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紫水晶の回帰  作者: 秋雨
紫水晶の記憶
8/94

急転。

食事回(笑)

食事描写が長くなりすぎました、ごめんなさい ŧ‹”ŧ‹”ŧ‹”ŧ‹”(๑´ㅂ`๑)ŧ‹”ŧ‹”ŧ‹”ŧ‹”

「イオリ様、そろそろお時間ですわ。」


「あ、もうそんな時間なんだ。」


フランツィスカに声を掛けられて顔を上げ、時計を見ると15分前だった。長時間下を向いて作業していた所為で、肩が凝っている。手に持っていたハンカチをテーブルに置く。刺繍はもう殆ど完成していた。


「湯浴みの後にマッサージ致しましょう」


アニエッタが裁縫道具と完成間近のハンカチを片付け、微笑みながら言う。

アニエッタが言うには、日常的に魔法を使って氷を作ったり、水をお湯にしたりしているらしい。ちなみにマッサージする時も魔力で刺激して血行促進しているとか。回復魔法は使える人が少ないみたい。

伊織が頷いて笑い返すとフランツィスカが化粧道具を手に前に立つ。フランツィスカは化粧を直し、アニエッタは髪を結い直した。

準備が終わった直後にヴィルフリートが入ってきた。


「待たせたか。」


「ううん、図った様にぴったり。」


ヴィルフリートが今直してもらったばかりの髪に触れる。乱れない様にそっと触られ、くすぐったい気がして肩を竦める。

ヴィルフリートが手を差し出す。


()くぞ。」


差し出された手に手を重ねるとグッと引いて立たせてくれた。そのまま手を引かれてエスコートされる。


(流石…様になってるなぁ)


伊織は俯いて羞恥に頬を染めながら、そんな事を考えてヴィルフリートの横を歩いた。どういう顔をしているのか見たくなり、そろりと隣を見上げる。ヴィルフリートは無表情で前を見ていたが、伊織の視線に気が付いて少しだけ口角を上げた。

伊織は慌てて俯いた。先程よりも顔が熱い。


「イオリ、着いたが」


慌ててヴィルフリートの手を離してアニエッタに引いてもらった椅子に座る。

ヴィルフリートから押し殺した様な笑いが聞こえて、顔を上げられない。ヴィルフリートと顔を合わせる度に色んな意味でドキドキしてるかもしれない。

料理が運ばれてくるのが見えて、おいしそうな料理に目が奪われる。


「すごく美味しそう」


今まで恥ずかしくて俯いてた事も忘れて料理に釘付けになる。やっぱり自分はお手軽かもしれない、と思いながらも手を合わせた。


「いただきます。」


「イオリ、朝もやっていたが、それはなんなのだ」


「んーと、確か食材と作ってくれた人への感謝…だったかな。…昔、神様に御供えしていた物をもらう時に頭上に上げて、いただきますって言ってたんだって。それがそのまま、食事を出された時に食材と料理人への感謝の気持ちを伝える言葉になったみたい。」


「なるほど…奥が深いのだな。では、頂こう」


ヴィルフリートが手を合わせたのを見て、思わず口元を手で覆い吹き出して笑ってしまった。


「…うん、いただきます。」


(頂こう…ってヴィルさんらしいけど感謝にしては尊大だよね)


くすくすと笑いながら、カトラリーを手に持って目の前に置かれた料理を見る。

サラダとパン、スープと鶏(?)の腿肉のソテーに白身魚のカルパッチョみたいな物とラビオリっぽい食べ物には茶色いソースが絡められていた。

伊織には少し多いかもしれない。ヴィルフリートの方を見ると、伊織の4倍くらいの量の料理を食べている。伊織も料理を口に運ぶ。


「これ美味しい。…あ、このソース、醤油っぽい!」


「…イオリ、いつでも構わぬが記憶を視せて貰いたい」


「記憶?」


伊織が首を傾げて反芻すると、ヴィルフリートが頷いて口を開いた。


「魔法以外の技術があると言っていたであろう。“聞く”より“視る”方が早いからな。それに、そなたの好みの料理も再現出来るやもしれぬぞ。」


ヴィルフリートの言った料理と言う言葉に、伊織は思わず頷きそうになるが、先程見た夢のことを思い出し、顔色を変えてヴィルフリートを不安気に見た。


「…それって何でも視えちゃうの?」


「視えるが…魔道具に移し、記録してから視る。視られたくない物があるならその部分を消す事も可能だが…」


伊織が不安そうにしたからか、ヴィルフリートが真面目な顔で説明してくれる。それを聞いて伊織は少し落ち着いた。


「じゃあ、視てもいいけど可能なら機械とか料理だけにして欲しいなぁ。人との思い出や夢とかは恥ずかしいし…」


伊織は極力動揺を顔に出さない様に拗ねた様に口を尖らせた。内心ドキドキしながらヴィルフリートを見る。ヴィルフリートは鷹揚に頷いた。


「良かろう。そなたが良い時に言うがいい。」


「わかった。」


伊織が頷き返すのを見て、ヴィルフリートが食事を再開する。伊織も残りの料理を味わった。食べ終わってお腹をさすっていると、デザートが出された。

黄色と白と赤い果実のタルトの様で、シロップが塗られているのかツヤツヤとしている。


「美味しそう…だけどお腹が…!それに肥りそう…」


「イオリはもう少し肥った方が良いと思うが」


伊織の呟いた内容にヴィルフリートが応える。伊織は苦笑いしつつも、もったいないから、とタルトを口に運んだ。


「…!おいしいっ!」


タルト生地がサクッとしていて濃厚な2種類のクリームと果実の酸味の絶妙さに伊織はぺろりと平らげてしまった。

今度こそ隙間のなさそうなお腹の具合に、少し苦しそうに息を吐く。


「無理せずとも良かろうに。」


ヴィルフリートに呆れた様に言われて、しょんぼりと眉を下げる。


「おいしくって、つい…」


伊織のしょんぼりする顔を見て、ヴィルフリートが微笑した。


(…こんな風に笑うんだ)


笑ったところを初めて見て、ドギマギしながら微妙に視線を外す。どうやらヴィルフリートは自分が笑ったことに気が付いていないらしく、悠々と食後のお茶を飲んでいる。

伊織もドギマギする内心を隠してお茶に口を付ける。

食事を終えて、ヴィルフリートは立ち上がって伊織のところに寄り、頬を撫でる。


「余はもう少し執務の続きをする。そなたはもう休むが良い。」


「…うん。ヴィルさんも無理しないで休んでね。」


伊織の返事を聞いて、ヴィルフリートが頭をぽん、と軽く叩き、そのまま食堂を出て行った。伊織も残ったお茶を飲み干して、アニエッタの後に着いて部屋に戻った。




----------------------------------------------------------------



部屋に着いて腹ごなしに刺繍を完成させ、その後風呂に入った。もちろんアニエッタとフランツィスカによって全身ピカピカに磨かれ、入浴後にマッサージされ、長い髪を丁寧に乾かされて香油まで塗られる。

ベッドに入る頃にはぐったりとしていた。アニエッタとフランツィスカが天蓋の柱に留められた布を解く。ベッドが布で覆われて、布の向こうでアニエッタとフランツィスカが頭を下げた。


「それではおやすみなさいませ、イオリ様」


「おやすみなさい。」


2人が寝室から出て行く音が聞こえて、伊織は目を閉じる。だが、眠気はなかなか訪れず、時間が過ぎて行く。思い出すのは昼間見た夢。自分ではないが、確かに伊織が死んだ。

それから、家族の事…少し抜けた母に優しいけど伊織を娘の様に扱う父、伊織になんでもさせる所為で何も出来ない姉。

気が付けば涙が頬に伝って流れていた。


「イオリはよく泣く。」


背中から声を掛けられ、布が捲られてヴィルフリートが隔離された空間に入ってくる。伊織は掛けられた声に肩を震わせるが、振り返らずに口を覆って嗚咽を堪える。

ヴィルフリートはベッドに座って伊織の頭を撫でる。


「眠るまでここにいてやろう。安心して眠るが良い。…それとも添い寝が必要か?」


「…うん。」


からかうような言い方に、思わず返事をしてしまった。慌てて振り返って首を振る。


「今のなし!大丈夫。」


ヴィルフリートは即座に否定する伊織に眉を顰めた。


「添い寝が必要なのだろう?少し待っているが良い。」


そう言うと部屋から出て行き、少しして戻ってきた。どうやら着替えて来たらしい。

ヴィルフリートが布団に入って来て、伊織を緩く抱き寄せる。


「もう休め」


「うん。…おやすみなさい」


(眠れるかな…)


ヴィルフリートに心臓の音が聴こえないか、不安が過るが、近くにある人肌にだんだんと眠気が訪れる。伊織は眠気に襲われながら無意識にヴィルフリートに身体を寄せ、甘える様に腕に顔をすりつけた。眠りに落ちる直前に、額に口付けられた様な気がした。





伊織ちゃんは男としての感覚がまだ微妙に抜けてないのでガードがゆるいです。

女の子の自覚がまだあんまりなので平気で添い寝とか許しちゃいます(。-艸-。)

ヴィルフリートさんは変態紳士です。

次はヴィルフリートさん視点予定です。

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