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紫水晶の回帰  作者: 秋雨
赤の彼方と金の此方
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きょ、今日から…?

最近ちょっと忙しくて、執筆速度が落ちてしまってます。

まだしばらく続くと思いますので、更新がなかった場合はちょっとお待ちください<m(__)m>

「…こうもあっさりと許可するとは思わなかったが。」


「今更、イオリを陛下から引き離そうとは思ってはおりませんよ。妹の国籍がなければ、公爵家も困りますからね。私の代になった時の面倒は減らしておきたいのですよ。」


微笑むアロイジウスにヴィルフリートが訝しげな視線を向けるが、アロイジウスは笑みを崩さずにゆっくりとデスクから移動して、伊織とヴィルフリートの正面のソファに座った。

ヴィルフリートがチェスのルールの書いた小さな冊子をテーブルの上に投げ渡す。アロイジウスはそれを手に取って、1ページ目を捲った。


「…なるほど、このゲームで勝負するつもりだったのですか。」


「その方が手っ取り早いと思ったのだがな。だが、その必要もなかった。」


「…いえ、面白そうではないですか。」


アロイジウスが大まかにルールを読んでから顔を上げ、冊子を閉じてヴィルフリートに向き直る。


「ぜひ、私と勝負頂きたいですね。…陛下が勝てば、イオリに関する事は譲歩しましょう。」


「…お兄様…?」


挑発的なアロイジウスの言葉と表情に、伊織が戸惑ってアロイジウスに声を掛ける。アロイジウスは伊織に片目を閉じて口元を吊り上げた。ヴィルフリートが挑発に目を細めて、面白そうに喉で笑う。


「では、勝負は明日の夜としよう。後で盤と駒を届けさせる。」


ヴィルフリートが伊織を抱いたまま立ち上がり、アロイジウスを一瞥してから扉に向かう。アロイジウスは立ち上がって頭を下げ、伊織に向かって微笑みかける。


「ああ。そうだ、イオリ。私に猫は被らなくていいよ。」


伊織が猫を被っていた事はばっちりばれていたらしく、扉から出る直前に釘を指されてしまった。伊織は誤魔化し笑いを浮かべて、アロイジウスに向かって手を振る。

ヴィルフリートはアロイジウスに構う事もなく来た道を引き返し、伊織も慌てて扇で顔を隠す。

これで会っていないのは母のレティツィアと三男のコルネリウスだけになった。


「…またか。」


内城と外城の渡り廊下でヴィルフリートの足が止まり、顔を上げて辺りを見渡す。

伊織も見られているような感覚に扇を下げた。ヴィルフリートの眉が不快そうに寄り、口の中で何事か小さく呟く。


「…ヴィルさん?」


「不可視の術を掛けただけだ。…戻る。」


見られているような感覚は無くなったが、どうにも腑に落ちない。

内城と外城の渡り廊下は一か所にしかないし、そう簡単に見られる場所でもない。それに、皇帝陛下の暮らすところなのだ。もちろん十分な警備はあるし、外から侵入するにしても、城壁には魔道具が張り巡らされている。

居室の前に戻ってきたところで魔法を解いて部屋に入る。なんとなく肩に力が入っていた。


「お帰りなさいませ。いかがでしたでしょうか?」


「許可は既に下りた。チェスは遊びだ。アロイジウスに盤と駒を届けておけ。」


「左様でございますか。畏まりました。」


ヴィルフリートに降ろして貰って扇を片付ける。

伊織がソファに座ろうとしたところで、ヴィルフリートに腕を掴まれて引き留められた。


「イオリはまだする事がある。」


「する事…?」


伊織が首を傾げると、ヴィルフリートが鷹揚に頷く。ヴィルフリートはギルベルトに侍女を呼ぶようにと指示した。


「良い事を思いついたのでな。」


「…なんか、すっごい嫌な予感がするんだけど…?」


ギルベルトがフランツィスカとアニエッタを連れて戻って来る。アニエッタの姿に伊織は顔を輝かせた。


「アニー!もう大丈夫?」


「ええ。使用させて頂いていた神殿の部屋の片付けも終えましたので、今日から復帰しました。」


アニエッタが伊織に微笑みかけて力強く頷く。


「呼んだのは、イオリの着替えの為だ。毎日、イオリには体力をつけてもらう。」


「え!?体力!?」


ヴィルフリートはギルベルトに先ほど言われた事に思う所があったのか、伊織が部屋を出ていくのを見送って、自分も着替えるため衣裳部屋に入った。

伊織がアニエッタとフランツィスカに引き渡され、説明もないままに引き摺られる様に連れて行かれる。

伊織は自室に戻って、衣裳部屋に放り込まれる。なんとなく自分の部屋は久しぶりな気がする。


「運動をすると言う事は、あれですわね?」


「あれしかないですわ。」


アニエッタとフランツィスカの視線が交わされ、衣裳部屋の奥から数着の服が取り出される。

出された服は、ぴったりと身体に密着するようなタイプのモノだ。色も数種類あり、女性騎士が着ているモノと似た種類のモノの様だ。


「こ、これ着るの…?」


伊織が尻込みして後退ると、アニエッタに肩をがっしりと掴まれる。なんとなくこのやり取りも懐かしい。

伊織が文句を言いだす隙もなくドレスを脱がされ、下着のみの格好になってしまった。促されるままにぴったりした服に袖を通し、ボタンを閉められる。

ドレッシングチェアに座らされて髪の毛をアップに纏められ、鏡の前に立たされた。

身体のラインがしっかり出て、何となく心許ない。


「こういう服も似合いますのね。」


「凛々しいですわよ、イオリ様」


格好だけそれっぽくなっても中身は全く体力がないのは解っているので、恐る恐るヴィルフリートの居室に戻る。

ヴィルフリートも動きやすい格好に着替えたらしく、先程よりも軽装になっていた。抱き上げられて、普段と違う気がして顔が赤くなる。いつもはスカートなので、ズボンを履くのは随分久しぶりだ。


「イオリの今の体力では、ダンスもまともに踊れないだろう。」


確かにヴィルフリートの言う通りかもしれない。

ヴィルフリートが歩き出し、ギルベルトがバスケットを片手にその後に続く。


「修練場に行く。…まずはどれほど体力があるのか、確認せねばな。」


「運動…あんまり好きじゃない…」


伊織は断然インドア派だ。そもそも元の世界でも体力はほとんどなかったし、こっちの世界に来てからは自分で歩く事もあんまりない。それはヴィルフリートの所為なのだが。

運動音痴と言う訳でもないし、一応護身用に合気柔術も習っていた。今までの事を考えるとあまり意味がなかったかもしれないが。


「体力付けろっていうなら、降ろして!」


「それもそうか。」


いつの間にか伊織の護衛も後ろから付いて来ていて、結構な人数になっている。伊織は流石に恥ずかしくなって降ろして貰った。修練場までは結構遠い為、歩くだけでもいい運動になりそうだ。

伊織の歩くペースに合わせてゆっくり歩いていると、いつもの倍近く時間が掛かった。


「…いつもより遠い気がする。」


「イオリは歩幅も歩調も余の半分ほどだからな。」


修練場の扉を開いて中に入る。城内の修練場を使うのは、バルトロメウスが率いる通称黒騎士団と街の治安維持を図る、クラウディアの父が率いる白騎士団、最近作られた女性騎士で構成された百合騎士団のみだ。白騎士団は各地に支部があるので、ここを使うのは城下に配属されている者だけである。使用者はどんなに多くても300名ほどだ。

今はもう夕方に近い事もあって、人は少ない。


「まずは、柔軟運動だな。ヴァイス、クロイツ、手伝ってやれ。」


『はっ!』


2人の声が見事にハモリ、伊織を連れて修練場の端による。ヴィルフリートも自身の柔軟運動を始め、伊織も合気柔術をやっていた頃を思い出して身体を動かす。

どう考えても運動不足になっているのは明らかで、昔は柔らかかった筈の関節もめっきり固くなっている様だ。ヴィルフリートがやすやすと開脚体操をしている横で、伊織は足を開かれて手を引っ張られ、やっと開脚体操をする。


「い、いた…いたたたた…」


まだダンスのレッスンすら基礎を少し前に習っていただけなのに、前途多難としか言いようがなかった。






伊織ちゃんの特訓計画。

筋肉が付かないのは体質です(`・ω・´)キリッ

ってやりたい←


あ、どうでもいいんですが、昨日で連載開始から2ヶ月でした(´-ω-`)

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