慮がちに声を掛けてくる。ここに来るまでに思ったより時間がかかった為、戻る時間を考えたら結構ギリギリかもしれない。伊織は立ち上がって軽く膝を払い、アルジェ湖からの眺めを少しだけ眺めて振り返った。
「…ヴィルさん…」
伊織が驚いて名前を呼ぶと、ヴィルフリートは目を細めて微笑む。
「これで…いつぞやの約束は、果たしたか?」
「…うんっ!」
泣きそうになるのを無理やり笑顔に変えてヴィルフリートに向かって駆け寄り、勢いのまま抱き付く。ヴィルフリートは抱き付いてきた伊織をしっかりと抱き留める。あの時と同じ、2人を包むように柔らかい風が吹き、伊織の長い髪を靡かせた。
「でも、どうしてここにいるってわかったの?」
「執務室から見えたのでな。」
ヴィルフリートが伊織を離し、後ろを振り返って見上げる。執務室はちょうどここから真正面らしく、ヴィルフリートの目線を辿るとギルベルトが窓際に立っていた。伊織と目が合うと少しだけ頭を下げる。
「さて、戻らねば。」
ヴィルフリートに促されて小さな森に向かって歩く。ふと後ろ髪を引かれて振り返ると、墓碑の前で抱き合っている男女が見えた。それは一瞬の事で、瞬きと同時に消えてしまったけれど、伊織が見たのは確かに王女と初代皇帝だった。
__約束は、果たされた。
__ありがとう。イオリ…私の愛しい子。
(あぁ、もう…逢えないんだね。イレーネ…)
風が木の葉を揺らす騒めきと共に声が聞こえた気がして、滲む涙が零れない様にぎゅっと目を閉じた。少し先を行くヴィルフリートを小走りで追いかけ、腕に抱き付いてそのまま歩き出す。ヴィルフリートの問いかけるような視線を感じて小さく首を振った。
「…ヴィルさん、見つけてくれて…ありがとう。」
(約束、守ってくれてありがとう。)
伊織の囁きはヴィルフリートに確かに届いた様で、頭上からかすかに笑う音が漏れた。
こうしているだけで感じる幸せに、もう一度ヴィルフリートの腕に抱き付く手に力を込める。伊織がこの世界に来た時に感じた涼やかな風は、もう熱を帯びた夏の風に変わっていた。
ヴィルフリートの執務室に戻ったのは、約束の時間の10分前だった。急いで戻ってきたのだが、薔薇園を抜ける前に伊織はヴィルフリートに遅いと抱き上げられてしまった。
時間まで待っていると定刻通り執務室にノックの音が響く。ヴィルフリートが短く返事を返すと、ギルベルトが先導してグスタフと白髪混じりの亜麻色の髪に黄緑色の瞳の老齢に差し掛かる年齢の男性を連れて入ってきた。この男性がベーレンドルフ侯爵なのだろう。ヴィルフリートに向かって礼を取り、ヴィルフリートの隣に座る伊織を見てもう一度礼を取った。
「陛下。ゴットホルト・ベーレンドルフ、参上仕りました。」
「よく来たな。掛けるが良い。」
ベーレンドルフ侯爵はソファに座る前に再度礼を取り、そのままヴィルフリートの前に腰を掛ける。グスタフは礼を取った後そのままソファの後ろの壁際に立った。
「さて、本日呼び出した要件だが。」
「こちらを。」
「…拝見させて頂いても?」
「構わん。」
ギルベルトが持ってきた書類をベーレンドルフ侯爵の正面のテーブルの上に置く。ベーレンドルフ侯爵は書類をちらりと見て、ヴィルフリートに許可を取る。ヴィルフリートは短く答えた。
初めは何気なく書類を見ていたベーレンドルフ侯爵だが、書類を見進めるうちに怪訝気な表情を浮かべた。
「陛下、これは何の分析結果でございましょうか?」
「ときにベーレンドルフ候、其方の子息、アルノーが亡くなる前に何かしら言ってはいなかったか?」
「…アルノーが、ですか…?」
問い掛けには答えてもらえず、更に投げかけられた意味深な質問にベーレンドルフ侯爵は困惑した。ヴィルフリートの顔からは何かを読み取ることはできない。伊織は固唾を飲んで見守っていて緊張しているのがありありと判る分、余計に意味が解らなかった。
「…確か、護衛の任務に赴く前に聞いて欲しいことがあると言っておりましたが…ですが、任務の前にはお互いに時間が合わず…」
「なるほど。」
「あの…?それが何か…、確かに心残りになってはおりますが…」
ヴィルフリートはまたしても質問に答えず、今度はソファの後ろに立つグスタフに視線を向けた。放置される形になったベーレンドルフ侯爵は困惑したまま、手元の書類を再び見る。
「…グスタフ。パトラ、といったか。父上の侍女をしていたと聞いたが?」
「…ええ。確かに侍女をしておりました。もう陛下は、解っておいでなのでしょう?…下女をしていたパトラをとある方が見初めて先代陛下に彼女の事を頼んだのです。そして、パトラを養女に入れる家を探しておりました。」
「その、頼んだ相手も知っているだろう?」
「…ベーレンドルフ侯爵家、嫡男のアルノー様でございます。」
会話を聞いたベーレンドルフ侯爵は驚愕に書類から顔を上げ、そのままグスタフを振り返る。グスタフは悲しそうに目を伏せ、ベーレンドルフ侯爵に向かって頭を下げた。
「…アルノー様が亡くなった後に、先代陛下に、口止めされていたのです。」
「他に思い当たる事は。」
「…パトラはアルノー様が亡くなってすぐ、城を去りました。…もう、アルノー様が亡くなってしまったので、養女に入る必要もないと。先代陛下は引き留めておいででしたが、やはり身分について陰で何かあったのでしょう。」
「…その娘は、何処にいるのでしょう?」
グスタフの話を静かに聞いていたベーレンドルフ侯爵が、ヴィルフリートを真っ直ぐに見据えて問い掛ける。ヴィルフリートは小さく溜息を吐くと静かに首を振った。
真相を聞いて伊織は切なくなって手を胸の前でぎゅっと握る。
「パトラは、3年前に既に亡くなっている。」
「そう、ですか…」
ベーレンドルフ侯爵は肩を落とし、深い溜息を吐いた。
ヴィルフリートがギルベルトに目線で指示を出し、ギルベルトは礼をして静かに部屋を出ていく。
「して、その書類についてだが。」
部屋にノックの音が響き、ヴィルフリートが入る様に声を掛ける。ギルベルトが扉を開けると、ニコラウスがウラを抱っこした状態で入ってきた。
「…ベーレンドルフ侯爵家は、断絶してはおらぬ。」
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沢山の方に読んでいただけたらな、と思っておりますので(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾




