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紫水晶の回帰  作者: 秋雨
赤の彼方と金の此方
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全員集合?あれ、1人足りない。

根掘り葉掘り聞かれて、頷いたり首を振ったりして何とかやり過ごそうとしてみたけれど、無駄だった様だ。結局際どいところまで聞かれて所々アニエッタに助けてもらったが、しっかり聞かれてしまった。

今ならヴィルフリートに朝言われた言葉がどういう事だったかハッキリと分かる。ヴィルフリートはこう言う事を予想していなかったとしても。


「それで、どうなんですの?」


「な、なななななんですかッ!見た事ないしッ!」


真っ赤になってどもりながら首をぶんぶん振る。レティツィアは残念そうにしているし、カルラとリタは完全に空気と同化している。フランツィスカとクラウディアは食い付きが凄いし、アニエッタは呆れかえっている様だ。

まだ聞きたそうにしているレティツィアから視線を逸らした。


「あら、イオリさん。とぼけるつもりですの?その反応は間違いなく見ましたわよね?」


「黙秘権を行使しますッ!」


伊織が口を両手で押さえて意思表示すると、レティツィアも渋々引き下がる。

そこにグスタフが来て頭を下げた。


「お楽しみのところ、申し訳御座いません。アロイジウス様がお帰りになりました。」


伊織はあからさまにホッとし、レティツィアやフランツィスカは心底残念そうに伊織を見ている。伊織はその視線に気が付かない振りをして、我先にと邸に向かって歩き出す。


(…どこから触るとか、大きさとか、聞かれても答えられないって…!)


質問の内容を思い出して赤くなる。こんな状態でヴィルフリートの顔がまともに見れる気がしない。

かといってこのまま伊織だけが戻らないのは不自然にもほどがあるし、ヴィルフリートとアロイジウスのチェスで伊織の事が決まるのだから、見ていないと何となく不安だ。

玄関から邸に入ると、そこには3人の子供と女性が立っていた。レティツィアが伊織の後から邸に入り、子供と女性に気が付いて声を掛ける。


「あら、モニカさん。それにフィリーネにハルトヴィンにフィリップ。皆来ていたのね。」


「お義母様。ご機嫌麗しゅう。ほら、みんな挨拶をしなさい?」


「お祖母様、ご機嫌麗しゅう。」


「こんにちわ。お変わりはないでしょうか?」


「ばぁば。フィリ来たの!」


「はい。いらっしゃい」


レティツィアは子供に向かって微笑み、伊織を振り返って手招きした。伊織がレティツィアの横に並ぶと、モニカと子供の前に伊織を押し出す。


「私の娘になりました、イオリさん。仲良くしてあげて下さいね。」


「イオリです。この邸にはあまり来ないと思いますが…」


「アロイジウスの妻、モニカです。この子がフィリーネ。この子はハルトヴィン。それからこの子がフィリップですわ。それにしても、貴方が噂の、陛下の寵姫ね!ふふふ、可愛らしい。」


モニカが子供を一人一人紹介してから、伊織を見て目を細める。

伊織はモニカの言葉に苦笑いする。噂はいったいどこまで広がっているのかはわからないが、少なくとももう帝都に住む殆どの人が知っているのだろう。

サロンから出てきたコルネリウスが、玄関ホールに立つ伊織やレティツィア達を見て部屋に入る様にと呼ぶ。それに従ってサロンに入ると、ヴィルフリートの視線がこちらに向く。

伊織は先程の事を思い出すが、平常心と自分に言い聞かせる。それでも頬が僅かに染まり、ヴィルフリートと目を合わせられない。


「イオリ、此方に来るのだ。」


ヴィルフリートに声を掛けられ、伊織はギクシャクしながらヴィルフリートの隣に座る。ヴィルフリートは訝しげに伊織を見てから、伊織の正面に座ったレティツィアをちらりと見た。レティツィアの顔には笑顔が浮かんでいて、ヴィルフリートの視線にわざとらしく首を傾げている。


「あまりイオリをからかわぬ様に。」


「心得ましたわ、陛下」


伊織の様子とレティツィアの態度で何かに気が付いたのか、ヴィルフリートがレティツィアに釘を指す。レティツィアはにっこり笑って頷く。

部屋には皇族が揃っていて、何となく自分は場違いな気がする。それ以上にカルステンは居心地悪いだろう。部屋の隅の方で空気になろうと努力している様だ。ウラは何の事か分かっていないのか、モニカに手招きされて子供達と遊んでいるが。

元々チェスは夜の予定だったので、予定通りにまだする気はない様だ。そんな事よりも、もしもウラが皇女だった場合の話し合いをするらしく、ますます自分は場違いだろう。


「まずは公表するか否かですかね。」


「公表すりゃいいんじゃねぇか?ヴィル坊も兄弟が出来て嬉しいだろ。」


「親子ほど年の差があるのにか?寝言は寝て言うんだな」


ニコラウスの言葉にヴィルフリートが呆れた様に返事を返す。

メインにしゃべっているのは男達で、伊織とレティツィアが同じ席に座っている意味はあまりなさそうだ。モニカや子供達はサロンの端の方で遊んでいるし、カルステンもそれを見ている為、何となくこのソファセットの周りだけ雰囲気が違う。


「だとしても、皇女であった場合の話はしておくべきでしょう。ウラの魔力測定もしなければいけませんし、公表するのならばそれ相応の教育が必要ですからね。」


「だが、ウラ自身が拒否した場合は今のままベルさんと一緒に暮らすんだろう?まだ本人に確認もしていない内から先走るのもどうかと思うが。」


コルネリウスが難しい顔をして言った言葉に、アロイジウスが苦笑いして首を振る。

難しい話は分からないので伊織は早くも飽きてブレスレットを弄ったり、ドレスの装飾を見たりしていた。

いつまでこの話をするのかは分からないが、子供達はアロイジウスに遊んで欲しそうにしていて、モニカも先程から宥めている。

ニコラウスもだらけ切ってレティツィアに怒られているし、真面目に話しているのはヴィルフリートとアロイジウス、コルネリウスだけだ。


「…埒が明かんな。この話は確定してからだ。」


ヴィルフリートが溜め息を吐いて話を切り上げ、アロイジウスに顎をしゃくって子供達を示す。アロイジウスは申し訳なさそうに立ち上がり、いそいそと子供達の方へ行く。

話は終わったので、今度は夕食までする事がなくなってしまった。ヴィルフリートはコルネリウス相手にチェスをするようで、コルネリウスが伊織の持って来たチェス盤をテーブルの上に置く。伊織はグスタフに伝言を頼み、アニエッタに手芸セットを持って来てもらう事にする。ニコラウスとレティツィアはアロイジウスと共に子供にデレデレになって部屋を出て行った。勿論カルステンも一緒に出ていく。


「子供達とどこにいったの?」


「子供部屋かな?特別に作らせた、玩具が置いてある広い部屋があるんだよ。」


「そうなんだ。…僕も行き「イオリはここにいるのだ。」


伊織がソロッと立ち上がろうとするとヴィルフリートに止められる。仕方ないのですごすごと引き下がり、腰を掛け直す。すぐにヴィルフリートの腕が伊織の腰に回り、伊織はヴィルフリートに凭れかかった。

アニエッタが持って来てくれた手芸セットで小さなあみぐるみを作る事にする。子供達にあげる様に4つ。

小さいものなら1時間と少しで作れるので、明日の朝までには十分作れるだろう。

ヴィルフリートとコルネリウスのチェスは初めはヴィルフリート優勢だったが、次第にコルネリウスもチェスを理解してきたのか、最後の方は引き分けに持ち込めるまでになっていた。

そうして夕食まで3時間ほど、各々好きな事をして過ごす。伊織の作っていたあみぐるみも2つと3分の1ほど作れた。

夕食の準備が出来たのか、グスタフが食堂に促す。夕食は昼食以上にボリュームが凄い。それに人数も多いので、広い食堂は随分にぎやかだ。

夕食が終わったらヴィルフリートとアロイジウスのチェスの勝負があるので、伊織はなんとなく食が進まない。とは言っても普段より少ないと言うだけで十分多かったのだが。

不安げにしている伊織に、ヴィルフリートが頭を優しくポンポンと叩く。


「余が負けるとでも、思うているのか?」





ヴィルフリートさんは歪まない(`・ω・´)キリッ


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