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紫水晶の回帰  作者: 秋雨
赤の彼方と金の此方
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この子の親は?

リアルが忙しく、少し時間が開いてしまいました(-"-)

今日からまた(なるべく)毎日更新に戻りますので!

ウラは綺麗に洗ってみると、銀に限りなく近い金髪に、先程までは意識していなかったが、澄んだ青紫色の瞳をしている。その色は蒼みがかっているが、ヴィルフリートの瞳の紫に近い。

急遽購入した可愛らしい薄水色のワンピースを着せてもらい、今はニコラウスとにこにこしながらお菓子を食べている。お菓子は殆ど食べた事がなかったのか、食べた瞬間顔を輝かせていた。


「それで、ウラはどうして帝都に来たんだ?」


「おじちゃんがね、ここにパパとママがいるって言っちゃの。ウラを連れて来てくれたんだよ!」


「その人、ウラを置いてどこかにいっちゃったんだって」


伊織がクッキーを摘まみながら何気なく言うと、ニコラウスの眉が顰められる。その顔が思ったよりも険しく、伊織は驚く。


「ねえ、ウラちゃん。そのおじ様はパパとママの事、何と言っていたの?」


「んとね、ママはわからないけど…パパはここで一番偉い人なんだって!」


「ここで一番偉い…?」


レティツィアがウラに質問すると、思わぬ回答が帰ってきた。一番偉いとはどういう意味だろうか。現在この国で一番偉いのはヴィルフリートであるし、帝都で一番偉いのももちろんヴィルフリートだ。これが帝都ではないのなら、その町の領主とかになるのだが。

全員が顔を見合わせて怪訝な顔をし、ウラの事を見る。


「そのおじちゃんは、皇帝とか言ってたか?」


「うん。一番偉いんだって!ウラのパパしゅごいんだね!」


ニパッと屈託なく笑うウラに、絶句する。伊織は流石に頭痛がしてきた気がして、蟀谷を押さえた。レティツィアが伊織を気遣って手をそっと膝に添える。


「…グスタフ。すぐにヴィル坊に連絡を入れろ。それから帝都の門番に幼い子供を連れて入った者を、覚えている騎士がいないか調べてくれ。」


「畏まりました。すぐに。」


ニコラウスが壁際に立っていた男性に話しかける。ニコラウスが話し掛けるまで伊織はその男性がそこに立っている事に気が付かなかったので、急に存在感の出た男性に驚いた。グスタフと呼ばれた男性は真っ白な髪を後ろに撫で付け、瞳は優しそうな緑色で目元や口元に皺が刻まれている。

グスタフが退室して、レティツィアとニコラウスが気遣わし気に伊織に視線を向ける。


「…まさか、陛下に限って何かの間違いですわ。イオリさん、きっと杞憂でしょうから…」


「大丈夫です。驚いただけで…」


「お姉ちゃん、だいじょうぶ?」


ウラの綺麗な青紫色の瞳がまっすぐ伊織に向けられる。伊織はウラに向かって微笑んで頷く。まだ事実がはっきりしていないのに、こんなに気弱になってどうするのか。やはり伊織は、こちらの世界に来て女性になってから、どうにも気が弱くなったかも知れない。

だが、ウラの瞳の色を見る限りは、皇族の血を引いていてもおかしくない。紫に近い瞳は、皇族に関する血族の特徴なのだ。何故かは解らないが、皇族はどれほど血が薄くなろうと必ず紫を持った子供が生まれる。勿論、ウラに似た青紫の瞳を持つアーデルハイトとヴォルフガングも、曾祖母が47代目皇帝の姉で、ローゼンクランツ家に降嫁している。アーデルハイトとヴォルフガングは先祖返りで青紫の瞳となったが、実際はすぐに血は薄くなってしまう為、ローゼンクランツ当主の瞳の色は蒼だ。その為紫の瞳は、他の色が混ざっていたとしても珍しい。


「うん、大丈夫。僕もウラのパパとママが見つかる様に、お手伝いするからね。」


「うん!ありがとう、お姉ちゃん」


内心、ヴィルフリートが父親でない事を祈りながらも、ウラを安心させるように頭を撫でた。何かの勘違いであった方がいいに決まっている。


「それで、ウラは何処から来たんだ?」


「んっとね!おっきい湖の横!おじちゃんと一緒に住んでたの!湖はね、アルジェ湖って言うんだよ?おじちゃんが教えてくれたの!」


「そうなのね。ウラちゃんは物知りですわね~」


「えへへ。」


ニコラウスとレティツィアのウラに向ける目は孫を見る祖父母の様で、相好を崩している。レティツィアに頭を撫でられて嬉しそうにしているウラに、ニコラウスは完全に骨抜きのデレデレで、隣に座るコルネリウスに呆れた目で見られていた。

そこにメイドから仕立屋が来たと連絡があり、伊織とウラは張り切ったレティツィアに促される。ニコラウスはその事にがっくりと肩を落とし、気落ちしている所をコルネリウスが肩を叩いて宥めている。


(そういえば、チェス持って来たんだった。…公爵家はバルトさん以外は頭脳派らしいし、丁度いいかも?)


伊織は部屋を出る時に、アニエッタにチェスとルールの書いた紙をニコラウスとコルネリウスに渡すように告げる。アニエッタが了承して取りに行ったのを見てから、先に行くレティツィアを追いかけた。

伊織とウラが人形の様になっている間に、レティツィアがどんどん服を作る指示をしている。その中には下着も入っていて、一度全部脱ぐように言われた時は伊織はどうしようかと思った。ウラは何も気にせずにすぐに全裸になっていたが。

たっぷり2時間、仕立屋とレティツィアに付き合ってサロンに戻ると、ヴィルフリートがソファに座って優雅にお茶を飲んでいる。伊織は気の所為かと瞬きして目を擦るが、やはり間違いない様だ。


「ヴィルさん、何してるの…?と言うか、執務良いの?」


「ニコラウスは案外使えるらしい。急ぎのモノは終わらせてきたので、心配するな。」


「いや、そういう事じゃなくて…」


「その子供が、余の子供の疑いがあると?」


伊織の影に隠れていたウラに、ヴィルフリートの紫の瞳が向けられ、ウラの青紫の瞳とヴィルフリートの紫の瞳が見詰め合う。ヴィルフリートがすっと目を細め、ウラから目を逸らしてニコラウスに向き直った。


「余には全く、覚えがないが。」


「んな事言っても、4、5年前といやぁ、お前がちょうどふらふらと遊んでた頃だろ。」


ニコラウスはニヤニヤと笑っており、それを見たヴィルフリートの眉が寄る。レティツィアが伊織とウラを促して、伊織がヴィルフリートの隣、ウラとレティツィアがニコラウスの隣に座った。コルネリウスは一人掛けのソファに座っている。

ヴィルフリートが伊織をちらりと見てから溜め息を吐く。


「…余は、12の頃より欠かさず避妊薬を飲んでいる。余の子供が出来る訳がない。」


「12って…可愛くない子供だな。…~っ!」


ニコラウスが呆れた様に言い、何故かすぐに悶絶する。見たところレティツィアが踵でニコラウスの足を踏みつけた様だ。伊織はそんな事より、ヴィルフリートが避妊薬を飲んでいた事の方に驚く。子供が出来るかもしれない、と悩んでいた自分は何だったのだろうか。


「次期皇帝になると約束されたお立場でしたもの。当然です。陛下は貴方の様に、考えなしではないですのよ。」


レティツィアの痛烈な言葉がニコラウスに掛けられる。


「…ニコラウスとレティツィアは、ニコラウスが遊び歩いていた時に知り合った。婚約中もニコラウスは遊んでいた様だ。」


伊織が不思議に思って首を傾げていると、ヴィルフリートが伊織に小声で教えてくれた。

そういう事なら自業自得かもしれない。

ヴィルフリートの父である先代皇帝は真面目な人だったらしく、正妃一筋だったと聞いたし、ニコラウスと先代皇帝の父も側妃などは迎えなかったらしい。過去にハーレムを築いた皇帝もいたらしいが、基本的に一夫一妻。側妃を迎えてもいいのだが、歴代皇帝の大半は、正妃を娶った後は側妃を娶らなかった。

ニコラウスとレティツィアに挟まれたウラが涙目になっていて、伊織は慌てて2人を止める。


「そんな事より、じゃあウラは誰の子?…パパ、遊んでたって言うし、まさか…」


「待て待て待て待て!俺はレティ一筋だ!…遊んでた時もあるが、結婚してからはきっぱり止めたぞ!」


伊織とレティツィアのジトリとした疑いの眼差しに、ニコラウスが焦って首をぶんぶん振りながら否定する。本当に身に覚えがない様で、僅かに顔色が悪い。レティツィアに必死に訴え掛けている様子が哀愁に満ちていて、伊織とレティツィアは疑いの眼差しを向けるのを止めた。


「じゃぁ、兄さんとか…」


静かに一人掛けのソファに座っていたコルネリウスが伊織の言葉に慌て始める。

確か、アロイジウスは24歳の時、バルトロメウスは23歳の時に結婚したはずだ。まだ結婚していないのはコルネリウスだけで、年齢も現在27歳と、帝国の平均結婚年齢を過ぎている。帝国では大体、男性は18~25、女性は16~22で結婚する。冒険者も珍しくない為、結婚年齢はあくまでも大体だが。

コルネリウスはアーデルハイトと婚約しているから、こんな事をアーデルハイトに言おうものならどうなるか分からない。流石の伊織もお茶を濁す事にする。それにウラの言う、一番偉いと言う言葉に矛盾する。


「偉いと言うのなら、宰相と言う点でアロイジウスの方が当てはまるが。」


「あの堅物に不倫はないだろ。」


「そうですよ。兄さんが義姉さんを裏切るなんて、あり得ない。」


ニコラウスとコルネリウスから即座に否の声が上がる。どうにもアロイジウスでもなさそうだ。かと言って、いつも妻と子供の自慢をしているバルトロメウスは違うだろう。

とりあえず解った事は、ウラの父親は不明だと言う事と、皇家は揃って一途だと言う、どう扱っていいか分からない情報だけだった。






誰の子でしょうね( *´艸`)

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